金髪娘の家。付き合うことになった?
いつもありがとうございます。
今回は諸事情がありまして、いつもは10時10分に投稿するようにしているのですが10時にさせていただきました。 見てくれる方はいるかな? いてくれると嬉しいです。
修羅のような空間から俺と夏恋、リリィーナが退席し、今度は金髪娘の家に向かっていた。
時刻は既に一九時頃。いつもは迎えに来てもらってるらしいリリィーナが電話を入れる。
「もしもし……ええ、今日の迎えはいいですわ。歩いて帰りますので……え? それなら大丈夫です。曲がりなりにも殿方が一緒に……い、いえっ、私とこの方がそんな関係ではな――――よろしくお願いします」
まぁ確かにお嬢様と殿方が共にいるという現実は受け入れたくはないだろう。俺だったら間違いなく「その男を徹底的に調べろ」と命令するだろうし。
リリィーナは少し赤い顔で「行きましょうか」と言って、歩きだした。
無言で歩く三人。スーパーに行く時のことを思い出し、ふと夏恋の方を見てみると、夏恋はしっかりついてきてくれている。……少しだけ安心した。
外灯も殆どない真っ暗な道を先頭のあいつはどんどん歩いて行くが、こちらを振り返る気はないようだ。
「……潤一。潤一はさ、アインツベルンちゃんのこと、名前呼びしてるんだね」
「まぁね。そんなこといったら椎菜だってそうだろう?」
「うん、それは正直驚いたよ。だってあのアインツベルンちゃんが認めてるんだからね。……潤一が来る前は考えられなかったなぁ……」
「ていうか、姉貴はいつからヤツのこと知ってるんだ?」
「あの学院って実は中学からエスカレーター式なんだよ。だから、中学の頃からかな。いや~初めて会った時は、あんなに柔らかい感じじゃなかったね」
「もっと暗かった」と、夏恋は付け足した。
「だから、潤一が今の学院を変えたのかもね」
「変えたって……俺が来てからまだ二日くらいしか経ってないんだぞ?」
「でもさ、苹果ちゃんとアインツベルンちゃんは見ての通り仲良くなったよ? 潤一がアインツベルンちゃんのとっつきにくい印象を、取っ払ったんだよっ」
そういうものだろうか。俺には分からない。
それでもクラスでは皆初対面の時のような感じではなくなった感じはするため、無駄ではなかったのだろう。
「お二人とも、遅いですわ」
「悪いな」
「ごめんね~」
「夏恋さんは謝らなくていいですわ。全てはそこの私の下僕――――」
「下僕じゃないから」
あの時間以来、俺はすっかりリリィーナの下僕ということになっているようだった。きっとコイツの家に着いても「これは下僕だから問題ないですわ」など言いそうだ。
見た目は可愛い女の子の下僕――――それもまたいい生活なのかもしれないが、人間として扱われないのは少し嫌かもしれない。……少しだけかよ。
「ここですわね」
「おぉ……え? この大きいの全部が、お前の家ってこと?」
「そうですわ」
目の前の光景が信じられなかった。
まず夜なのにあちらこちらからライトアップで照らされていて近所迷惑感が半端ない。そして、夜でも入り口の前やそこら辺で歩いている警備員。星間学院の校舎二つくらいの建物が、一つは縦に、もう一つは横向きに建っている。
一つの建物の階数は三階ずつらしく、窓の多さが部屋の存在を醸し出していた。
「……俺、ちょっとお腹痛くなってきた……」
「はぁ……あなたは勇気があるのか小心者なのか……それがよく分からなくなりますわね。とりあえず早く入りますわよ」
「お、おうよ」
警備員に事情を説明して家の扉を開けてもらったリリィーナにそのままついていくと、一つの部屋の前で俺達は止まる。
「さて、この先にはお姉様がいますわ。私と違って、粗相をしたらどうなるか――――分かりますわよね?」
「うん、まぁ行こうぜ」
「ちょ――――」
俺はノックもせずに金髪娘の姉を拝むべく部屋に入った。
「あら? どなたですか?」
「ご、ごめんなさいですわお姉様! この方は私の級友でして……」
「ふふ、別に構いませんよ。でも……その子、固まってしまってますね」
「あ……いえ、あまりにもリリィーナの姉ちゃんが美しすぎて、固まってました」
「あらあら、嬉しいことを言ってくれるのですね」
金髪娘があれこれ事情や俺らの名前を姉に説明してくれる。手間が省けて助かった。
「私はアリアナ・F・アインツベルンと申します。気軽にアリアナと呼んでくださいね」
「やっ、流石にいきなり名前を呼び捨ては……」
「どうしてそんなに私の時と反応が違いますの!!」
「だって見てみろよこの人を。お前と違って、上品な感じがするだろ」
そうは言ってもコイツも大概なわけだが……。
