うるさいお嬢様。正直に言うと。
いつもありがとうございます!
※毎回約3000文字で切ってるので中途半端に終わります。
翌日、星間学院の教室にて。
既に煉夏の挨拶を終えて普段どおりに対談の時間になった時のことだ。
俺の横では常にニコニコと煉夏が待機し、そしてその正面には……。
何故かやたらと不機嫌そうなリリィーナと、少しだけ驚いてる感じの椎菜がいる。
椎菜が何か聞きたそうだったのでその相手は煉夏にお願いし、俺は面倒くさそうなリリィーナの相手に専念することにした。……煉夏をぶつけると余計に面倒くさい結果になりそうだったからだ。
「で、どうしてお前はそんな不機嫌そうなんだ?」
「あ、当たり前ですわっ! 異性と同じ家に暮らすなどっ」
「じゃあ姉貴はどうなるんだよ? ま、今は一緒に暮らしてないけど」
「夏恋さんは別ですわ! 確かに異性として好きと昨日聞いて不安にもなりますが、姉弟ですもの。私とアマリアお姉様のように、共に暮らすことは不思議なことではないでしょう?」
リリィーナの言ってることは何も間違っていない。
「でもっ、詩葉さんは関係ないのでしょうっ?」
「そうだけどさ、こうして決まっちまったもうは仕方ないだろ。文句を言うなら親父に言ってくれ」
「じゃあどこにいるか教えてくださいなっ。そうすれば私が直接言いにいきますわ!」
「残念ながらそれは俺でも分からん」
大体親父はブログとかやるなら家でいいだろうに家には全くいないのだ。
猫などのように餌やり、夕飯の時間になっても帰ってくることは殆どない。
あいつの扱いは大変だ。リリィーナが飼ってくれるならそれは便利そうだが……。
「むきーっ! 大体何で一日かそこらであんなに仲のいいみたいな雰囲気を出していますのっ!」
「し、知らねえよそんなこと……俺らだって結局翌日くらいには普通に喋ってたじゃねえか」
今日のコイツは普段より一割増で面倒くさい。別に付き合ってるわけじゃないんだし、女友達を作ったところで何ら問題ないだろう。
それともコイツの中では俺という存在がかなり上位にきているのか? 嫉妬というものだろうか。
俺は聞いてみようとリリィーナの目を見やりながら言った。
「何? お前って俺のこと好きなの? 妬いちゃったとか?」
「ばっ、そんなわけないですわ! 不純異性交遊をしそうなあなたに注意をしているだけですわ!」
「ま、確かに煉夏は成人だしなぁ……」
ちらと煉夏&椎菜組を見ながらそう呟く。けど、成人してる人間と未成年の人間はヤッちゃいけないんじゃなかったっけ? よくは知らんけど。
とりあえず、コイツのこういうところが俺は気に入っている。コイツを煉夏にぶつければ「な、何していますの!」と、止めてくれるだろうからだ。
煉夏はあれで結構自由な感じがあるし、一度動き出すと止まらないだろうから、制止役がいるというのは実に助かる。もっとも、一番適任なのは椎菜だが。
「どうしましたか~お兄ちゃんっ?」
「いんや、何でもないよ」
「何かあったら言ってくださいねっ!」
「ああ」
俺の視線に気づいた煉夏がそう聞いてきて俺がそう返すと、余計に目の前の金髪女の頬が膨れた。
ハムスターなのかコイツは。その頬の中に溜まっているのは、納得いかないという感情だろうか。
「てか「むきー!」とか現実で言っちゃうヤツ、初めて見たぞ」
「私だってできれば言いたくないですわ! けれどあなたが――――」
「あーはいはい。分かったから落ち着けって」
これじゃあ学院以外でリリィーナと話をしている時間と同じだ。
そもそも対談とか言っておきながら、リリィーナと椎菜、まいまいや亜夢としか会話していないのはいいのだろうか。
学院長も止めに来ないし……。いよいよもって失敗に終わるんじゃないかと少しだけ不安になる。
「煉夏、少しだけリリィーナ……アインツベルンの相手を頼んでもいいか?」
「はいっ、了解です!」
金髪娘の相手を煉夏に任せ、対する俺は椎菜と会話するために近寄った。
「椎菜さん、ちょっといい?」
「はい」
