【27】polcadot611-4
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8月29日
朝早くからマリアがギターを弾いている。まだ僕は眠いのだが邪魔にならない心地好い頬を撫でる様な音に僕は二度寝した。
そして二度目の目覚めの時に、まだマリアはギターを弾きながらノートにメモを取っていた。とりあえず邪魔にならないのでもう一度寝た。
三度目に目を覚ますとマリアは唄っていた。僕は流石に三度目だから起き上がるとマリアは
「ちょっとタケ、聴いてよ。」
そう言いながらギターを弾き始めて唄い始めた。柔らかいメロディーに流れるように乗る優しい歌声が部屋の中に漣の様に響き渡った。そして一小節唄い終わるとマリアは
「まだ色々調整しなくちゃだけど。全体的な感じは悪く無いでしょ?」
そう言ってニカッと笑った。僕は寝起きで頭がボンヤリとしているが心地好さは伝わったので
「心地好い良い曲だったと思うよ。」
そう返事すると。マリアは嬉しそうに朝食の準備を始めた。僕はスマートフォンをチェックすると水谷から
「今日はやっぱりお休みで良いです。」
とメッセージが届いていた。僕は特に予定も無くなってしまい、とりあえずパソコンデスクに座り昨日のニュース記事をチェックした。思った通りどの記事にもポルカドット611との繋がりは書かれていなかったが。あのタイミングと言い間違いなくポルカドット611が絡んでいる事は僕にでも理解出来た。
そしていつもの如く朝食を食べ終えると。マリアはギターを掲げて
「アッシちょっとギターと歌の練習行ってくる。」
と言うので。僕は益々暇になって尚吾に電話すると。今日は用事が有ると断られた。僕はパソコンデスクに座りポルカドット611の動画をチェックしたり。今日になって公表された犯人の名前と特長をメモしてMine noteを調べてポルカドットとの接触したタイミング等を調べてみるが。1時間程で行き詰まり僕は外に出掛ける事にした。
出掛けるにしても何も目的も無かったが。昨日の事件が2件有ったS区はここから電車で30分程で行けるので現場踏査をやってみようと思い。僕はS区へと向い電車に乗った。
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S区に着いた僕はとりあえず通り魔事件の有った駅の構内を歩いた。事件現場には立ち入り禁止のテープが貼られ。警察官が四人で警備をしており、テープの内側では刑事と鑑識らしき人達が血痕等を確認し現場を調べており。そのテープの外ではサマーコートに中折れ帽を被った男が寝転がっていた。
僕はその寝転がっている男の顔に近付いて
「何をやっているんですかねぇ。水谷さん。」
そう言うと。水谷はこっちを向いて
「見ないでください。幸島岳大君。」
と言い。寝転がり続けている。警備の警察官も気になっているが文句を言えずに冷たい目で水谷を見ている。水谷は
「もう。邪魔が入りましたね。」
と言い。サマーコートをパンパン叩きながら立ち上り
「現場から得られるものはありませんでした。幸島岳大君。あそこのカフェなら現場を見ながらくつろげますから、あちらに行きましょうか。」
そう言うと駅構内のカフェへと入り。キャラメルマキアートを注文すると受け取り、現場の見えるテーブルへと着いた。
「実際の所、煮詰まって現場に来たのですが。やはり犯人と接触出来ないとポルカドット611には近付けませんね。しかし犯人は警察の所ですし。あっ、後で面会の申請出せば良いのか。」
水谷は一人でノリ突込みして。キャラメルマキアートを飲み干すと走って出ていった。僕はそんな水谷を追い掛ける事もせずに、そのままS区をフラつく事にし。センター街も見たが何も得られずに久しぶりに服でも買おうかとそのまま歩き続けた。
S区の人混みは、昨日あれだけの事件が有ったにも関わらず。いつもの景色に戻っている人間の逞しさを感じながら僕は服屋を廻る事にした。




