普通に戻ったリリィーナ。気持ちを知ろうとしましたか?
いつもありがとうございます!
※色々あって書く時間が限られているので、1日1話に変更します。投稿時間は朝の5時です。
リリィーナと付き合いたいかどうかだって? それは、どうなのだろう。
別に付き合っても今と変わらないという思いがある以上、少なくとも俺はしなくてもいいんじゃないかというのが本音だった。
付き合うことが全てではない。現にこうして縁を築けている。それだけでいいのではないか。
「やっぱりそういう感情はないな」
「え~」
夏恋はがっかりといった感じの声をあげた。が、そんな声をあげられても困ってしまう。
相談を持ちかけたのは自分だけど、無理強いされるのは少し違うんじゃないかなぁ。
「とにかく解が出たしこの話はおしまいだな。姉貴のこれからを考えようぜ?」
「私のこれから?」
「そうだ」
夏恋は俺のことを諦めたと言っていた。しかし、いつ再発してもおかしくないレベルで、潜在意識に眠っているだけ。
そんなことじゃ折角見た目が良かったとしても、いい出会いができないかもしれない。恋愛が全てではないと考えたばかりだったが、夏恋のことだから気になってしまう。
「でも私は大丈夫だよ?」
「そうかもしれないけど、考えておかないと将来困るぞ?」
自分の将来さえ固まっていないのにも関わらず、俺は偉そうな態度でそんなことを言った。
「将来困るって……それは将来に考えればいいんじゃないの? 今から考えても、その通りにいくとは限らないし」
「そうだけど……」
「それに潤一の表情も微妙だし、今はいいよ。私はちゃんと自分なりに考えるからさ」
夏恋は「おしまいっ」と言って、ぐっと背伸びをする。
俺はまだ言いたいことが多少あったが、これ以上言っても聞かなそうだったので黙っておいた。
おしまいと宣言されてから気づいたことがある。そもそも、俺が口を出す権利がないということに。
俺はまた偽善を発揮し、どうすれば夏恋が幸せになれるのだろうかと模索していた。
そんなことをするくらいなら告白にいい返事をしてあげたほうが夏恋のためになるだろう。
自分が傷つける原因を作ったから。だから、少しでもその痛みを和らげたいと無意識に動いている。
同情と同じだ。誰もそんなものは求めていないだろう。
「夏恋さーん?」
「おや? これはリリィーナちゃんの声だね。そろそろ、お呼びのようだ」
「あ、こんなところにいましたのね。それにあなたも、そろそろ暑い時期といえども、長時間外にいると体が冷えてしまいますわよ」
「お、おうよ。じゃあ行こうか姉貴」
「うんっ」
リリィーナは普通の態度に戻っていた。きっと、俺のように椎菜か誰かに相談でもしたのだろうな。
彼女が普通に戻ってくれたのなら俺も普通に過ごせるというものだ。これで折角楽しむために泊まってくれている皆に気を遣わせずにすむ。それにリリィーナや椎菜達全員、笑ってる顔が魅力的だしね。
リビングに戻ると、第一陣の麻衣、亜夢、椎菜が既に湯上がりの状態でいた。
「おっ。おかえり~」
「ああ、ただいま」
元気な麻衣だ。事前の態度とは全く違って、楽しめているようにみえる。
この子のおかげで助かった部分もあった。だから、俺はお礼を言っておく。
「ありがとな、まいまい」
「うん? どういたしましてっ」
分かってるのか分かっていないのかいまいち分からない返事だったが、麻衣がそう言ってくれたので気が楽になる。
「まったく……気まずい空気を持ち込まないでくださいよ」
「ごめん、椎菜さん」
「でもその様子なら大丈夫そうですね?」
「ご迷惑をおかけしましたわ……」
ありゃ? リリィーナは別に椎菜に相談したわけではないようだ。
となると、今から行こうとしている森塚だろう。森塚を見てみると、ウィンクされてしまったあたりに答えが出ているものだ。
「じゃあ私達が今度は行ってくるね~」
