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【28】Killer itigo-1




 そのままセンター街を歩いて居たのだが。ここ久しく買い物なんてしたことも無かったので、ただ周囲を眺めて歩くだけであった。珍しい土地に出たにも関わらず出鼻に水谷を見掛けた事からも、あまり僕の中で特別な物も無くなった。


 そんな事を考えていると偶然とは向こうからやってくる物で、和恵を連れて歩いている千香子に偶然出会した。僕は千香子に近寄り挨拶すると、千香子は驚いた様子を見せながら


「岳大くんって。こんな所にも来るのね。今丁度、和恵さんに必要な生活用品を一緒に買いに来ていた所なのよ。良かったら一緒にランチでも行きましょうか。」


僕は千香子の言葉に付き添う事にした。千香子は適当なラーメン店へと入りカウンターで横並びに座った。千香子を挟んで和恵と僕が両サイドと言った並びで、ラーメンを注文すると僕は千香子へ


「そう言えばさっき水谷さんが居ましたよ。」


そう言うと千香子は


「珠樹ならそこに居るわよ。」


とカウンターの端を指差すと。そこに一人で水谷がラーメンを啜っていた。ラーメンとデザートのアイスクリームを交互に食べながら僕達に気付くと手を上げて挨拶してきた。千香子は手を上げ返したがそれ以上の絡みは無く。僕達も運ばれて来たラーメンを食べる事にした。


 僕達がラーメンを食べ終えて表へ出ると、そこに水谷が待っていた。僕達と水谷は合流すると、その集まりの中へ一人のホームレスの男がゆっくりと近付いてきた。そしてそのホームレスの男は


「あんたぺチコって人かい?」


そう訊いてくるので、千香子は無言でその男へ頷くと。男は便箋を千香子へと渡し


「あんたに渡す様に言われたんだ。」


それだけ言うとゆっくりと歩いて去っていった。千香子は水谷の顔を見ると、水谷は便箋を千香子から取り外から触りながら確認して危険性が無いと判断し開けて中身の手紙を千香子へと渡した。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


ペチコえ


我々から死を返せ


私達は死ぬことでしか平おんになれない


それをお前は崩してしまった


生きる価値も無い我々に恥をかかせやがって


私達の死をお前に復讐する


     Killer itigo


▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「あらら。脅迫状ですねえ。」


水谷は千香子へ渡された手紙を人差し指と親指で摘まんで繁々と見ている。千香子は思いの外冷静で周囲を見渡していた。そして


「狂気を演じながらも、実際に送り主は双極性障害を患って居るわね。反応を知りたくて近くに居るわ。この人は私に関わった事は無い。複数人に見せ掛けた単独。用意していたかに見せ掛けて今し方書かれた物だわ。端々にインクの滲みが乾ききっていない。IQは低く感情的になりやすい。私を見てから思い付いた犯行。」


水谷は間を置かず


「困りますね。体力に自信が無いのに、幸島岳大君もやさ男。筆圧から男性の線が強い。きっとラーメンを食べる前にペチコさんを見掛けて、脅すと言うより凶器を調達するための時間稼ぎ。ペチコさんゆっくりと逃げましょう。」


そう言うと。水谷は千香子の腕を掴み歩き始めた。僕と和恵も周りに注意しながら後ろを付いて歩いた。僕は刃物を持った相手が襲ってくる事を想像すると鳥肌がたって


「水谷さん。逃げるって。」


「ウィドウショッピング気分で付いて来てください。」


そう言うと、水谷は人混みの中を駅と反対の方向へと歩いている。そして路地に入り歩くうちに人気が少なくなっている。


「水谷さん。逆じゃないですか。」


「良いんですよ幸島岳大君。」


そう答えるとまだゆっくりと歩いて路地を抜けて。何者かが付けている圧迫感を背中に感じながら、さらに路地へと入ると水谷の歩くスピードは少し遅くなった。和恵は不安になり僕の腕を掴んで震えているのが伝わる。人通りの無い自動販売機で止まり水谷は人数分の缶コーヒーを買い皆に配り


「緊張して喉が渇きましたね。」


とにこやかにそう言って缶コーヒーを飲み始めた。


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