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朝雛姫と朝雛亜夢という女の子。過ぎてしまった誕生日。

読んでいただけると嬉しいです。



いつもありがとうございます。

 校舎内から外に出る頃には、俺とリリィーナ以外に椎菜が加わっていた。椎菜が俺達の方をじっと見て「いいですよね?」と、聞いてきたからだ。

 よく分からないが、リリィーナと一緒にいると椎菜の反応が悪くなるような感じがする。椎菜が少し不機嫌になった前回も、この金髪の女の子が横にいたし……。

 多分あれだ。最近やっと仲良くなれたコイツを取られたくないのだろう。椎菜も可愛いところがあるな。

 しかしあれだ。リリィーナ達が仲良くなれたのは凄く嬉しいことだが、本当は俺がもっと彼女達と仲を深めていかないといけないんじゃないだろうか。

 この二人とはそれが現実的になってきてはいる。けれど、他の女子とは相変わらずだった。


「寺田さんは要注意人物ですわね……」

「何で?」

「……自分の言いたいことをしっかりと言うことができる、それは強みですわ」

「ふ~ん」


 どうして寺田のことがこの場で出てきたのかも、コイツが何故ここまで構えてるのかは分からない。


「あとは朝雛さんも危険ですね。ああいう子の方が保護欲をそそられることもあるみたいなので」

「確かに……そう考えると、この方の周りには危険人物が多いですわ……」


 うーん、分からん。全員が凶器を持ってるとか? なわけない。

 一緒に歩かないかという提案で今外に出てる俺達だが、気づけばそこに俺は必要がないみたいだった。

 別に俺は二人が仲良しならそれでいいぜ、アデューと、その場から静かにフェードアウトする。

(レズとまではいかなくても、百合が見えたらいいなぁ……)

 お嬢様と市民のレズカップル。うん、実にアニメとか漫画っぽい。それが現実で可能な空間なのだから余計に面白い話だ。

 とりあえずそんな百合カップルになれそうな二人の元から去った俺は、ぶらぶらと歩いていた。

 が、何か面白い事や物がないかという期待に胸を含ませていたものの、何もない。することもない。


「はぁ……教室に帰るか……」


 現状今のこの学院でやることと言えば女の子と話をするくらいしかなかった。

 何より、授業がそういう風に構成されてることが拍車をかけている。


「ねぇ」


 靴を脱いで自分の場所にしまおうとした時だ。外側ではなく今から向かう方角から声をかけられ、そちらを見やると、今朝出会った朝雛先輩がいた。


「亜夢と話したんだって? あの子、あんまり喋らないでしょ?」

「そう……ですね。寺田さんがいたからってことで、同じ場所にいました」

「寺田……ああ、麻衣ね。そうね……あの子がいなかったら、今この場所に亜夢はいなかったかもね」

「二人は幼馴染か何かなんですか? 信頼の寄せかたが、そういうのでしか考えられなかったんですけど」

「……それは亜夢本人から聞けばいいと思う。私の口から聞くのは違うでしょ?」

「はぁ……でも、俺ともう一度話をしてくれるかどうか……」

「大丈夫。あの子が初対面の相手と少しとはいえ、確かに会話ができたのだから」


 姉にも信頼されてるなぁ。姫はそういうけど、本当に俺が直接聞くことなんてできるだろうか。

 普通いきなりそんなこと聞かれても答えないと思う。……思う、であってそれが当たり前ではないが、急に踏み込んでこられても本人が困惑する。

 それは、直感的とかであって、絶対にどの子にも当てはまるわけではないけど……。


「てか、君があの子ともっと話をしてあげてよ。あの子にとって男ってのは本当に縁のないものだからさ。これからの為にってことで、よろしく頼むよ」

「ま、まぁ話をするくらいなら別に何も問題ないですしね。分かりました。どうせこの後も対話に時間がさかれると思うので、その時話をしてみます」

「うん。お願いね。じゃあ私はもう教室行くから。君も遅れないようにね」


「ばいばい」といつもと同じように小さい声でそう言って、姫は去って行った。

 果たして亜夢は俺と話をしてくれるだろうか? 疑問を抱きつつクラスに向かう。


「あっ、芳情君、おかえり~」

「おう。寺田さんは昼休み満喫できたか?」

「うん! あ、この子が芳情君とお話がしたいって」


 そう言って寺田が後ろからこちらに差し出すように見せてきた相手は、願ってもない相手の亜夢だった。

 俺はリリィーナと相手にする時みたいな勢いを全て外して、亜夢用の体制を作る。


「朝雛さん、話って何?」

「……潤一?」

「うん、俺は潤一だけど……もしかして、名前で呼びたいとか?」

「……違う。でも、これで合ってるようだからそのまま呼ぶ。……姫姉とさっき話をした」

「さっき先輩と話をしたから知ってるよ。君のお姉さんも、君と俺が話をしたって知ってたし」

「……うん。姫姉はどうだった?」


 姫の話か。俺が姫に対して抱いた感想……、それは――――


「何ていうか、流石姉妹って感じだね。雰囲気が似てる」

「……よく言われる。まいまいにもそう言われた」

「まいまいは私です」

「知ってるよ。そうだ。嫌なら嫌って答えてくれていいんだけど、朝雛さんと寺田さんって、もしかして幼馴染とか?」

「……亜夢でいい。私とまいまいは幼馴染じゃない。出会ったのも、ここ最近」

「へ~なのに仲良くて凄いね!」


 表の世界だと仲良さそうに見えても裏ではドス黒い感情が渦巻いているという俺のイメージ像が、この二人に対しては例外だと訴えていた。完全な願望だが、寺田に裏はないように思える。

