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第一章 聴音 (輝視点)

少し時間を巻き戻して今日の朝の事。


雲一つ無い清々しい青空。


今日の俺は朝だというのにも関わらず、ものすごく機嫌がよかった。


周りに音符でも飛んでそうな俺の隣、今にも死にそうな顔で耳を塞ぐ彼は俺の友達、奏汰だ。


耳が聞こえすぎるらしい彼は、保育園の頃からの友達でまだ小さかった俺は彼をよくからかって遊んだものだ。(今となっては本気で反省している。)



「奏汰ー?大丈夫か?」


俺が奏汰の顔を覗き込むと、奏汰は本気で嫌そうに俺を睨んだ。


「覗き込むな。今すぐ縮め巨人。」


奏汰は俺より背が小さいのが悔しいらしい。


よくこうして悔しそうに縮めと言ってくるのだ。


それを笑って受け流し、頭をぽんぽんしてやった。(嫌がらせともいう。)


「痛っ!?」


……すねを蹴られた。


これ以上いじると本気で怒るので止めておく。


「ごめんって奏汰ー。なんかお前見てると、弟が出来たみたいでさー(笑)」


「同い年のくせに何言ってんだよ。」


ますます拗ねてしまった。(あれー?)


まあいいか(笑)


眉間にしわを寄せて早歩きになる奏汰。


そういうところが『弟』なんだよ(笑)


少し生意気で、口も目つきも悪くて、可愛げのない弟。


保育園からの付き合いなんだから、もう家族みたいなもの。


そんな彼が、少しでも苦しまずに居られる為に俺も何かしら協力したい。


と、思った所で、普通よりも出来の悪い俺の頭では何の案も浮かばない。



今度こそ、力になりたいんだけどな…。





教室の窓際にある俺の席の前は、いつも空いていた。


そこは奏汰の席だ。


いつからだっただろうか、彼が教室がダメになったのは。


何も初めから騒がしいのがダメだった訳ではない。


きっと、『彼女』が姿を消してからだ。


幼なじみの彼女が日陰に消えてしまった。


それを幼い頃、周りの人物が揃って奏汰のせいだと指さし騒ぎ立てた。


俺はそれの前に立ち塞がった。


でも、小さな頃のか弱い腕では彼女どころか、家族のようにずっと近くに居た奏汰でさえ救えなかったのだ。



せめて、奏汰だけでも日向に引っ張り出してやる。


その為に、俺は一つの作戦をたてた。





彼女がいつも放課後音楽室に居ることは知っていた。


奏汰を迎えに行く時に、たまたま見かけたのだ。


彼女が教室で、誰かと一緒に居るのを見たことがなかった。


きっと彼女も何かを抱えているのだ。


これは賭けだった。


『家族』では近すぎるのだ。『他人』と関わらせる。


そして、その『他人』は『クラスメイト』でもある。


どんな事でもいい。


奏汰の抱えているものを少しでも軽くしたかった。


だから放課後、部活に行く前に奏汰に教えた。




『放課後の、無声の天使』のお話を。


もちろんそんな噂、存在しないけれど。


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