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第二章 消音(志音視点)




天使さんの事を初めて聞いた時、私は複雑な気持ちだった。


幼なじみをとられてしまう気がしたから。


私はどうも女の子と仲良く出来なくて、男友達は多いけど女友達は0だった。


その中でも仲のいい二人をとられるのは嫌だった。


体育の授業の前、奏汰に天使さんを任されてしまった。


だから天使さんに体育のペアを頼むと、彼女はぱぁっと嬉しそうに笑った。


そこで私は、彼女も私と同じなのかもと思った。


理由はどうであれ、一人ぼっちの女の子。


私は一人ではないけれど、彼女の寂しさがわかる気がした。


純粋に、友達になりたいと思った。






なのに、私は天使さんを助けられなかった。


みんなの嫌な視線を感じながら授業を受けて、あとは着替えるだけだった。


そこで運悪く先生に呼ばれてしまった。


道具の片付けだけど、それを代わってもらえる人も居ない。


「すぐに戻ってくるから、先に着替えてて。」




その後見つけた時には、もう彼女は女子の輪の中で震えていた。


その輪をかき分けて天使さんの前に出る。


こんなにか弱い天使さん一人に対して、女子は六人。


……これだから嫌いだ。




「文句があるなら正々堂々、一人ずつ来なよ!」


その一言だけで女子は逃げ出す。


いつも通りだった。


何かを言われるのは怖いのだ。


私の背中で震える彼女は、消えてしまいそうなほど儚かった。






次の日、教室の前で会った奏汰は人一人はやってそうな目つきだった。


でもそれは私も彼とお互い様だったみたいで輝に二人して笑われた。


「二人とも、そんな顔してたら天使さんが怖がるよ。」


……それは困るな。やめよう。




HRが始まって、気になって天使さんを見ていると視線を感じたのか目が合った。


彼女は驚いた顔の後、またにこっと笑った。


ぱぁっと笑う彼女の笑顔が眩しかった。


(やばいぞあの子!天使(てんし)か!?)


思わず隣の席の輝に話しかける。


(顔ニヤけてるよ。)


と返された。


奏汰にも気付かれた。


奏汰は私の顔を見ると、いかにも変質者を見るような目をした。


それを見た輝が堪えきれずに噴き出した。


先生に注意されて、HRは終わった。


まだ楽しそうに笑う輝にチョップを入れて天使さんの所に行く。


まだ言っていないことがあったのだ。





「私、前川志音(まえかわしおん)と言います!友達になってください!!」


ばっと頭を下げて手を差し出す。


…告白のような雰囲気になってしまった気がする。


頭を下げながら首を傾げていると、手を握られる。


頭を上げると、天使さんは顔を赤くして笑ってた。


(天使真白です。よろしくね、前川さん。)


天使(てんし)やぁ……。」


思わず呟く。


彼女には聞こえてなくて首を傾げられた。


私も負けじと笑って返す。


「こちらこそよろしく!私のことは好きに呼んで!」


(じゃあ志音ちゃんで!私も好きに呼んで?)


「じゃあ真白ちゃん!何かあったらすぐに言ってね?すぐ飛んで行くから!」


私が言うと笑って頷く真白ちゃん。



その笑顔に癒されていると奏汰と輝が来た。


「お前本当に騒がしい。」


そう言ってくる奏汰だけど、その顔は少し安心した顔だった。


なんだかんだいって、私のことも心配してくれていたのだろう。


優しい奴め。


「そんなこと言っても一緒に居るくせに。」


茶化すと顔を背けられた。


「お前の声が高かったら絶対一緒に居なかった。」


ぐさっと心に突き刺さる音がした。


「酷っ!気にしてるのに!!!」


ショックを受けていると、後ろから袖を引かれる。


振り向くと真白ちゃんが笑って言う。


(でも私、志音ちゃんの声かっこよくて好きだよ!)


可愛すぎて思わず抱きついた。


奏汰と輝が微妙な顔をする。


「羨ましいだろばーか!」


勝ち誇ったように笑う。


「馬鹿じゃねえの。」


奏汰に一蹴された。


腕の中で真白ちゃんが笑う。



この時だけは周りの視線なんか気にならなかった。




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