一年間の間は側にいる。卵料理は重宝する。
いつもありがとうございます!
……とだけ言いたいところですが、今日は間違えて5時に2回投稿してしまいました……。
本当は5時と10時に2回投稿するはずだったのです。……すみませんが、今日は3回投稿となります……。
「なるほど……そういう考えもありますか……」
最初からある程度勢いのある姿勢を見せていた煉夏が、少しだけ落ち着いた声音でそう言った。
そのことが少しだけ意外に思う。や、たった数分から数十分話しただけで何言ってるんだ、という話になるが、その変化は俺の中で大きい。
まぁ外向きのための性格作りなどもあるのかもしれない。それに煉夏は二十歳(仮)らしいし、年齢に合った態度は絶対に存在しているはずだ。
「けれど心配しないでくださいっ。少なくても一年間の分はお金貰っているので、一年の間は私ちゃんといますから!」
「でも一年間限定ってことだろ? なら変に仲良くなったら寂しくなるじゃないか」
「……ぬふふ、もしかしてお兄ちゃんは私と仲良くしたいのですかっ?」
「え、そりゃあ一緒に暮らすのなら仲いい方がいいだろ」
誰だってそうなるはずだ。これが男なら「別にいいか」となるかもしれないけど、相手は年上の異性。
学院で知り合った異性の中で年上は勿論いるが、それでも一歳か二歳ぐらいしか変わらない。
……学院長という例外も当然いるが、はっきりと差が分かる煉夏の存在は結構インパクトが強かった。
「私なら幾らでもお兄ちゃんのために行動しますよっ! なので早速――――」
「おい!」
ガバッと抱きついてくる煉夏。……抱きついてきてるのに硬い感触しかありません。
二十(仮)にしては色々と成長が足りない煉夏だ。胸以前に身長が足りてないため、可愛くても手を出すことは恐らくない。
胸が全てではない。全てではないのだが、やはり健全な男なら育っていてほしいと思う部位。
それが煉夏には残念がら備わっていない。自分は貧乳もいける口だけど、これは少し論外だ。
「えへへ~どうですかぁ?」
「……ごめん。親戚の女の子みたいな感じにしか扱えない」
「それでいいですよっ! そもそも私はお兄ちゃんのこと全然知りませんからっ! けどですね、もしかしたら半年後には意見が変わってるかもしれませんよ! もう一日中、煉夏のことを考えてドキドキしているはずです!」
「まじか。そんな状態に俺がなるかどうか……」
何せあの学院には魅力的な女の子が沢山いる。
中でもリリィーナとは結構仲良くなってきているし、もしかしたらワンチャンもありそうだ。
そんな状態で俺が二十(仮)に手を出すだろうか? いや、それはない。
……ぶっちゃけ最悪の最悪で、煉夏に頼る可能性はあっても、邪な感情を抱くことは絶対にしないとここで誓っておこう。
「あわわっ、焦げてしまいました~」と、テンパってる煉夏に「二階へ行ってくる」と告げ、自室に向かった。
「はぁ……」
子供の頃買い与えてもらったベットにボンと低い音がなるほどの勢いで飛び込んだ俺は、もそもそとうつむき状態から仰向け状態に変える。
「煉夏ねぇ……」
悪い子ではなさそうだ。けれど、その勢いが少しだけ俺には厳しい。
後で下に行ったらもう少し落ち着けないかと提案してみようか。などと考えていると、早速本人からお呼びが入った。
『できましたよ~!』
「おーう、今行く」
廊下に出ると既にいい匂いが充満していて、期待に胸を躍らせる。
自分で家事が得意と言い出した煉夏のことだ。きっと最高の食べ物達が机の上でひしめいているだろうと、そう思っていた俺が甘かったことを、リビングへの扉を開いた瞬間察した。
「……目玉焼きばっかじゃん……」
そう。作ってもらっておいて文句を言ってはいけないとは分かっている。でも、それでもそうして気持ちが口に出てしまった。
机に沢山並んでいる皿の上に乗ってるのは大量の目玉焼き。卵何個使ったのと思うよりも、せめてスクランブルエッグとか卵焼きとかにできなかったのかと、そう言いたくなる気持ちが強い。
