自分でも分からない感情。リリィーナのハーレム。
いつもありがとうございます!
俺は風呂からあがったリリィーナの腕を引いて、一方的に外に出た。
女子は何かと風呂上がりにすることがあるのかもしれないが、そんなこともお構いなしにだ。
リリィーナは何も言ってこない。けれど、多分驚きすぎて何も言えないだけだと思う。
一悶着あった公園にやってくると、リリィーナの腕から手を離す。
「リリィーナ。聞きたいことがあるんだ」
椎菜に言われたからとうこともある。が、俺個人が彼女の真意を聞きたがっていた。
「真剣に、俺のことどう思ってる?」
その答えを聞けば何かが変わる可能性もあるかもしれない。
「それだけが聞きたくて、私をここに連れてきましたの?」
リリィーナは俺に対して苦笑し、それから息を吸い込んでから言った。
「お昼にはあんな事になりましたけど、私が別にあなたを好き……と、言うつもりはないですわ。と言うよりも、分からないと言ったのは本当ですもの」
「そうか。じゃあ俺らはこれからも友達、そうだな?」
「……恐らく。ただ、星間学院が存続しなければ、きっとすぐに廃れるのでしょうね」
そのとおり。学院という共通するところがあるからこそ、俺とリリィーナの関係はうまれている。
もし学院が存在していたとしても、俺がテスト生として選ばれなければ枠外。そして、リリィーナが学院を卒業したとしても、立場上から関わることは一切ないはず。
築きあげるのは大変で、崩れるのは一瞬。それはどんな物事に対しても、言えることだった。
「以前から私が変な行動をしていたのも悪いとは分かっていますわ。けれど、自分の内に潜んでる感情をああして確かめたかっただけですの」
「それがキスか? ああいうのは勘違いしちゃうから止めてくれ。せめて、手をつなぐとかでいいじゃんか」
「なるほど……その手がありましたわね」
「気づいてなかったのかよ」
それにキスじゃいきなりハードルが高すぎる。せめて間接キスならまだいいものを。
話も済んだし俺が「帰ろうか」と言うと、早速リリィーナが手を繋いできた。
温かく柔らかい感触。そして、俺よりも小さい彼女の手。
「……別に何とも思いませんわね。強いて言うならば、あな――――潤一の手汗が気持ち悪いですわ」
「折角名前呼びしてくれたことを感動してるのに、そういう余計な一言をつけないでくれ」
まぁ悪くもない? そんな雰囲気で俺達は帰った。しかし、問題はすぐに起こってしまう。
家に着いてもその手を離そうとしないのだ。なら俺からと離そうとしても、彼女は尋常じゃない握力で、こちらの手を掴んだままだった。
そんなところを見られれば何かを言われるのは必然だというのに。今までの体験で学んでこなかったのかコイツは。
「およよっ? いきなり外に連れ出したと思ったら、手を繋いで帰ってきた!」
「し、静かにしてくれ姉貴! これがまいまいとかに知られたら――――」
「ここにいます、見つめてますよ?」
特にからかってくる夏恋と麻衣に見つかってしまった。せめて森塚だったら「お楽しみ中のようなので私は去りますね」とか言ってくれるだろうに。
ドタドタという足音がどんどん増える。玄関に夏恋&麻衣&椎菜、そして未だ靴をはいたままの俺とリリィーナがいた。……亜夢は興味がないんだろう。
「リリィーナ。いい関係になれましたか?」
「いえ……これは私の感情を確かめるために行っているだけですわ」
「えぇっ? 付き合ってないの!?」
「……まだ私にもよく分かりませんもの」
結局女子だけでワイワイと中に入っていく。ちなみに、手を意地でも離そうとしなかったリリィーナだったが、それを上回る馬鹿力の夏恋によってはがされていた。あいつは何者だ。
俺がやれやれと首を振って中に入ると、先程の騒ぎの中にはいなかった亜夢が俺の裾を掴み止める。
「どうした?」
「……潤一、エッチしてきたの?」
「……どんだけエッチって単語が好きなんだよ。それに、エッチしてきたぞと言ったらどうすんだ」
「……その場合はよかったねって言う」
「こっちは何もよくないぞー」
