【34】polcadot119-5
意識がハッキリとしだした千香子は。動こうと試しはしたが丈夫な革のベルトは隙間無く締められており。ピクリとも動く事が出来ずに何も出来なかった。そして皮膚の感覚が戻り感じるからに衣服は剥ぎ取られ下着のみの姿である事が判った。千香子は
「めぐみさん。こんな無駄な事は止めないかしら。私は逃げもしないし、貴女とお話を続けますから。」
そう言うと。めぐみはゴシックロリータの衣装にベネチアンマスクを着けてポルカドット119として千香子の前に現れ。めぐみは皮の鞭でいきなり千香子の太股の辺りを叩いた。衣服の無い太股の薄い皮膚への衝撃は、痛みよりも灼熱感を持って千香子の脳へ伝わった。千香子は「クッ。」と声は出したがそれ以上は痛がらなかった。めぐみは
「無駄口はきかないで。ポルカドット611様と貴女は同じ派生にも関わらず。ちょっとベクトルが違うのよ。」
そう言うと。もう一度、千香子の胸の辺りを鞭で叩いた。
「声を出しても良いのよ。さっき貴女のスマホで水谷さんへはちゃんと大丈夫だってメッセージを送っておいたから。助けには誰も来ないわ。第2使徒よアレを持ってきて。」
「はい畏まりました。」
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僕と水谷は近くの古びた喫煙の出来る喫茶店でコーヒーとパンケーキを頼み。千香子からの連絡を待っていた。水谷はパンケーキを噛りながら
「もしもの時にあの本原めぐみのマンションへの侵入方法を考えて置かねばなりません。甘いものでも食べて考えましょう。しかし幸島岳大君はその時は無理をせずに外部との連絡係として待機していてください。12000円命の危険に晒される必要は有りません。」
「判りました。しかし必要な手駒としてなら何でも仰ってください。」
そんな会話をしながら。パンケーキとコーヒーを交互に口に運んでいると水谷のスマートフォンへ短く『ピロロン』と音が鳴った。水谷はスマートフォンを手に取りメッセージを音読した。
「水谷さん。本原めぐみさんと今話していますが。特に変わった様子もなく私は大丈夫です。良かったら先に帰って貰っていても構いません......」
水谷は読み終えるとスマートフォンをサマーコートのポケットに仕舞い。パンケーキを食べ始めた。僕と水谷は千香子からのメッセージの内容で
「まだ遅く成りそうですね。」
と言った会話だけしてコーヒーを口に含んだ。
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「ポルカドット119様。先日のタピオカで余った合成麻薬をお持ちしました。」
第2使徒と名乗る男は食事を運ぶ台車の上に、アルコールランプ、スプーン、白い粉、ゴムチューブ、注射器を皿の上に乗せて現れた。めぐみは千香子の目を見て
「ダメでしょ。ぺチコさんが怖がるから『ハッピーグッズ』とでも言いなさい。では、左腕にチューブを巻いて上げて。」
そう言うと。めぐみはアルコールランプに火を点けて
「貴女はGreen Shark Challengeに関わった者を癒して忘れさせようとした。しかしポルカドット611様はGreen Shark Challengeで扱った軽い命を再利用することで。命の重みを人々に教えて上げようとしているのです。」
「詭弁だわ。痛みや恐怖で命の大切さを問うことに酔いしれて反応を楽しんでいるだけよ。こんな事をしてもどうにも成らないわよ。」
「ぺチコさん。貴女にはこのハッピーグッズで幸せな気持ちになってポルカドット611様の素晴らしさに気付くべきだわ。」
「『べき』だなんてそんな物は無いのよ。人には選択肢の数だけの人として生きる運命が有るの。人の選択肢を奪う事は歪みを生むわ。」
その千香子の反論に、めぐみは微笑むと千香子の縛られた左腕に注射器の針を射し血を抜き始めた。そしてそれを台車の上に置くとスプーンの上で水に粉を溶かしそれを炙った物を千香子の血液と混ぜた。




