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第三章 変調(輝視点)







彼女の頬の感触が残っていた。


泣いている天使さんを見て、また奏汰と何かあったなと察した。


そして、その表情で苦しくなった。


泣きながらその涙に溺れそうになっていて。


強く握りしめた両手は自分を責め立てていて。


それでも声だけは出さないというように口を引き結んで。


そのままふっと消えてしまいそうに儚くて。





気付いたら触れていた。




そんなに苦しいのならやめればいいのに。


そんなに責めるのならやめればいい。


奏汰を想うことなんて。




どうしてそこまでして我慢してしまうのか。



自分の気持ちを。




俺は人を本気で想ったことなんてないから。


君の気持ちは分からないけれど、これだけは言えた。


「俺にしなよ。」






奏汰の風邪も治って元通りという訳もなく、ただ気まずい時が進む。


天使さんは俺たちを避けるようになった。


俺たちというよりも、『彼ら』だけれど。


前川は奏汰に対して何も変わらない。


そして、奏汰も何も変わりない。


でも確かに二人の間に薄らと壁が出来たのを感じた。


あの時、二人がどうなったのかなんて知らない。


はっきり言って、そちらだけを気にしていられないのだ。




自分がした事の意味を考えなければ……。


何がしたかったのか。


あの時どうしてあんな事をしてしまったのか。


最初はただ……。






彼女の笑顔が見たかっただけなのに。








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