第二章 消音(真白視点)
泣き止んだ頃、そこで私は声が出ないと気付きました。
今までは確かに声を出している感覚があったのに、それすら無いのです。
立城くんが何度も謝ってきます。
「聞こえていたのに、助けられなくてごめん。」
みんなが私をどう思っていたのか、立城くんは気付いていたみたいです。
だからこうなることも分かっていた。
でも、仕方ないのです。
体育の授業は男女別々だから、彼が助けられなくて当然です。
だから謝らないでよ……。
そんな悲しい顔しないでよ…。
大丈夫だから。
声がみんなに聞こえないのには慣れてる。
立城くんと会う前に戻っただけなんだから。
三人に送られて家に帰りました。
三人でお父さんお母さんに頭を下げていました。
彼らは悪くないのに。
……両親に私の声が聞こえたことも無いのに。
家に入ってすぐに部屋に閉じこもります。
ベッドに飛び込んで丸くなると、また涙が出てきました。
こういう時、声が出なくてよかった。
助けを求めてしまっても誰にも聞こえないのだから。
心配かけなくてすむから。
私はまた、子どものように泣きじゃくりました。
涙を枯らすまで。
もう二度と、誰かの前で泣かなくてもいいように。