「あのさ、俺って椎菜さんやアイツとかとしか話をしてないんだけど、大丈夫なの? これじゃあテストは失敗するんじゃ……」
「確かに……でも、そもそもの話ですが、何をもってテストが成功するのか、それがよく分かっていないんですよね」
なるほど。椎菜が言ったように成否条件が明かされていないのだ。
だって俺が仮にこの学院に溶け込めたとしても、それは俺だからだったからとしか言えない。
成功した場合に限りいつか入ってくる男子の群れ。この学院の女子にとっては敷居が高いだろう。
完全な自惚れ。けど、今回は俺一人だから何とかなっているに違いないのだ。
「何か不満なところでもあるのかい?」
「学院長、このテストが上手くいくと思っていますか?」
流石に異常な雰囲気を察したのか、はたまた椎菜と話をしているからなのか、学院長が近づいてきたので、丁度いいとばかりに聞いてみる。
「そうだなぁ……正直な話、潤一くん一人で何かが変わるとは思えないな」
「じゃあ何で俺はここに呼ばれたんすか……今では楽しめてるからいいですけど……」
「言っただろう? 都合のいい存在が君しかいなかったと」
「あーそんなことも言ってましたね」
でもそれを普通本人に言うか? せめて隠しておけよ……。
若干睨む感じで学院長を見ていると「ごめんごめん」と、慌てたような感じで苦笑していた。
「でもいい体験にはなるだろ? ここにいる皆が卒業するまではこの学院は消えないわけだし、社会に出たら完全に女性のみの会社など、ほぼあり得ないのだから」
「それはちょっと綺麗事すぎやしませんか? 大体、親父の息子である俺が変態とかだったらどうしたんですかね」
「その場合は私が君の毒蛾から皆を守るさ。そうすれば私に信頼を寄せてくれるようになろうだろ? だから、潤一くんの存在は、私にとってはどちらであってもお得ということだよ」
「はぁ……まぁ頼られるのは悪い気しませんけどね」
学院長は美人だし。結局見てくれさえよければ何でもいいとなる自分の単純さが笑える。
しかしそれは真理だ。ブス専などはいるようだが、それは一部だけであって、容姿のよさを求めない男はいない。
仮に「俺は可愛い子より普通の子がいいんだよねぇ」とか言ってる奴がいたとしても『普通』を狙っている辺りに答えが出ている。大体決まってその『普通』はかなり上位を狙っているはずだ。
「そうだろう? 何だかんだ言いつつも、事実を受け止めてくれる君のような子は好きだよ」
「学院長に好きって言われるのは光栄なことですね」
「ふっ、別に冗談でも何でもないさ。最近は捻くれてる子が多いからなぁ……」
「や、時には捻くれることも大事ですからね?」
何でもはいはいと物事に返事していたら絶対によくない方向に向かっていくことだろう。
素直さは確かに必要だが、素直すぎてもやってはいけない。素直すぎると何でも信じてしまいそうである。だから昨今は詐欺とかによく騙されてしまうのかも。
「けど潤一くんは素直に自分の罪を認めない時がありますよね」
「だってそれは椎菜さんが勝手に罪を作り上げるから――――何でもありません」
「ふふ、私が罪を作り上げるなんて、そんなことあるはずがないじゃないですか」
「何だ? 潤一くんは苹果には頭が上がらないといった感じのようだ。もう夫婦にでもなったらいいんじゃないか?」
「そういう冗談は止めてください。それよりも、娘さんを止めてください」
椎菜の得意技、笑顔でにじり寄ってくるが発動してる状況でそんなことを言わないでほしい。
何故なら、椎菜はそのやり場のない怒りを俺に全てぶつけてこようとするからだ。
学院長の口調が1話と全然違いますよね。
この人、時と場合によって態度が変わるという設定にして書いております。
凄いクールな女の子が実はお人形好きで、それがバレたら口調ごと変わる、なんてのもありますし
意味合いは違うかもしれませんが、そんな印象で書いています。
それと、やっぱり学院やリリィーナ達と絡んでいる時が書きやすい……。




