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終演 和音
____見とれていました。
目の前でピアノを弾く男の子に。
放課後の音楽室。
周りに声を聞いてもらえない私は、一人でいつもピアノを弾いていました。
聴こえないのならいいやと歌ったりもして。
今日もダメだったと自分で自分を慰めるために、いつもここにきていました。
ある日、突然一人の男の子が来て、私の小さな小さな声を聞いてくれました。
それから私はその子に恋をして、もっとお話がしたくて。
優しい友だちも出来て、初めて喧嘩をして。
初めて、普通に誰かと会話が出来るようになりました。
優しく響くピアノの音。
それを弾くのは誰よりも不器用で優しい、私の天使です。
________無声の天使 終演




