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イベントクエスト

お盆休み使ってシステムブック一気に更新します。

 5月末の土曜日、この日は『探求者の集い』のメンバーが約三ヶ月ぶりに揃う日となった。理由は翌日から始まるイベントに際しての話し合いである。


「……という事で、うちのギルドは久しぶりに最速クリアを狙いにいきます」


 ユーヤが切り出したその言葉にメンバーの目の色が変わった。今回のイベントは大型ボスモンスターの討伐クエストで、この手のイベントには必ずクリアタイムの順位によってボーナスが発生するからである。


「でも単独で狙うのは消耗も大きいですし、いつも通り『L・A』との合同でいきます」


 レベルの低いメンバーたちがひそひそ話を始めた。駿河も状況が飲み込めないのかリンに質問を投げ掛ける。


「リンさん、『L・A』てなんぞな? 」


「『リトル・アーミー』ってギルドっす。大型の討伐クエストは大体合同で攻略するんすよ」


「ほぉ」


 イベントの流れを伝えたところで、ユーヤからバトンタッチされた斬月がクエストの詳細の説明に入った。


「えーっと、今回のイベント『大罪の天使:嫉妬』はレベル82以上のプレイヤーに限定されます。しかも攻略は明日行いますので、予定の空いてない該当プレイヤーはいますか? 」


「すまん、娘と出かける約束をしてしまってるんだ」


 五郎が手を挙げると同時に一気にホールがざわついた。いつもならイベントに必ず参加する五郎の欠席はそれだけ大きいということだ。


「おーい、静かに静かに。他はいない? 」


 誰も手を挙げないのを確認してから斬月が話を進める。


「じゃ、いつも通り参加したいプレイヤーはいる?うちでレベル82以上ってそこそこいると思うんだけど? 」


「はいはい! うちは行きたい!! 」


 リンが弾けたように立ち上がり手を挙げる。それを見てヴァルマも手を挙げた。


「週末なら行きたいです」


「了解、俺とユーヤとアガレスは行くからこれで5人か。あと5、6人は欲しいんだが…… 」


「20人レイドだからな。L・Aに埋めてもらえばこっちの被害が少なくて良いんだけどな」


 斬月の冗談にメンバーが揃って吹き出した。波が収まってすぐに列の後ろの方から「じゃあ俺らも行きます」と手が挙がった。


「色々あってログインとレベリングしかやってなかったもんですから、俺ら暗殺者アサシン組も参加しますわ」


「二人ともで良いの? 」


「うん、どーせコンサルタントなんて依頼がなけりゃ暇人だもの」


 そう言って立ち上がったのは『麒麟キリン』と 『玄武ゲンブ』、このギルドにおける貴重な暗殺者アサシン職業ジョブプレイヤーである。二人は現実で夫婦であり、揃ってゲーマーというなんとも羨ましいカップルなのだ。しかも外見は麒麟が男性の竜人ドラグロイド、玄武が女性のエルフと性別をリアルと入れ換えて遊ぶという徹底ぶりである。


「ここ半年ギルド内の貢献度が落ちてますもんね、頑張りますよぉ! 」


「これで7人か、他はいませんか? 」


「じゃ、俺が行きますよ。どうせ遊撃手は必要でしょうし」


 その声の主は人だかりの中央にいた。一際背丈の高いエルフの彼は『村正ムラマサ』というプレイヤーで、このゲームのプレイヤー人口の僅か1%に満たないと言われている職業ジョブ闘士デュエラー』という唯一二刀流が出来る職業である。


「それに、あなたの実力も知りたい。闘士より遥かに希少な『剣客』やってるんだから相当なものでしょ? 」


 村正が駿河を見る。駿河は村正の顔を見てニヤリと笑った。


「おやおや、定年過ぎの年寄りに明日の暇を確認するのかね? 」


 再びホールが沸いた。その言葉の意味に込められた返答を理解したのか斬月が続ける。


「9人でいい? 他は良いの? 」


 返事がないことを確認してユーヤにバトンを回す。再び立ち上がったユーヤは全員を見渡して告げた。


「イベント期間はレベリング用のゴーレムクエストも無料で受けられるし、皆で楽しみましょう。討伐参加メンバーは残ってください、以上です」





 ──────────────────────

「と、言うわけで今回の敵は雷属性が高いそうです」


 公開されている情報を整理するユーヤたち。村正がボソッと呟いた。


「面倒だな、雷属性のボスと言えばトールか建御雷たけみかづちくらいだろ」


 このゲームにおいて攻撃魔法の役割を果たすのが属性攻撃というものだ。特に雷属性の攻撃を持つモンスターは今のところ二種類だけなので相手の出方が読めないのが難易度を上げる要因なのだろう。


「やったら良かった。この前『属性反撃アトリビュート・カウンター』を取得したばっかりでの」


 駿河のその一言に全員が驚愕した。属性反撃というスキルは剣客だけにしか与えられないスキルの上、スキルが騎士ナイト職業(ジョブ)と被るため破棄してしまう事が多い。その希少さは言うまでもない。


「何で驚くんです? もしかしてこれ、捨てる奴の方が多いんか? 」


 駿河が申し訳なさそうに質問すると全員揃って首を横に振った。


「えぇ、このギルドに来る前も何人か剣客のプレイヤーを見たがそれを持ってる人は初めてです」


 玄武が口を開くと麒麟は多少おどけた口ぶりで駿河の肩を引き寄せた。


「有効なんだけど使い所が難しすぎてそのスキル持ってる人少なすぎるんですよ。むしろ持ってることに感謝のレベルですね」


 良い流れのままミーティングを終わらせたいのかユーヤがメンバーの顔を見渡して作戦を伝える。


「ヴァルマは相手の盾役隊とヘイト集め、アガレスさんと斬月さんはいつもの通り司令塔を。後は移動の際に決めるとしましょう」


 それぞれが互いを見合い、その日は解散となった。

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