 きっと寺田が全体的に合わせてあげているのだろう。じゃなければ、亜夢みたいな女の子と仲良くなるのは難しい。


「寺田さん、君は凄いよ」

「うん? よく分からないけど……そうそう、亜夢のこと芳情君が名前呼びして、また亜夢が芳情君のことを呼び捨てにするのなら、私もいいよねっ?」

「別にいいぞ。減るもんじゃないしな」

「やったっ。なら私も麻衣でいいからね。何なら、まいまいでも可!」

「じゃあまいまいで」

「うん! これから仲良くしようねっ、潤一君!」


 おぅ……。乙女の笑顔が俺の心に突き刺さります。その嫌味を感じない純粋そうな笑みが、何とも素晴らしく、眩しく感じる。

 麻衣は活発的といった印象だった。活発=短髪というわけではない。だが、短く切りそろえられた髪の毛が、何とも彼女らしいと言える。

 亜夢は後頭部より下らへんで一つだけ結っており、亜夢本人の小ささと、ぴょんぴょん揺れる一房が似合っていた。……猫じゃなくても、思わず目で追いたくなるような、そんな小さな魅力。

 ともすれば高水準な彼女達と、俺は当たり前なように名前呼びできるようになったことが、少しだけ信じられない。……リリィーナや椎菜も、そこだけは決して許可をくれないからね。

 まぁ普通は時間をかけてやっていくことだし、俺達が過程をぶっ飛ばした感は正直否めないものの、麻衣らが楽しそうだから気にしないようにしよう。


「……潤一。潤一の誕生日っていつ?」

「誕生日? 俺は四月三日だな。もう過ぎてる」

「……ほぅ……なら、お誕生日会をしよう」

「いいのか? でもどこでやるんだ?」

「……学院内でできる。初日はアインツベルンと潤一がやらかしたせいで、歓迎って感じじゃなかった」

「まぁ……確かにね……だけど、あいつも本当は良いヤツさ」


 というか亜夢はアインツベルンと呼び捨てしてるんだな。……相手が誰だろうと気にしない。そういう彼女のマイペースさが伝わってくる。

 その点で言えば俺と亜夢は似ているのかもしれない。できればその人その人に合わせた態度なんて作りたくないし、亜夢を少しだけ真似できれば、嫌な人物にはならないだろう。

 もっとも、マイペースすぎれば今度はそこで迷惑をかけるわけだが……、何でも程度が重要であるってことだな。


「見つけましたわ! あなたは毎回毎回!」

「……潤一くん。どうして色んな女の子に手を出そうとしているんです?」


 こういう修羅場的雰囲気にも慣れていかないといけないのだろうか。


「色んな女の子に手を出すって……言い方が悪いな椎菜さんも」

「本当のことを言ったまでです。どうせ後になったら、ここにいるリリィーナさんと更に仲を深めようとするのでしょう? 本当に見境のない男の子ですね、あなたは」

「待て。俺をそんなラノベ主人公みたく呼ばないでくれよ。大体、手を出すって何だよ……俺はただ話をしているだけ――――」

「じゃあすっかりお互い名前呼びになった感想を聞かせてもらえますか?」

「お、おい! 盗み聞きは駄目だぞ! 訴えられるぞ!」

「私の発言と潤一くんの発言、どちらが多く納得してもらえると思ってます?」


 そりゃもちろん椎菜である。意地悪な質問だった。

(なんだって俺は、毎回椎菜に冷たくされてるんだ? どんどん好感度下がってるだろ、これ)

 このままじゃメインっぽい椎菜と、互いが名前を呼び合う関係にはなれそうにない。


「よ、よしっ! なら、俺に挽回できるようなチャンスをくれないか?」

「……聞きましょう」

「俺と、放課後デート……してはくれないだろうか?」

「……デート……どうして私が潤一くんとしなければならないのですか? もし私が行くとしても、それはデートではなく、一方的な潤一くんの罪滅ぼしですよね?」

「……前から聞きたかったんだけど、どうして俺は椎菜さんに責められてるの? え、俺が無意識なだけなの?」


 俺は奴隷か何かかよ。女の子に逆らえず、恥ずかしい命令でも何でもやってしまうそんな自分が容易に想像できた。……女、怖い。


「そ、それは流石に可哀想なことですし、私も行ってあげても、よろしくてよ?」

「私も行くー」

「まいまいが行くなら行く。潤一の誕生日パーティの準備もあるし」

「今の話をもう一度聞きたいですわ」「朝雛さん、もう一度お願いします」

「……俺は皆が仲良ければそれでおーけーさー」


 それに今年の誕生日はいい時間を過ごせそうだ。……もう過ぎてるけど。

 なら邪魔しないようにと、またもや静かに俺はフェードアウトした。

~してしまったが、的な文章を多用してしまうので、気をつけていきたいです。


麻衣や亜夢も魅力的な女の子にしてあげたいです。それと、苹果がいい感じに暴走していますね。

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