というか、キスはエッチに該当するのかと考えていると、珍しく亜夢が笑って、
「……でもよかった。やっぱり、皆が仲良しの方がいい」
そう言ってくれる。少しだけギャップでドキっとしてしまった心を落ち着かせるために、亜夢の髪の毛をワシャワシャしてやると、亜夢も目を細めて「うぃ~」と唸っていた。
「……ところで私はエッチに興味がある。潤一とやってみたい」
「やめておけ。後から後悔することにしかならないぞ」
先程いいことを言ってくれたんだし、その印象をぶち壊さないでいただきたい。
亜夢にとっては誰でもいいのだ。そういう行為をしてみたいというだけで。実際は知りたいだけ。
「そ、そういう行為はダメですわよ?」
「……何で? アインツベルンは潤一と付き合ってるわけじゃない。それなのに、私を止めるの?」
「ぐっ……それは正論ですわね……ですが、別に特別な関係でなくとも、止める権利はありますわ」
「……友達だから?」
「当たり前ですわ。もうこうして共にいるのですから、ならば潤一の毒蛾から守るのが当たり前――――」
「……いつの間にか名前で呼んでる。本当は付き合ってる? エッチもしてる?」
やはりリリィーナはうっかりさんである。さっきもそう。それが周囲にバレれば容易にネタになるのだと分かっていない。もっとも、途中でハッと気づいたからこそ、言うのを止めたのかもしれないが……。
そでも遅かった。おまけに亜夢はストレートに物を言う子だ。他の子よりも扱いが難しいぞ。
「え、エッチなんかしてませんわ! そういうのは不純異性交遊になってしまいますものっ」
「……そう言ってるけど、キスをしようとしたって聞いた」
「なっ! だ、誰から聞きましたのっ?」
「……それは潤一から」
「あなたが犯人でしたのね!」
待て待て。勝手に俺を犯人にするな。それに亜夢が余計なことを言うから、すっかりあなた呼びに戻ってしまっている。
大体この会話の発端になったのはリリィーナの口が柔らかいせいだ。俺は悪くない。
「まぁ落ち着け。それにそういう行為をしてるわけでも、したわけでもないんだから」
「そ、そうですわ。そもそも、キスは不純異性交遊に当てはまらない……かと、思いますもの」
「や、それは無理があるだろ。不純異性交遊についてググってみ?」
自分で言っておいて意味が分からなかったので、スマホで調べてみると――――
『不健全性的行為』本来ならばそう呼ばれるらしく、時と場合によって『不純異性交遊』とも呼ばれるらしい。とにかく、健全育成上に支障をきたす可能性があることから、使われる単語らしかった。
キスは健全とは言えないものだろうか? 無理やりならともかく、互いの同意の上ならば問題ないように思うが、世間からみたらそういう行為に該当するのかもしれない。自分で「無理がある」と言っておきながら、キスぐらいで大げさだと思った。
「……リリィーナは淫乱」
「なっ!? 私は淫乱ではないですわ! まだそういう行為だって一回もっ」
「……私はソレをしてるから淫乱とは言ってない。なのにリリィーナはそう言った。つまり、淫乱」
「も、もう嫌ですわぁ!」
弱すぎる。そして、口が柔らかすぎた。誰も聞いてないよそんなこと。
というか、亜夢がソレと言ったのが少し気になった。性に無関心そうに見えても、気になるお年頃ということだろうか。さっきだってあんなこと言ってきたし。
「……アインツベルンは面白い」
「私は何も面白くはないですわ! 亜夢さんはいつもそうなんですから!」
「……初めて名前で呼ばれた気がする。私もリリィーナって呼んでいい?」
「それは構いませんわよ。私、リリィーナという名前を気に入ってますもの」
コイツは口調も相まって、つくづく百合が似合う女だと思う。
リリィーナのハーレムができたらどうしようかと、俺は少しだけ心配になった。
女の子のハーレム(女性のみ)も見てみたいですよね。
基本的に男1人に対して女の子複数、というのが多いですし。
あ、女性に対して男が複数もありましたね。
もっとも、それは自分が男な以上、受け入れられないものですが。




