【29】Killer itigo-2
缶コーヒーを飲んで居ると路地の先から、明らかに不審な男が僕達の事を覗いている。水谷はそれでも何事も無く
「きっと彼が犯人ですが。こっちの人数で迂闊に近付けない理性は持っていますね。」
そう冷静に言うと。さっきの千香子への手紙を広げて不審な男へヒラヒラと見せた。流石にこの挑発に男は決心したのか紙袋から刃渡り20センチ程の包丁を取り出して僕達に近付いてきた。僕はこの馬鹿げた状況を作り出した水谷に苛立ちながら
「何挑発してんですか!こんな人気の無い所で!」
そう声を荒らげると。水谷は
「それじゃ逃げましょう。助けてー!殺されるー!」
と冷静に大きな声を出して男とは反対の道へと歩き始めた。直ぐに曲がり角となり僕達は右へと曲がった。しかしその通りは通行禁止の看板が掲げられ僕達は行き止まりになってしまった。僕は
「行き止まりじゃないですか!どうすんですか!水谷さん!」
「その叫びファインプレーです。」
そんな事を言っているうちに男は包丁を握り締めて角を曲がり、僕達の視界へと現れた僕達は逃げる術も無く男は包丁を振りながら近付いて来る。
僕は恐怖の余りに目を瞑りしゃがみ込んだ。そして周りからバタバタと激しい音が聴こえ僕は目を開けると包丁を持った男は3人の警察官に取り押さえられていた。そして水谷は一人の警察官に
「そこの角でコーヒーを飲んでいましたら。いきなり包丁を持って追い掛けられてですね......」
そう警察官に説明していた。僕は千香子へ
「どうなったんですか?」
そう訊ねると千香子は
「珠樹の奴。ここまで態と誘導していたのよ。交番だと外出している事もあるから、確実に警察官の居る。昨日の爆破事件の現場へ。」
そう言うと周りにのビルは黒く煤けており。通行禁止の看板から駅でも見掛けた『立ち入り禁止』テープが貼られ。他にも警備の警察官が現場に居た。僕は
「何だよぉ。」
と座り込むと。千香子は肩に手を当てて
「珠樹はあの男に気付かれず。ここまで誘導して逮捕させたかったのよ。今後の私達の安全の為に。あんなしててあの人は他人の事ばかり考えて居るのよ。さっ。犯人も逮捕されたし帰りましょうか。」
僕達は一通り話を警察官に聞かれると直ぐに解放になり。Killer itigoと名乗った男はパトカーに乗せられ連れて行かれた。その時に警察官の男が
「水谷さん。私は菅田警部の後輩で迫田と言います。まだあの件を追っているのですか?貴方でしたら追っているのでしょうね。これ私の名刺になります。協力出来る事が有りましたら連絡ください。」
そう言って僕達の下から離れて行った。水谷は名刺をポケットに入れると大通りの方へと歩いて行くので、僕達も付いて行くと。そこではストリートミュージシャンが弾き語りをしており。水谷はそこを指差すと手を振って僕から離れて行き。千香子と和恵も手を振って離れて行った。
ストリートミュージシャンは聖母であった。彼女は練習を兼ねて路上で歌いそうやって地道に歩を進めて居たのだ。僕は名乗りでもせずに離れた位置でマリアの歌を聴いていると。マリアは
「新作なんですけどね。アッシこの間、アッシを必要としている世界なんて無いって理解して。死のうと思ったんすけど。そんなアッシの歌が必要なものだと言ってくれた人が居たんっす。その時の気持ちを歌うので聴いてください。」
そう言うと。マリアは朝唄っていた歌をやりはじめた。朝とは違い細かい部分も変更されていた。そしてマリアの歌に少しずつ人が足を止めるようになって。いつの間にかマリアの周りには人集りが出来ていた。
曲を終えると拍手に包まれたマリアは照れくさそうにお辞儀をしてギターや譜面を片づけ始め。僕はマリアへ近付くとマリアは照れ臭そうに笑って。僕達は二人で手を繋いでアパートへと帰った。




