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森塚愛乃先輩。賭け事。

読んでくださると嬉しいです。



※自分で設定していたのにも関わらず『潤一』のはずが『準一』となっていたのを修正しました。

「潤一が私に聞きたいことがいっぱいあるのは分かるけど、とりあえず今は時間がないからまたね」

「お、おい!」


 夏恋は来た時ど同様の歩き方で教室から出ていった。そうか、そういえばまだホームルーム? だったんだ。


「アインツベルンくん、まだ潤一くんに言いたいことはあるかい?」

「……もういいですわ。どうせもう足を踏み入れてしまったことは変わりませんし、これ以上言っても疲れるだけですわ」

「うむ、ありがとう。さてと、色々あったがこれから潤一くんもこのクラスの一員になる! 皆仲良くするように。じゃあこれで終わることにしよう」


 椎菜が「起立」と言って皆を立たせた。やはり、アインツベルンのような貴族が在籍してる以外は、普通の共学校と大して変わらないらしい。

 流石に男子に対して警戒心が強くなってるのか、俺の方に近寄って来てくれる女の子は椎菜しかいなかった。


「芳情さん、いきなりやらかしましたね」

「いや~照れるなぁ……」

「褒めてません。まったく、何考えてるんですか……あなたのお姉さんが来てくれたから良かったものの、最悪、一家ごと滅ぼされる可能性もあったのですよ?」

「あいつ、そこまで権力持ってるのか?」


 椎菜がくれるあいつの情報は何故こんなにもイラつく要素ばかりなのか。


「それよりも、生徒会長さんがお姉さんってことに驚きました」

「俺もまさかここにいるなんて思わなかったからね。それよりさ、二年とか三年にも貴族とかっているの?」

「いますよ。それこそアインツベルンさんよりも上の方々です」

「ほ~ならさ、どうして姉貴は生徒会長になれたんだ?」


 だってあいつは普通の市民だぞ、そういうつもりで聞いた俺だが、椎菜の反応は少し違っていた。


「三年生の方達にひと目置かれているんです夏恋先輩は。ですので、驚くようなことでもないかと」

「姉貴がねぇ……その不思議な選択をした先輩方に会いたくなってきたよ」

「呼びましたか?」


 気づけば側に女の人が立っていた。

(先輩か?)

 よく見れば椎菜の制服とは少しだけ変化がついていることに気づく。椎菜のリボンは赤色だが、その人のリボンは緑色だ。


「えっと……」


 隣にいる椎菜に目線だけで「どなた?」と問いてみると、椎菜はその問いを理解し説明してくれる。


「三年生の森塚愛乃もりつかよしの先輩です」

「あら、よく知っていますね?」

「森塚先輩は結構有名ですよ?」


 なんでも森塚は生徒会副会長らしい。だから、夏恋ともよく一緒にいるとか、いないとか。

 ……何か弱みでも握っているのか? 夏恋に限ってそれはないと思うが、そうでもしないとこの森塚を抑えて夏恋が生徒会長になるってのは非現実的な話だ。


「森塚先輩、もしかして姉貴に、弱みでも握られてます?」


 そして、気になったら聞かずにはいられない俺の性格。

 俺の質問に森塚は苦笑して首を左右に振った。


「そんなことはありません。夏恋さんは確かな実力で生徒会長に座しているのです」

「でも、三年生にも偉い立場の人がいるって聞いたんですけど?」

「……当然全ての人が賛成しているわけではありません。ですが、立場が上の方々が認めてるからこそ、夏恋さんが生徒会長になってるのが嫌な人の行動を抑制することができるのです」

