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第三章 変調(志音視点)








「真白ちゃん、話そうか。」



真白ちゃんが私を避け始めたのに気付いた。


私は器用じゃないし、遠回りもしたくない。


だからいつも、直接話すのだ。


それが嫌だとよく言われる。


でも言わないと、言われないとわからないから。


仲良くしたくない人ならわからなくてもいい。


仲良くしたいからわかりたい。


わかりたいから、私は真白ちゃんと直接言い合いたい。


いつものように、真白ちゃんは私を見るなり逃げようとした。


その細い腕を掴み、私は言った。


「話そう。少しでも、時間をかけてでも。」


「私は真白ちゃんの事をきちんと知りたい。」




真白ちゃんは、小さく頷いた。






「最近、避けてたでしょう?私、何かしちゃったかな?」


真白ちゃんは何も言わなかった。


「真白ちゃん、あの時保健室に来てたでしょう。」


肩が動いた。


「大丈夫怒ってないよ。真白ちゃんは誤解してる。」


動かない。


「私は奏汰と何でもないし、なるつもりもない。」


動かない。


「誰の為でもないよ。真白ちゃんの為でも。」


口が引き結ばれた。


「どうして我慢しちゃうの。どんな方法でもいい。言ってくれないとわかんないよ。」


肩が震える。


「それとも、私にはわかってほしくない?」


『ちがう!』と音もなく響いた。


目に涙をいっぱい浮かべて真白ちゃんは叫んだ。


音の無い叫び声。


耳に届かない声。


彼女は目だけで私に訴えた。


本気の訴えに、嬉しさで震えそうになった体をどうにか抑える。


今はそんな場合じゃない。


私は真白ちゃんの『本当の友だち』になりたい。


「もう一度聞くね。どうして避けているの。」


真白ちゃんはゆっくりと、震える手で答え始めた。


(私、二人の事見てるとずるいって思ってしまう。)


(私の中にこんなに汚い感情があったなんて知らなかったです。)


(こんな気持ちを抱えたまま、仲良くしてもらうなんて出来なかったんです。)


(志音ちゃんがダメなわけないです。ただ、みんなが優しいから、自分が嫌になるんです。)


(優しくしてくれるのに、私は返せない。)






「ばかじゃないの。」


驚いて顔をあげた真白ちゃんの頬に涙が一筋流れた。


「優しくしてくれる?私たちが、真白ちゃんの事を可哀想だから仲良くしてるとでも思ってるの?」


体が熱い。


落ち着け。


落ち着いて、私。


「ふざけないでよ。そんな人だと思ってたの?」


落ち着いてよ。


「私はどう思われたって構わない。慣れてるし。」


視界が滲む。


体が熱い。


苦しい。


「でも、二人のことそんなふうに思うのは許さない。」


涙が止まらない。


「汚い感情?そんなわけない。誰かを想う気持ちが汚いわけない。」


苦しい。


「私たちは真白ちゃんがどんな人でも見放したりしない。」


息ができない。


「返してもらおうなんて思ってない。」


何も伝わってなかったのか。


言わなければ伝わらない。


言ってないのは私だったのか。


「私は真白ちゃんだから仲良くなりたかったの。」


「真白ちゃんだから、みんな友だちになりたかったの。」


声も体も情けなく震える。


最後の言葉なんて伝わったのかもわからないくらいには震えてた。


しゃがみこんでしゃくりあげる私に、真白ちゃんはどんな顔をしているのだろう。


膝に目を当てて泣きわめく私に真白ちゃんはどう思っているだろう。




____。


目も開けられない私は、真白ちゃんの声を読むことが出来なかった。




それでも、真白ちゃんが口を開いた気がした。









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