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武芸百般~VRMMORPGの世界で武術という概念は通用するのか?~  作者: orion1196
第五話 勇也、男を見せる
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駿河の怒り

あまりに長いこと放置してしまって申し訳ない……

 ユーヤが目を開けると、そこには大勢のギャラリーの姿と自分の目の前で仁王立ちする駿河の姿があった。


「……しかし派手にやられたねユーヤ君」


「え? 駿河さん……え?? 」


 しかも駿河は籠手と脚甲、『剣客』の職業装備(ジョブアーマー)である羽織袴を着た完全装備である。


「随分派手にやったなぁ『スカルフェイス』。さて、レギュレーションには『人数制限なし』と書かれているが俺も参加していいかね? 」


 表情を変えぬまま歩み出る駿河。この瞬間、ユーヤはある違和感を感じた。


「駿河さん、今『俺』って…… 」


 しかし、敵はそんな事お構いなしで駿河を煽る。


「別に。あんたが死にたいならそれでいいんじゃないの? 」


「なら遠慮なく── 」


 刹那、駿河の右腕が動いたかと思うと、甲高い風切り音が鳴り響いた。敵のアーチャーの真横を投擲ナイフが通過したのだ。


「おやおや、啖呵(たんか)を切る割には動きが鈍いのぉ」


「ッ! このジジィ!…… 」


「やっとその気になったか、ガキ共」


 先ほどからの言葉遣いの荒さと駿河の動きの速さから、ユーヤはひとつの答えにたどり着いた。


(駿河さん、怒ってる…… )


「死ね爺ぃ!! 」


 騎士(ナイト)の一人が剣を振り上げるが、駿河はそれより速く間合いに進入し敵の剣の柄頭を下から抑えた。


「そんな動きで何を斬るつもりかね? 」


「このっ!⋯⋯? 」


 次の瞬間、二倍は重量のありそうな騎士が宙を舞った。空中で自由を失った敵が必死にもがくが、体勢が持ち直ることもなく地面に叩きつけられる。


「⋯⋯は?」


「こ、こいつ今チートを⋯⋯ 」


 他の騎士たちがざわめきだす。しかし一方の駿河は目に宿した怒りはそのままに薄ら笑いを浮かべていた。


「チート? 今のがチートに見えるか? 」


 今度は駿河が動き出した。一歩で二人目の騎士の懐に入り込む。


「チッ! 」


 騎士が駿河の刀の柄を上から押さえ込むも、次の瞬間には鳩尾(みぞおち)のあたりをを押さえて倒れ込んだ。


「柄を押さえれば刀が抜けぬとでも思ったか? たわけめ」


 倒れた騎士の手の甲に刀を突き立てる。


「ギャアァァァ!! 」


 騎士が絶叫するがPKたちは誰もその場から動けなかった。


「なんで…… なんで今の状態から相手を突き飛ばせるんだ!! 」


「やっぱりチートじゃねえか! 」


『クリスタルスカル』のメンバーたちが口々に叫ぶ。しかし駿河はそれらの文句を一蹴した。


「違う、これらは全て技。お前さんらの大好きな武術だよ」


 弓兵(アーチャー)が必死に矢を放つが、駿河は一歩も動かぬまま体を捻って回避する。


「矢も当たらねぇ…… 」


「つがえてから撃つまでが遅すぎる。モンスターならいざ知らず、人を相手にするならわざわざ射線をおしえてるようなもんじゃろうが」


 再び駿河が動く。弓兵が距離をとろうと飛び上がった。


「だろうと思ったさ」


 しかし別の木に飛び移った瞬間木の枝が弾け、弓兵は木から叩き落とされた。


「グハッ! 」

 

「罠を張るのは奇襲の基本じゃったかの? 別に罠を作るのはお主らだけの技術ではない」


「貴様ァ…… 」




 ――――――――――――――――――――――――――――

 駿河の戦いぶりをフィールドの端から見ている者がいた。朧と斬月の二人である。


「強い…… 」


「そう言うと思ったさ」


「で、でもあの人スキル使ってませんよね? 」


「あぁ、あの人はスキルが要らないんだよ」


 朧の目が点になる。斬月は肩をすくめた。


「古武術…… だったっけ? の技に攻撃スキルと同様の動きがあるんだってさ」


「そうなんですか…… でも、だからと言って相手が痛がり過ぎてませんか? 」


 朧が質問するが、斬月は戦いに視線を落としたまま答えた。


「『ペインバック』、現実感を増すためにダメージ量に応じて一定の痛覚を脳にフィードバックするシステムがある」


「知ってます。確か不用意にPKが起こらないようにするためのシステムでしたっけ? 」


「あぁ、だがそれでもPK等の規定違反が確認された場合は『痛覚のフィードバック率』が現実と同じラインまで引き上げられる」


 言葉の意味を理解した朧が肩を震わせる。斬月もやや同情の入った視線を戦場に向けた。


「相手が悪すぎるんだよなぁ…… 」




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

「さて、お遊びはこの辺で終わりにするか」


 駿河が突き立てた刀を引き抜き、構える。最後まで残った三人目の騎士が駿河の背後から戦斧を振り上げるが、先に駿河の刀が残像を残しながら風を切り騎士の首を切り飛ばした。


「さぁ、覚悟はいいか外道共」


 腰の抜けた弓兵が後ずさりしながら叫ぶ。


「た、たかがPKだろ? なんでここまでやられないといけないんだよぉ!! 」


「たかがゲームとはいえ、人の命と財を奪ったのだろう? 『復活できるから』などというつまらん言い訳で許してもらえるとでも思ったか? 」


「そ、それは…… 」


「儂がこの世でもっとも嫌いなものはな、『強さと暴力を履き違える阿呆』だよ」


 静かに剣を繰り出す駿河、敵の断末魔の叫び声だけが広い草原に木霊した。

戦闘書くの疲れるってここで何回言うことになるんだろうか(白目)

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