「……やっぱり認めてる理由が分からないですよ……」


 それに、夏恋は昔から大雑把な性格だから、皆を引っ張る仕事とか向いてないと思う。


「ところで、どうして森塚先輩はここに来たんですか?」

「夏恋さんが「弟がいた! 感動の再開だよ!」とテンション高く話していたので、少しだけ気になったんです」

「姉がいつもお世話になってます」

「いいえ、お世話になってるのは私の方ですから。それよりも、アインツベルンさんと口論になったと聞きましたが、大丈夫ですか?」

「あ~そんなこともありましたねぇ……姉貴が来てくれて助かりましたよ。そうじゃなきゃ椎菜談によると、一家丸ごと滅ぼされていた可能性もあるらしかったです」


 まったく質の悪い話だ。普通学校に通ってたら「ここでは権力を振りかざせません」ってなるのが普通じゃないのかよ。

 下手すりゃ学院長の首が飛ぶ可能性もあるらしいし、朝の様子を見てもあまりいい学院とは言い難い。


「とぉ~」

「わっ――――姉貴!?」


 俺は夏恋にハグされ、体を触られ、手も握られ――――冷静に考えてる場合じゃなかった。


「いきなりそんなことは止めてくれ。今度の用件は?」

「いや~アインツベルンちゃんといきなり危うい関係になりそうだったから、仲良くなる為のプランを伝えに――――」

「「仲良くなる気はない」ですわ!」


 俺とアインツベルンの言葉が重なる。見事なハモりだった。


「え~何で~? 仲良くしようよ~」

「あり得ませんわ! 夏恋さんと仲を深めるならともかくとして、こんな方なんかとっ」

「同感だな。いきなり人を小馬鹿にしてくる女と仲良くはしたくねぇな。しかも朝のは何だ? 賛同を求めるフリをしていたが、ありゃ半ば強制じゃねぇか」

「ぐぬぬ……あなた、本当に滅ぼされたいようですわね?」

「あれ~? 貴族ってのは人の会話を盗み聞きしても問題ないのかな~? あ、別にいいのか。だって権力で揉み消せるんだもんな!」

「ストップストップ~どうして二人はあおってばっかなのさ」


 無理もない話だ。どうやって初対面でいきなり馬鹿にしてくる女と仲良くできるというのだろうか。俺にだってチンケなものかもしれないが、プライドはある。

 きっと目の前のアインツベルンは自分の容姿の良さなども理由に含めて、他人の上に立とうとしているに違いない。


「分かったぜ姉貴。なら姉貴が考えてきたっていうプランを教えてくれ。俺はそれでこいつと勝負する!」

「受けて立ちますわ! 売られた喧嘩は買うのが趣味ですものっ」

「だから仲良くなるためのプランだってば~はぁ……どうして二人はそんなに好戦的なの?」

「こいつが悪いんだ!」「この方が悪いんですのよ!」

「……もう仲良いのかもね……」


 このまま夏恋のペースだとらちが明きそうにない。ここは椎菜に頼むことにしよう。


「椎菜さん、何でもいいから勝負の内容を決めてくれないか?」

「わ、私がですか? ……いきなりそんなこと言われましても……」

「なら、私が決めましょう。潤一君も、アインツベルンさんも、それでいいですか?」

「大丈夫です」「大丈夫ですわ」


 確かに椎菜では荷が重いかもしれないと考えると、年上の森塚が適任だ。森塚は静に目を瞑って口を結ぶ。

(どんな内容がきても、俺はこいつに勝つ)

 そして、俺が勝ったらある条件を飲んで貰うのだ。


「勝負内容は――――」


 森塚が口を開いた瞬間、俺達だけでなくクラスの皆が静かになった。


「お掃除対決とか、どうでしょう?」

「……お掃除」

「対決……ですの?」

「はい。それなら学院も綺麗になりますし、勝ち負けもしっかり出ます。とてもよくないですか?」


 先輩……、俺の目線は白けた感じになってないだろうか? しっかりしてるようで、意外と森塚もズレてるところがあるのかもしれない。

 それに、そんな内容をこのアインツベルンが飲むとも思えなかった。まだ出会って少しだけど、そんな勝負で納得するような女ではないことぐらいは分かる。

 案の定アインツベルンは食ってかかった。


「そんな勝負、納得いきませんわっ!」

「ほらきた……」

「大体、この私が掃除など……それは使用人がやることですわ!」

「じゃあ不戦敗でいいのぉ~? 潤一は何か企んでると思うけど~?」

「なっ、今すぐその邪な考えを白状なさい!」

「なら……アインツベルン、もし俺が今回の勝負で勝ったら」

「勝ったらなんですの!?」


 少しだけ見下すような笑みを作って、その続きを言う。


「お前の権力とやら、俺が学院に在籍してある間、禁止にさせてもらう!」

実際同じ場所にいたら窮屈ですよね。

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