【15】S Ending-5
僕は車内で水谷を待っていると、買い物を終えた水谷は戻り。後部座席へビニール袋を投げると
「さっきのコンビニの女性と居たのが屍逝人こと白木望ですね。ぺチコさんからの電話で確認しましたが。あの女性はコココって名前でMine noteを利用している。1回目の、S Ending参加者です。つまり以降の共犯者です。」
そう言いながら車を発進させると、入れ違いで先程のコココと白木が車でホームセンターへと入って来た。水谷は特に気にもせずにホテルへと戻った。
ホテルへ戻ると水谷の部屋で、千香子と尚吾は酒を飲みながら恋愛相談をしていた。しかしさっきの白木とコココの組み合わせに遭遇しておきながらチャンスとも思えるのに何もせずにホテル戻って来た事は些か疑問であり。僕は水谷へ
「これからどうするんです?」
と牽制を込めた質問をすると。水谷は
「後は自由時間。明日の10時から始めるとするか。」
そう言うとサマーコートと中折れ帽をハンガーに掛けるとベッドに横になり。途中で思い出したかの様に僕の顔を見ると
「幸島岳大君。晩御飯は君に任せました。19時に起こしてください。」
そう言いながら寝息をたて出したので。僕達はそれぞれの部屋へ戻ることにし。明日が予定の期日だと言う事も感じさせない程穏やかな一日が過ぎていた。
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8月18日
予定の10時には早い時間に目が覚めて、皆9時には水谷の部屋に集まっていた。水谷はベッドに座り備え付けのコーヒーを飲んでいた。そして水谷は尚吾に
「高城尚吾君は携帯電話の通信妨害は出来ますか?」
そう訪ねると。尚吾は答え
「距離と時間によりますが出来ますよ。」
「後で詳細を聞きたいです。」
水谷はそう返すとコーヒーをズズッと啜った。そして僕と千香子に対して
「そうですね。幸島岳大君とぺチコさんはなるべく早目にO駅へと行った方が良いですね。ぺチコさんの『死を見分ける。』で集合者を見分けてそれぞれに対処していただけると助かります。その為には早目が理想的です。」
そう言い。千香子はそれに対し頷いて
「じゃあ、岳大くん。私達は準備も出来ているし、もう行きましょう。」
「そうですね。」
僕と千香子はホテルを後にして。駅へと向かった。
電車の中で僕と千香子は二人きりの状態で。僕は少し千香子にも疑問に思う事はあった。さっきの『死を見分ける。』や、何故社会心理学博士が危険な事件に身を乗り出してまで追い掛けるのか。僕は堪らずに千香子へ訊ねると他愛なく笑って
「私ね。小さい時に両親を自殺で亡くして祖母に育ててもらったの。それから小さい頃から人の死に敏感になって。死ぬ人が判っちゃうの。嫌な才能だけどね。人助けには便利よ。」
「なんか凄い才能ですよね。それで人助けに向かったのは千香子さんの強さだったんでしょうね。」
「偶然よ。」
千香子は僕の質問にもあっけらかんとした口調で話して、それは凄く安らぐ声音であった。僕はきっとこの人は沢山の人を救って来たのだろう。そう思いながら窓の外の流れる景色に目を向けた。僕はついでとばかりに
「水谷さんの言われた『運が良かったからよ。』と言い。さっきの『偶然よ。』と言い。千香子さんは曖昧な事を力強く言うのですね。それが何だか凄く心に嵌まってしまう。不思議ですね。」
そう言う僕に千香子は
「何?珠樹はそんな事を君に話したの。恥ずかしいじゃない。」
そう返して笑った。僕はここ最近の千香子や水谷との出会いが人生の必然の様に思えて、この巡り合わせを考えれば『偶然』その言葉が僕の中で凄く心地の良いものであった。
そうこうしているうちに僕達を乗せた電車はK県へと入り。O駅までは後二駅程となっていた。その時に一人の女性が電車の中を歩いており。千香子はその女性が集合者の一人だと僕に合図を送った。




