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プロローグ
きみと出会ってから、今までの時間はあっという間だった。
きみと出会ってから、僕はとても楽しかった。
きみの始まりの十年は、僕の終わりの十年だ。
世界の長い歴史からすれば、ほんの一瞬すれ違っただけの他人だ。
僕はから回りして、随分きみに迷惑をかけた気がする。
僕は、ちゃんときみの父親になれただろうか。
道を示すことはできただろうか。
きみのことだから、きっと僕がいなくても、器用に生きていくと思う。
そう思えるのは、嬉しくもあり、寂しくもあるけれど。
最後の最後に、父親ぶって願ってもいいだろうか。
――僕がいなくなった後の世界で、きみが楽しく生きられますように。