【4】Green Shark Challenge -4
喫茶店『水玉』へと入ると。カウンターの中からグリーンに黄色の水玉模様のエプロン姿であるマスターが陽気に僕達へ
「いらっしゃいませ!やあ。尚吾くんと岳大くんじゃないか。奥の席へどうぞ!」
と声を掛けて。マスターの案内に従い僕達は奥の席へと座った。僕達が席へ着くとウェイトレスの川原エミがお冷とメニュー表を僕達のテーブルへ置くと
「あんた達また二人でフラフラして。ところで今日は何にするの?」
エミは僕達と同じ大学に通う同期生なんだが、この喫茶店『水玉』でアルバイトをしていて。僕達がよくこの店に来る事から仲良くなって。たまに3人で食事に出掛けたりする。そんな間柄だ。
そんなエミの質問に尚吾はテーブルに体を預けて両手を伸ばし、メニュー表を見ながら
「流石に飯食う気が失せたからアイスコーヒー頂戴。キンキンでね。」
そんな尚吾に合わせて僕も
「じゃあ僕はレスカちょうだい。」
そう注文すると。エミは
「何よ。フードは食べないの?いつもの日替り食べないの?ドリンクだけで時間潰すだなんて気が退けるな~とか思ってフード注文しなさいよ。」
いつものエミの押し付け注文を無視して。尚吾は
「アイスコーヒーとレスカだけでいいの!さっき俺達は電車の人身事故見ちゃって食欲がねぇんだ。」
そう返すと。エミは
「えっ!マジ?だったら仕方ないけど。」
そう言いながらカウンターへと戻って行った。僕はスマートフォンを取り出してGSCについて検索した。そこにはやはり指示の中に『腕に剃刀でgreenの文字を刻む』と書いてあった。尚吾はそんな僕を見て
「タケ、何を見てんだよ。」
「さっきの腕にさ。『green』って書かれていたんだ。あれってGreen Shark Challengeって言う自殺ゲームの指示の1つに有る『腕にgreenと剃刀で刻む』ってやつなんだよ。」
「タケ。あんまりそんな事は深入りしない方が良いぜ。」
そう言いながらテーブルの紙ナプキンを取り出して、テーブルを拭き始めた。すると一人の女性が近寄り声を掛けてきた。
「君達ちょっとお話し良いかしら?」
その女性は、先程の千切れた腕に手を合わせていた女性であった。僕と尚吾は突然の申し出に呆気に取られて居ると、その女性は空を見てから僕達の方を見直して
「ごめんね。私は『園部千香子』って名前で、みんなからは『ペチコ』って呼ばれて居るわ。大学で社会心理学の教授をしているの。さっきgreen shark challengeの話をしていたでしょ?それが気になって話が聞きたくてね。」
そう言いながら、千香子は尚吾の隣の席へと座り。尚吾は突然の事で少したじろいでいた。僕はそんな中で『ペチコ』と言う名前に反応して
「Yellow Submarine......」
そう呟くと。千香子は尚吾の方を向いて
「貴方の言った『あんまり深入りしない方が良い』って言葉は正しいけれど。この子はかなり深入りしているわよ。」
と言った。そして千香子は自分のテーブルから持ってきた紅茶に大量の角砂糖を入れるとそれを飲んで。僕の方をジッと見ると僕は
「僕はそこの大学に通う幸島岳大って言います。千香子さんの言う通り。Green Shark Challengeの事は気になって結構調べてたんです。」
「あっ。俺は岳大と同期生で高城尚吾って言います。ってお前そんなもん調べてたのかよ。何て言うかホント......」
そう続けて尚吾も自己紹介した。千香子は僕の方を見ながら紅茶に口を付けると。そのタイミングで、エミが僕と尚吾にアイスコーヒーとレモンスカッシュを持ってきて置くと
「あんた達、ペチコ先生はうちの大切なお客様なんだから失礼の無いようにね。」
と冷たく言い放ち。それに尚吾は反応して
「いや。俺達だって客なんですけど!」
そう言い返したが。エミは冷たい目を向けてそのままカウンターへと引っ込んで行った。僕はそんな事よりもYellow Submarineの創設者である園部千香子に聞きたい事が山ほど有った。