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対話。もう一度。

読んでくれるとありがたいです。



※これまでの話の中で、地の文ではリリィーナという呼び方に直しておきました。

「え? 授業やらないの?」

「そうね。これから必要なのは男子と女子が共に通えるかどうかだから、必要はないね」


 学院長が朝何でもないといった調子でそんなことを言ったから口を挟んだが、本当にやらないみたいだった。

 その方が俺的には楽だし勉学の心配をせずに済むものの、じゃあ俺達は何をしにここに来ているのだろうと不安になる。

 俺の気持ちを察したのか学院長は「やりたければやるけど?」と言ってきた。そうじゃない。

 別に勉強をしなくていいのならそれに越したことはない。学校で授業を受けることさえ面倒くさく感じる俺が、もし課題が出た時のことを思うと――――ないほうがいいはずだ。


「基本的にやることは対話ね。潤一くん次第、と言ったところかしら?」

「対話ねぇ……でも、明らかに警戒心があるって感じですけど?」


 椎菜とリリィーナ以外は相変わらずといった感じだった。

 俺がそう言ったことによって更にビクビクとし始めて、どうすればいいの? と、学院長を見る。


「そのための対話よ。別にあなた達は一年生なんだし、今すぐに仲良くなれるなんて思ってないわ」

「だけど共学になるための実験なんですよね? そんな悠長ゆうちょうなこと言ってる場合じゃないんじゃ……」

「学院の心配はいらないわ。あなた達はとにかく、仲を深めればいいの。何なら娘の苹果と恋人の関係になったって目を瞑るけど?」

「……バカ言わないでください」


 娘をおもんばからない発言をした学院長ははおやに、娘である椎菜が物申す。


「私と潤一くんはそういう関係じゃありませんから。今後は――――分かりませんけど、少なくても今はあり得ないです」

「もう名前呼びしてるのに? ……分かったから怒らないで。とにかく、今から一対一で話をしてもらうから、各自そのつもりでいるように」


 学院長の発言に周囲がざわめきだした。そりゃそうだ。俺と話をしたくない連中だっているだろうに。

 ゆっくりでいいんじゃなかったのかよ、そう気持ちを込めた目で見てみると、学院長はいい笑みを浮かべた。……こいつ、面白がってやがる。

 結局対話の時間はそのままの流れで始まった。椎菜が溜め息をつきながらこちらに近づいてくる。


「どうしようか?」

「……あの母がああ言った以上、絶対覆くつがえることはありません。話をするしかないようですね」


 それは俺にではなく周りの女子達に言っているようだった。

 リリィーナも近寄ってきて、俺の周りには現在、椎菜とアインツベルンの他に二人の女の子がいる。


「ほ、芳情君……だっけ?」

「ああ……うん」

「良かった……名前間違ってたらどうしようかと思って……いや~最初の日は「この人凄いなぁ」ってつい本気で思っちゃったよ……その……怖くないの?」


 その女の子はリリィーナの方をチラチラ見ながら聞いてきた。……椎菜だけじゃないってことか。


「アインツベルンなんて怖くないぞ。それに、こいつは案外良い奴なんだ。今朝だってな、自分が当番だからきちんと花の水やりをしてたんだぞ?」

「へ~結構アインツベルンさんと仲良くなったんだねっ」

「まぁな。俺が土下座して「頼むよぉ……友達になってくれよぅ!」って頼んだからね」

「ははっ、何それ! 芳情君は面白いね」


 俺が面白いか……。今まで生きてきた中でそんなことを言われたことはなかったな。


「そんなことされてないですわ」

「まぁまぁ、リリィーナ先輩は少し黙っててください」

「名前呼びしてほしくないですわ」

「……融通ゆうずうがきかないなぁ……」

「アインツベルンさんは潤一くんの言う通り優しい方なので、これからはいっぱい話をしていきましょう」

「椎菜さん……そう言ってもらえて、素直に嬉しいですわ」


 うん、仲良きことは良きことかなである。てか、多分俺ここにいらないんじゃないかな。

 そう思って静かに退席しようとすると、まさかのリリィーナから止めの声が入った。


