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第二章 消音(志音視点)




奏汰が熱を出して保健室に行ったらしい。


昼休みも終わって次の授業は体育だった。


輝がキツそうにしている奏汰の熱に気付いて保健室に行かせたらしい。


……昨日の雨は凄かったから、濡れてしまったのかな。


放課後、様子を見に行こう。






放課後、真白ちゃんも輝も先生に呼ばれたり係だったりでどこかへ行ってしまった。


だから私は一人で保健室に向かった。


放課後の廊下はどこか暗くて寒く感じる。


私は腕をさすりながら保健室のドアを開ける。


保健室の中は明るくて、温かかった。


部屋の中に三つのベッド。


その中にカーテンに囲まれたベッドを見つける。


静かに少し捲ると気持ちよさそうに寝ている幼なじみを見つけた。


心配していたけど、寝て回復したのか大丈夫そうな彼を見て安心する。




奏汰は小さい頃、こうして熱を出すことが多かった。


放課後に輝とお見舞いに行くといつも一人で寝ていた。


どこか寒く、薄暗く感じる大きな家に一人で。


そして私たちが来ると少しだるそうに、でも嬉しそうに私たちを迎えた。


きっと寂しかったと思う。


……今は、どうだろう。


寂しくないだろうか。


無意識に奏汰の髪を撫でる。


起きる気配はない。


耳を見ると、耳栓をしてあった。


保健室はグラウンドから近い。


うるさかっただろうなと少し笑う。


彼の耳は他の人に比べると良すぎる方で、他人の嫌な言葉も聞いてしまっていた。


いつも苦しそうに耳を塞ぐ彼をいつも見ていた。


「耳が普通だったら、奏汰は苦しまなかった?」


ぽつりと呟く。


起きていたら聞こえていただろうな。


最近、また苦しそうにしている彼をよく見た。


そんな彼の視線の先には彼女が居て。


私もどうしようもなく苦しくなるのだ。


(真白ちゃんと会わなかったら、奏汰は苦しまなかった?)


そんな最低なことも思った。


彼女を一人にしないと、彼女に誓ったのは私なのに。


確かに、彼女を守ろうと思ったのに。


最低だ。


涙が溢れた。


私は、私が嫌うあのクラスメイト達と何も違わなかったのだ。


自分の好きな人と居る彼女が羨ましくて、妬ましくて。


彼女さえ居なければと考えてしまったのだから。


(ごめん。)


一人懺悔する。


(ごめんなさい。)


決して許されないこの感情を。


私は、奏汰と一緒に居たかった。


恋人じゃなくてもいい。


ただの幼なじみでいいから。


そして、それと同じくらい真白ちゃんとも一緒に居たい。


友達だと笑ってくれる彼女と。


その為にする事なんて一つしかなかった。


『この感情』が彼女を疎ましく思ってしまうのなら。





捨ててしまおう。


こんな汚い感情は。


(ごめんね奏汰。きっと忘れるから。)


最後に、一度だけ。


一度だけでいい。


この感情を許して。


ごめんね。


「好きだよ。奏汰。」


私は眠る奏汰に最初で最後の誓いを落とした。





(あぁ、誓いのキスなんて良く言ったものだ。)


……どうか、こんなに穢れた誓いを許して。


これからも、私を幼なじみとしてそばに居ることを許してほしい。





私は、奏汰が『好きだった』。


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