「か、かけるものを変えれば色々な味が味わえますからっ! 気にせずに食べましょう!」
確かに卵料理というのは困った時に重宝する食べ物である。
困った時は焼けば簡単に美味しくできるし、煮ても茹でても何でもいけるという事実が最高だ。
だが、一応冷蔵庫には肉とかがあったはずだ。それを使ってくれてもよかったのだが……。
遠慮したのだろうか? やはり他人の家の冷蔵庫の中身を勝手に使うのは煉夏も遠慮すると――――
「私って卵料理しか作れないんです! 今回は目玉焼きにしましたが、明日はスクランブルエッグを作りますねっ!」
「あ、そう……うん、美味しそうだからいいやもう……」
うん。まぁ一口食べてみたら美味しかったし、気にすることはない。
大事なのは自分で作らずに済むということと、一緒に食事ができる女の子ができたということだ。……贅沢を言ってはいけない。
「どうですっ?」
「美味しいよ。これまでの人生で、結構上位に入る感じじゃないかな?」
卵料理のみでカテゴライズしたら、だったが。けど、美味しいのは本当だ。
煉夏が言ったとおり、目玉焼きを作る過程で無駄に味付けをしていないところが大きい。塩や醤油、ソースや砂糖などなど、様々な味を楽しめる晩御飯だ。
ちなみに、別居してる母は塩コショウで味付けをするタイプ。俺は調理時には何もつけず、醤油をつけて食べるタイプだった。……どうでもいいなこの情報。
とにかく、そんな大量の目玉焼きを二人で食べ終わると、煉夏が口を開く。
「もしかしてぇ、お風呂は一緒に入ったほうがいいですかっ?」
「いや? 俺は一人で入るから、煉夏も一人でゆっくり入ってくれ。何なら先でもいいぞ? 野郎の後なんて嫌だろ?」
「私は構いませんっ。寧ろ、お兄ちゃんのエキスを満喫する次第であります!」
「やっぱ後でいいや……」
好意を寄せてくれるのは嬉しい。けれど、実際にこんなことを言われると人間って引くのな。
「えぇ~」と、言って煉夏はがっくりとその場で項垂れるが、そういう気持ちが嘘であっても言わない方が身のため、相手のためである。
つか、本当に二十なのか疑わしいところだ。森塚やアマリアを見習ってほしい。
「じゃあお風呂を沸かしてくるであります……」
「よろしく」
結局元気なさげに風呂場の方に歩いていく煉夏の背中を見つめて、やれやれと首を振った。
よくもまぁ初対面なのに好意全開! と、いった感じで接することができるなぁと思う。
俺だったら絶対に無理だ。というか、まず勝手に異性宅に入ることがまずできない。
何か面白い番組がやってないかとテレビをつけてみるが、頭の中が煉夏のことでいっぱいで、つまらなく感じてすぐ消した。
……煉夏のことがいっぱいでなどと考えてみたが、それは恋愛などでは当然ない。これからどうやってあの勢いが激しい彼女と上手く生活していけるかが、悩みどころだった。
とりあえず夜ご飯くらいは俺が作ることに決める。……これは別に卵料理限定である煉夏に文句を言いたいとかではない。少なくても俺が彼女のためにしてやれることはそれだけだから。
トボトボと戻ってきた煉夏はすぐに俺の膝の上に乗ってくるが、俺は意識せずに彼女の頭の上に手を置いた。
「もしかして、好感度が既に高い状態ということですかっ?」
「いんや。ただご苦労様ってことだよ」
「なるほどっ! それじゃあこれから毎日してもらいますね! そうすれば煉夏の疲労も吹っ飛びます!」
「あれ、さっきから気になってたけど、自分のこと煉夏っていうのな」
「そういえばそうですね! 最初は『私』などと言っていましたが、つい癖が出ていました!」
「まぁどっちでもいいんじゃないの? 見た目は活発ロリみたいな感じなんだし」
「煉夏は思ったよりも成長しなかったんですよね……」
詩葉煉夏――――煉夏が相手だと書くのが楽です。
基本ビックリマークがつくようなキャラですからかね?