「の、覗きはダメですわよ」
「しないよ別に」
森塚、夏恋、リリィーナ組が風呂場へと向かった。
どうせ女子だから風呂は長いだろうと勝手に決めつけ、二階へ衣類を取りに行こうとした時。麻衣が俺を呼び止める。
正直、来たか、と思ってしまった。そりゃまぁそうだ。あれだけ異質な空気を発していたら気にならないはずがない。
「潤一君、ちょっちいいかな?」
「あいよ」
俺に指定されたのはソファの上に腰掛けること。素直にそれに従っていると、麻衣がずいと顔を近づけてきた。
「あのさぁ~さっきの空気の話なんだけど~」
「あれな。俺がリリィーナからのキスを拒んだんだ」
「き、キスっ? 今、キスとおっしゃりましたかい旦那!」
そう。魚のキスではなく、唇と唇を合わせるキスである。ちゅーと言えば分かりやすいか。
「……驚きました。潤一くんが拒むなんて……」
「俺にどんなイメージを抱いているか知らないけど、流石にホイホイしたりしないさ」
異性も多いし、夏恋に相談したことをそのまま言ってみる。すると、
「キスしちゃえばよかったのに」
「……そこで拒める事が逆に凄いのかもしれません」
「……潤一はエッチ嫌い?」
一人目と三人目の発言はともかくとして、椎菜の発言が気になった。
「凄いことか?」
「いや、男の子ならば可愛い女の子としたいものかと思いまして」
「あーなるほどな。まぁ確かにアイツは美少女だしな」
俺が好きなら絶対拒んでなどいない。それどころか、肩や体をタップしてきても吸い尽くすまである。
「異性である私から見ても魅力的な女の子です」
「だろうな。椎菜さんとリリィーナのみの状況を端から見てると、正にそんな雰囲気だ」
いっそ百合カップルでもどう? と、言ってみるべきだろうか。……椎菜が怒りそうだから止めておこう。
「けれど、潤一くんは別に付き合わなくていいと決めたのですよね?」
「ああ。付き合わなくたって、仲良くはできるしな」
「……確かにそうですね。ですが、リリィーナには幸せになってもらいたいと思います」
「だから付き合ってやれって?」
「……違います」
どういうことだろう。椎菜の言ってることが全く理解できない。
「潤一くんが出した答え、付き合うことが全てではないというのは、本当のことだと思います」
「うん」
「でも、潤一くんの答えしか分かっていない状態なんですよ」
「え?」
「つまり、リリィーナの気持ちは分かっていないんです。誰も知らない、本人の内にだけ秘めてる感情――――それを知ろうと、潤一くんはしましたか?」
それを聞いて、そういえばそうだったと気づいた。
いや、聞くこと自体はしたつもりだ。が、本人も「分からない」と言っていたため、それで理解していたつもりでいた。
確かにあの場は俺が一方的に締めた感じだし、リリィーナが何か言いたかったとしても言えない状況であっただろう。
「一応したにはしたけど「分かりませんわっ」と言われたんだ」
「なるほど……ならもう一回、問いかけてみませんか?」
「俺がか?」
その言葉に椎菜がコクと頷く。また気まずくなりそうで嫌なんだが……。
「もし気まずい空気になったとしても、私や生徒会長さんで盛り上げるつもりだから安心してっ」
その不安が顔に出たのか、麻衣がそんなことを言ってくれる。
先程も助けられたばかりで申しわけない気持ちが多々あるが、彼女がそう言ってくれれば心強い。
もし奇襲をしかけるとしたならば、リリィーナが風呂から出てきてすぐが最適そうだ。
「分かった。俺の気持ちはまだ変わらないけど、聞いてみるだけ聞いてみるよ」
「その方がいいです。自分の気持ちを吐露してからの方が、最悪の場合諦めがつきますから」
椎菜の言うとおりだ。内心で抱えたままのモヤモヤをそのままにするなんて、俺じゃとても耐えられない。
次で付き合って終わり~とか自分の作品だとありそうで恐いですね……。




