ユーヤ、男の勝負
いい感じにPV稼げそうなので連続であげときます。
駿河がギルドホールを出た頃、ユーヤは既に『クリスタルスカル』がPKを好んで行うフィールドの近くまで来ていた。
「いるんだろ? 『クリスタルスカル』」
「…… 」
しかし、風の吹き抜ける音以外に近辺から出ている音はない。ユーヤがウェストポーチ型に作られたマジックバッグから小型ナイフを取り出して木に向かって投げると、金属同士がぶつかる音がした。
「おいおい、先制攻撃ですか? 『銀狼』ユーヤさんよぉ」
フード付きのマントで顔を隠した弓兵が枝から飛び降り着地する。と同時に脇の茂みから全身鎧を纏ったいかつい騎士三人が姿を現しユーヤを取り囲む。一人は剣と盾、残り二人はバトルアックスを装備している。
「PKの取り締まりだ、先制攻撃も何もないだろう」
「ほぉ、ならこちらがどう対抗しても構わないと? 」
弓兵がわざとらしく話しかける、この男がリーダー格なのだろう。ユーヤは無言で頷いた。
「俺はお前たちに決闘を申し込む! 」
一瞬場が静まり返る。そして『クリスタルスカル』のメンバーたちは爆笑した。
「俺らが1on1の決闘なんざ受けるわけねぇだろうが!! 」
「あぁ、だから『そちらが何人か』なんて言ってないだろ? それとも俺一人いたぶることも出来ない腰抜けの集団なのか? 」
再び静まり返るフィールド、しかし今回の沈黙は敵の怒りがひしひしと伝わるものであった。
「……やんのかてめぇ? 」
「早くルールを設定しろよ」
「あぁそうだったな、『決闘は対戦両者が双方に納得するルールでしか成り立たない』んだったな」
そう言うと右手をかざす弓兵。タッチパネルが空中に浮かび上がり、弓兵が何かを入力するとパネルは消滅した。
「これで問題ないか? 」
「……あぁ」
提示ルールは『人数無制限、殲滅戦方式、反則攻撃設定なし、フィールド設定:現在フィールド』である。ユーヤは自分の目の前に表示された画面の下の『承諾』をタップして剣を抜いた。
「じゃあ行くぞ…… 3、2、1…… 」
「決闘スタート!! 」
かけ声と同時にユーヤが飛び出す。慌てて弓兵が矢をつがえようとするもユーヤはそれを剣の鍔で弾き飛ばした。
「チッ! 前衛!! 」
弓兵が叫ぶと、騎士たちが一斉に盾を構えて突進する。ユーヤも列の中央にぶつかりながら勢いを殺し、にらみ合う。
「しかし命知らずだなお前、この数を相手に勝てると思ってるのか? 」
「そう思わなければ仕掛けるわけないだろう? 」
「バカめ、とっとと死ねぇ!! 」
ユーヤとぶつかった騎士が剣を振り上げる。両脇の二人も動きを合わせるようにバトルアックスを構えた。
「食らえ! 『三方同時攻撃』!! 」
上、右、左、タイミングを合わせて振り下ろされた武器が風切音を唸らせながらユーヤに迫る。ユーヤは後退しながら盾を突き出し、辛くもこれを回避した。
「オリジナル技か……っ! 」
とっさに首を捻るユーヤ。すぐ後ろの地面に矢が刺さる。
「避けちゃうかぁー」
再び木に登った弓兵が呟く。地面をえぐりながら停止したユーヤは即座に反撃に乗り出した。
「『音速斬撃』!! 」
剣先から白いブーメランのようなものが飛び出し、木に直撃する。木は見事に両断され横転、弓兵たちが慌てて隣の木に跳び移った。
「こっちを忘れて…… 」
「『竜墜突』!! 」
連撃を重ねようとする騎士たちを渾身の突きで吹き飛ばすユーヤ。放った突きは敵に直撃し、相手のHPを削っていく。
「このガキ、なめやがって…… 」
「まだまだこっから…… 」
敵が一塊になったところに追撃をかけようと踏み込んだユーヤの足元が崩れた。正確には『陥没した』。
「へ? 」
次の瞬間、足元から火柱が吹き上がりユーヤを包んだ。敵のリーダーが笑い転げる。
「ヒャアハハハッ! 俺らが何の用意もせずに待ち伏せなんざすると思ったかぁ? バカめ、こういう罠がまだこっちには山ほどあるんだよなぁ!! 」
なんとか穴から這い上がるユーヤ。ステータス画面を開くと、既にHPゲージは残り25%以下を指す赤色に変わっていた。
「あれで死なないとかどんだけ頑丈なんだよあのガキ! お前ら! とっとと仕留めろ!! 」
騎士たちが一斉に得物を振り上げる。ユーヤは回避が間に合わないと判断して左手の盾を振り上げた。
「グッ!…… 」
低く呻き、地面を転がるユーヤ。騎士たちは薄ら笑いを浮かべながら再度武器を構えた。
「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたよ? 立てねぇならとっとと死んでくれよな!! 」
金属がぶつかる耳障りな音が、閑静な草原に木霊した。
用語解説 『決闘』
プレイヤーズデュエルの略。双方が納得した上で人数制限、戦闘方式、反則事項、フィールド設定を取り決めた上で行われる。