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名探偵VS狂気の発明家

作者: さきら天悟

「できたッ。

これが、あれば・・・

絶対に・・・

完全犯罪が成立する」


狂気の発明家は叫んだ。




2017年10月某日、マンションの一室で遺体が発見された。

遺体の胸部には大きなサバイバルナイフが刺さっていた。

明らかに心臓に届いており、即死という所見は納得できるものだった。

部屋にはナイフ以外遺留物はなく、監視カメラの映像の解析が待たれた。



事件から三日後、一人の容疑者が上がった。

被害者に多額の借金がある、自称天才発明家と名乗る男だった。

警察は任意同行を男に求め、所管の警察署で事情が始まった。


「あなたは、10月X日、どこにいましたか」

中年刑事は男を大きな声を出し、問い詰める。


「アリバイですか。

ちょっと待ってください。」

男はスマホを取り出す。

スケジュール帳を開く。

「新潟へ売り込みに行く前日ですね。

だったら、ずっと家にいました」


「証明できる人はいますか」

中年刑事が訊く。


「バカですか。

家にいたといったじゃないですか」


中年刑事は掴みかかろうとするが、

後ろに立つ若い刑事が押しとどめ、

「録音していますよ」と耳打ちした。


「一人でいました。

ネットをしていましたから、

ファイルの履歴を調べてもらえば分かります。

でも、パソコンの履歴なんて改ざんできますけどね」

男は悪態をつく。


若い刑事が机に一枚の紙を置いた。

男にペンを渡す。

「被害者の家に行ったことはありますよね」


男は答える。

「3、4回かな」


若い刑事は言った。

「この紙に間取りを書いてみてください。

覚えている範囲で結構です」


中年刑事は怪訝な顔をして、やり取りを見つめる。


男はスラスラと間取りを書く。

1DKの輪郭を書き、バス、トイレ、ベットの位置を書き入れた。


「彼は犯人じゃありませんね」

若い刑事は断言した。

「彼は左利きです」


男は左手でペンを持ち、すらすらと間取りを書き上げていた。


中年刑事は茫然と中空を見つめる。

遺体のナイフから推定すると、犯人は右利きだった。



その時だった。

ドアが開いた。

「犯人は彼です」


男は顔を上げ入ってきた人物を見つめる。

中年刑事と若い刑事が振り返る。


「あなたは、名探偵・・・」

若い刑事の声が上ずる。


名探偵は犯人の方に近づき、犯人の左肩に自分の手を置いた。

そして、続けた。


「彼のパソコンのネットの履歴を調べました。

するとあるサイトにアクセスしていることが分かりました。

それは障がい者の補助具でした」


「障がい者の補助具?」

若い刑事は声を上げた。


「彼は発明したんです。

恐ろしいものを」


「名探偵、恐ろしいものとは・・・」

若い刑事は名探偵に詰め寄る。







「無理がある・・・」

名探偵藤崎誠はパソコンに頭を突っ伏す。


「私人が警察署に入れるわけないよな~

それに容疑者にもなってない男のパソコンを調べるなんて」


藤崎は天井を見上げる。

探偵の登場方法をいろいろと思い浮かべた。


「いいアイデアが出来たと思うんだけどな~」


完全犯罪のトリックは完ぺきだった。

発明家が殺人兵器を発明するという。

それは、左利きを右利きにする発明だ。

利き腕の反対の右腕で握ったナイフを、

補助具に左手を添え、相手を突き刺す。

補助具を使うことにより、利き腕ではない方で、

ナイフを突き刺せるというわけだ。


「推理小説は難しいな~」

小説家になになりたい名探偵藤崎は深いため息をついた。

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