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【36】polcadot119-7




 めぐみは千香子の言葉を受け流せずに。真っ正面から受け止めてしまったのだ。その事によりめぐみは心の虚壁を強引に開けるしか無かった。それにはエネルギーが必要な事であり、僅かなタイムラグを作った。


 そしてそれは千香子の描いたシナリオとなった。人間の心は不安定になれば自立する軸を失う。軸を失えば何かを支えにして立ち上がるしかない。その心を支える物としての役割を果たせるのは信仰心であり。本原めぐみにとっての信仰心とはポルカドット611である。千香子は発した。


「ポルカドット611はどんな世界を創りたいの?」


その言葉にめぐみは反応せざる終えなくなった。そしてその時にこの閉ざされた部屋の扉が開けられ。この部屋に光が射して本原めぐみは振り返り。千香子は瞳孔の開いた目の瞼を閉じた。


「本原めぐみ。そこを動くな!略取誘拐、逮捕監禁、違法薬物使用の容疑で身柄を拘束します。」


そこには無数の警察官が入り込み。本原めぐみは身柄を拘束された。千香子はその瞬間に緊張の糸が解けて気を失った。そしてその後ろから水谷が現れ千香子の身体に締められた革のベルトを外し。千香子の身体にサマーコートを掛けて隠した。そして


「ぺチコさんは、いつも呼び捨てで『珠樹』と呼ぶのに。『水谷さん』なんて書いてあるから、ぺチコさんが捕まっているのが判ってしまいましたよ。」


そう言うと。意識が虚ろながらも千香子は水谷の腕をギュッと掴んだ。




――――――



 僕は本原めぐみの住むマンションの下で待機をしていたが。無数の警察官が本原めぐみと、背広姿の男に手錠を掛けてパトカーへと乗せ。その時に本原めぐみは


「私は戻って来るわ!ポルカドット611様が約束してくれたから。これは敗北では無いのよ!キャハッ。」


そう叫び警察官を挑発した。それから後に救急車が到着し、千香子がストレッチャーに乗せられ運ばれて来た。僕は千香子へ近寄ろうとしたが。その後ろに水谷が現れ僕に


「今は会わない方が良いです。ぺチコさんはどうやら。本原めぐみに薬物を投与された様ですので。付き添いで行ってきます。幸島岳大君はもう自宅へと帰ってください。それでは。」


そう言うと。救急車へ乗り込み去って行った。後日に千香子へ投与された薬物による依存を治療するために暫くは入院を余儀なくされた。


 僕は真っ暗な夜の中を照らす街灯や建ち並ぶビルを見上げて何とも言えない気持ちになった。ポルカドット611を追う事により親しい人が犠牲になる。しかし追わない事にはもっと多くの犠牲者を生んでしまう。そんな事を考えながら、N区での爆発による犠牲者を出さなかった事を思い肯定しながら僕はアパートへと帰った。


 帰り道の途中に駅の角で僕はマリアの顔を思い出し。ケーキ屋を見付け


「そういやアイツって甘いもの食べんのかな?」


何て呟きながら。梨のタルトを2つ買って帰る事にした。電車に揺られながらも今日一日の出来事や今までの事を思い返し。自分が今、危険な事に首を突っ込んでしまっている事に気が付いた。しかし、それでもポルカドット611を追ってみたい気持ちも確認した。そして『もし』自分の周りの人間を巻き込んでしまったら。と想像した所で僕は周りの人との距離感の重要性を考えた。


 そんな考え事をしているうちに僕はアパートの前へと辿り着き。ドアの前では中からマリアのギターと歌声が聴こえてくる。


 僕はその事に安心感を持ちドアを開けると、ギターと歌声は止み。狭い部屋の奥からマリアが僕を出迎えてくれた。何だか最初は邪魔で、その内に慣れて。そして今では当たり前になってきたこの状況に僕は苦笑いを贈った。


 そしてマリアと二人で夕食を食べて。その後二人でテレビを見ながら梨のタルトを食べた。その時のマリアの淹れたコーヒーが僕好みの味になっている事に気が付いた。そんな一日であった。




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