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武芸百般~VRMMORPGの世界で武術という概念は通用するのか?~  作者: orion1196
第2話 駿河、レベリングに興じる
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レベリング

毎回、「次はどんな技を出そうかな」と考えながらやっているのでこっちは更新に時間がかかります。お許しください

 月曜日、部活がない日なので勇也はすぐに帰宅し『BZ』にログインした。宿題も基本はデータとして配られるため、ゲームの中で済ませられるのも大きかった。


「……… で、もうクラス中が駿河さんの話で持ちきりで…… 」


「まぁあれだけやればそうなるよな。大体ユーヤ君、君自身が有名人なのを忘れてない? 」


 ログイン後すぐに宿題を始めていると、3分もしないうちに斬月とアガレスがやって来た。もっぱらユーヤがギルドホール中央の円卓に陣取って宿題中は二人ともユーヤの話を聞くのがいつもの光景である。


「でも秋葉原エリア9位ですよ? そんなに有名になることも…… 」


「そりゃあ30のおっさんがその順位なのと中三の君がそのランクなのは話が別だよ」


 アガレスがユーヤの肩を叩く。斬月はケラケラと笑いながらアガレスに相槌を打った。


「アガレスの言うとおりだね。もう少し自分の凄さを知っておくべきだよ」


 机に向かっている状態のままヘッドロックをかけられ、逃げ場を失ったユーヤはすかさず「そう言えば」と話題を逸らした。


「月曜日って普通忙しくないんですか? IT関係って」


「支店は忙しいんだろうが報告が上がってくるのは火曜日だからねぇ、明日は君の部活日同様かなり遅いよ」


「アガレスさんもですか? 」


「うん。普通本社の営業マンは特殊な部署であればそんな感じかな」


 アガレスが話終わると同時にユーヤのペンを進める手も止まる。


「へぇー…… よし、終わりました」


「お疲れさん、でもまだ5時半だからほとんど誰もいないね」


 いつもならばクエスト帰りのメンバーで満杯なギルドホールも、確かに今は閑古鳥でも鳴きそうなほどにガラガラである。アガレスが3人だけのホールを見渡しながら斬月に話しかけた。


「でも斬月、集まる予定もないんだから三人でどこか。行かないか? 」


「でもサムライ一人にアーチャー二人じゃろくなクエスト受けられませんよ? 」


「そうなんだよなぁ…… 」


 アガレスが椅子にどかりと腰を下ろし、伸びをした。大型ボスの討伐クエストを請け負うにも四人以上いないとそもそも人数が足りないから受けられない。


「じゃあ頭数合わせで私に付き合って頂けませんかな? 」


「うぉ!? 」


 三人が揃って同じ反応をしながら飛び上がる。後ろを振り向くとそこにはいつからいたのか駿河が立っていた。


「い、いつの間に…… 」


「ついさっきじゃよ。欲しい装備があるさかいにウロボロス討伐クエストをやりたいんじゃがな…… 」


「あぁ、黒天こくてんの剣客装備ですか。あれは剣客の最高装備ですからね」


 三人は即座に理解した。確かに単騎ではウロボロスのクエストは受けられない。


「でもウロボロスって何人から受けられましたっけ? 」


「6人だね。リンや紅炎たちが来るまで待ちましょうか」


 アガレスが弓を取り出すと同時にバタバタという足音が近づいてくる。


「おはよー! あ、駿河さんもいるー 」


 獣耳をなびかせながらリンが勢い良く転がり込む。その後ろを騎士ナイトの鎧を着たヒューマンの男が続いた。


「お久しぶりです。最近卒研が長引いてて」


「お疲れ様ですヴァルマさん。久しぶりに時間が空いたんですか? 」


 ユーヤが話しかけると、ヴァルマは「まぁね」と言いながら頭を掻いた。


「あぁ、バイトも詰めてないからなんとかね」


 間髪入れずに斬月がヴァルマの肩に寄りかかった。


「これで壁役が来たね。ヴァルマ君、ウロボロス討伐を手伝ってもらえます? 」


「別に良いですけど、いきなりどうしたんですか斬月さん? 」


 盾を取り出しながらヴァルマが斬月を見ると、斬月は「ごめん、説明が足りんかったね」と言って慌てて駿河を指差した。


「駿河さんは剣客なんだ」


「黒天ですか、納得です」


 そしてヴァルマは駿河の元に歩み寄り、静かに頭を下げた。


「昨日は妹がお世話になったそうで。ありがとうございました」


 駿河は笑って手を振った、その顔はいたって静かである。


「気にしなさんな。あれは不可抗力のようなもんじゃ」


 そして駿河の刀を見てヴァルマが不思議そうな顔をした。


「大罪の太刀ですか、珍しいですね」


「なぁに、こいつを使うにはナイトにはあまり分かりづらい話があるのよ」


 駿河が太刀を取り出す。その鞘はシミ1つない完璧な純白であった。


「さて、ここにいても仕方ないですし行きましょうか」


 ユーヤが武装を済ませると、一同は足並みを揃えてホールを出た。




 ──────────────────────

『公営ギルド会館にようこそ。受注なさるクエストを選択してください』


 街の中央に建っているこの『公営ギルド会館』はクエストを受ける際に必ず立ち寄らなければならない施設である。クエストの受け付け、報酬の受け取り、所持金の預け入れ等ありとあらゆる設備が詰め込まれている。


 ユーヤがリストの中からひとつを取り出すと、再び無機質なアナウンスが対応する。


『クエスト名【空を覆う黒】、内容はウロボロス二体の討伐で宜しいですか? 』


「はい、お願いします」


『参加メンバーはプレイヤーネーム【ユーヤ】、【斬月】、【アガレス】、【リン】、【ヴァルマ】、【駿河 孝一】の六名で宜しいですか? 』


「はい」


『プレイヤー間のレベル差により駿河 孝一さんに経験値1.5倍のボーナスが発生しますが宜しいですか? 』


「問題ありません」


『では、只今よりクエスト【天を覆う黒】を開始いたします。エリア移動はアナウンス終了後すぐに移動用グリフォンが到着します。それでは、冒険の世界をお楽しみください』


 アナウンスが終了すると同時に、バサッ、バサッ、っという翼の音を伴ってグリフォンが二頭現れた。ユーヤが皆の方に振り返る。


「行きましょうか」


「頼みますわ」


 全員がグリフォンに跨がると、グリフォンは即座に翼を羽ばたかせ空へと躍り出ていった。

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