「どこ行こうとしていますの?」

「いや、だって俺がいなくてもお前や椎菜さんがいるし大丈夫かなって」

「あなたの空気の読めなささが必要なのですわ。勝手に去るのは許しませんわよ」

「けど……あ、ほら君。俺のこと邪魔でしょ?」


 先程から一緒にいたものの一言も発していない女の子に声をかける。


「別に……まいまいが楽しいなら構わない」

「まいまい? え? ここにカタツムリさんでもいるの?」

「あ、まいまいって自分のことだよ。寺田麻衣てらだまいっていいます。この子は朝雛亜夢あさひなあむ

「朝雛って……もしかして朝雛姫先輩の妹さん?」

「そう……どうして姫姉ひめねぇを知ってるの?」

「今朝会ったんだ。朝雛さんと同じく、静な感じだったなぁ……」


 しっかりと起きているにも関わらず、その眠そうな感じがそっくりだった。

 とまぁ、寺田と朝雛妹――――亜夢が加わったことによって、俺達だけはとにかく盛り上がったと思う。

 学院長は「そうなったかぁ」と言わんばかりの顔でこちらを見ていたが、近づいてきてくれたのがこの二人なだけだったので、ひとまずはどうしようもない。

 無理に誘ってもいいし、実際誘える勇気はある。けれど、無理するともっと距離が離れてしまうだろうし……、タイミングが難しい。

 その点で言えば、この輪に寺田と亜夢が加わったことが大きかった。

 寺田と亜夢が俺達に加わって盛り上がることで、他の女生徒の警戒心を下げる働きが期待できるかもしれないから。

 俺には難しくても椎菜達相手ならそういつもと変わらないらしく、その輪は少しずつ大きくなっていった。……というか、収集が効かなくなっていた……。

 俺と激突したにも関わらずその後も関係が続いていることが気になったらしく、まず多くの女の子達がリリィーナ相手に突っ込んでいく。寺田と亜夢もそれに加わり、誰も止める者はいない。

 いや、いるにはいるが、その椎菜も今回ばかりは役に立たなそうだ。いつの間にかやってきていた夏恋や森塚らが、椎菜を取り囲んでいた。

(無法地帯か……ここは)

 おまけに学院長もその夏恋達の群れに加わり、密集地帯が更に濃密になりそうな頃、俺は一人だけ群れを脱して窓側からその様子を眺めてみる。

 渋谷の交差点を歩いている人は多分今の俺と同じような気持ちにちがいない。……まるで人がゴミの――――止めておこう。


「潤一」

「姉貴か。どうした?」

「……その、さ。お父さん、私達のことについて何か言ってなかった? か、帰って来て欲しい……とか」

「いんや? あいつはそもそも家にすら全然いないからな。ここに来る日だって電話で聞かされたくらいだ。どうせ何も考えてないんじゃないの? まず、自分に非があることすら分かってなさそうだった」

「そっかぁ……じゃあさ、どうせ家に帰っても一人だっていうなら、私達の家に来ない?」

「……止めとくよ。母さんは俺のこと好きじゃなさそうだしな」


 多分、母は俺が親父と似ているから連れて行かなかったのだと思う。もし好きで愛情があるのなら、あんな親父の元から連れていってくれていただろう。

 別にほぼ一人暮らし状態ってのも悪くないし、金だって一応親父あいつが振り込んでくれているから問題はなかった。

 これで後は卒業後自分で働いて金を稼げるようにすれば、晴れて親離れができる。

 ……もう自分の目の前で母と親父の喧嘩は見たくなかった。


「……そんなことないのになぁ……あ! じゃあ私が卒業したら働き出すし、私が一人暮らしを始めれば潤一も来れるじゃんっ。完璧な計画!」

「駄目だよ。こちとら俺単体じゃ何も姉貴に返すことができないんだから」

「……私は気にしないよ? 私は潤一とまた仲良く暮らしたいな……」


 そうは言っても現実ではこうなっているのだからどうにもならないんだ。

この作品では限りなく多くの女の子が名前を伴って出てくるだろうと思うので

メモをしてないと忘れそうですね。

メモをしていても忘れていたり、名前の呼び違い、誤字脱字など多いですが……

いつも、ありがとうございます。


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