姉であるアリアナの髪色も金色で、妹のリリィーナとは反対側で同じようにまとめているところを見ると、まるで双子という感じもするのだが、明らかに纏ってる雰囲気が違かった。
先程から「私だって上品ですわ!」と、憤慨しているヤツが言えるセリフじゃないんだよな。
「そんなに私をあげても意味はありませんよ。リリィーナを可愛がってあげてください」
「いや~確かにコイツは容姿だけはいいんですが、それ以外に問題がありまして」
「年頃の乙女ですからね。多少の気難しさは当たり前だと思いますよ?」
「そうなんですかね? 学院に椎菜っていう女の子がいるんですけど、仲良くなりたいくせに俺に一緒にいろーなんて言うんです。付き合わされるこちらの身にもなってほしいですよ、まったく」
「まぁ……椎菜というと、学院長さんの娘さんですか?」
意外なところでアリアナはキラキラと目を輝かせていた。アリアナもあの学院の生徒だったのだろうか。
「懐かしいですねぇ……私が在籍していた頃もあの方は忙しそうにしていましたね」
「え、じゃああの人何歳なんだ? そもそも、アリアナさんが何歳――――」
「し、失礼ですわ! 女性に年齢を聞くなど!」
「そうだよぉ! 聞くとしても先に自分が答えてからだよ!」
「あ。姉貴やっと喋ったな。言ってることはおかしいけどな」
自分が答えたら相手に聞いても失礼ないってどういう思考だよ。だが、アリアナは俺の不躾な質問にも一切嫌な表情を浮かべずに答えてくれた。
「私は二十歳ですね……ちょっと恥ずかしいですが……」
「おいリリィーナ、お前は十七だろ? 十七だよな?」
「そ、そうですけど……それが何か――――」
「見ろ! まるでアリアナさんが十七と言われても信じてしまいそうな若さをっ。そして、さり気なくつけた「恥ずかしい」の言葉! お前は分かっていないっ、これが大人の余裕というものだ! お前には微塵もそれがないじゃないか!」
「き、聞き捨てなりませんわ! 私のどこが余裕のないように見えますのっ!」
アリアナの存在を気にせず目の前で取っ組み合いを始める二人。
俺はコイツを貴族とかの分類では見ていない。だからこそ失礼な言葉も平気で言うし、行動に移す。
「大人の余裕だ」などと言ってみたが、リリィーナが急に変わっても気持ち悪い。アリアナにこの性格が合うように、リリィーナには無鉄砲な感じがとても似合っていた。
第一、コイツの無鉄砲感がなければ初日に衝突することもなくなり、仲良くなることはなかったのだろう。
「ふふふ、仲がいいのですね。そうだ、そちらの女の子、ちょっと来てもらってもいいですか?」
「私? はーい」
アリアナが夏恋を奥の部屋に連れて行ってしまったので、残された俺達は唖然としてお互いに握っていた手を離した。……別に他意はない。
「お前の姉ちゃんが正に大和撫子って感じじゃね?」
「……先程からエラくお姉様をあげますわね。残念ながら、あなたとお姉様の関係があれ以上進むことはありませんわよ」
「付き合うとかじゃねえよ。それに付き合うならお前みたいな元気な感じの方がいいわ」
「……………………そ、そうですの?」
「だってアリアナさんは常に余裕って感じで俺が空回りしそうだもん。まぁ、アリアナさんも俺に対してそういう感情自体抱かないだろうけどさ」
こいつは照れで赤くなったり、怒りで赤くなったりと忙しいヤツだが、これくらいの方が恋人とかになった時楽しそうなのは言うまでもない。
こいつがどれくらい起こったら赤色レベルで何レベルくらいになる? とか、実験できそうだしな。
「じゃあやってみるか」
「な、何をですの?」
「俺とお前が付き合ってるみたいに振る舞うってことだよ。それで椎菜さん達を驚かすんだ。まず手始めにそうだな……俺を名前で呼んでみろ」
「なっ……あっ……う……じゅ、潤一……」
「おう、リリィーナ」
「だ、ダメですわダメですわ! もうこれ以上はダメですわ!」
ブンブンと振り回した手が俺の顔に当たった。でも、それくらい許せなくちゃ恋人ではないはず。
「リリィーナ、そんなお茶女な君も、可愛いよ」
「……きゅぅ――――」
「あっ、おい!」
なんとか大理石の床とキスをするのは避けさせてやった。にしても、どうしてこいつは目を回しているのだろうか。なーんてな、俺だって恥ずかしいのは変わらない。
「あら、もうお二人はそういう関係なんですか?」
「ええ、俺――――僕達は今日から付き合うことになったんです」
「まぁ! なら今から祝うための準備を開始させますね!」
「えっ! あの……」
後悔してももう遅い。テキパキと部屋に備え付けられた電話で指示してしまうアリアナ。
「これは困ったことになったぞぉ……」
そして、コイツが起きた時に何と謝ればいいのか、それが分からなかった。
地の文が少なくなって、会話のオンパレードですね^^




