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今でも君に…  作者: 梨音
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○転校生の存在

新緑がきれいなゴールデンウイーク空けのあの日からもう7年…


私は、大学生になった今でも、ふっと あなたを思い出す…


あなたと過ごした時間を思い出すと切なさを覚える。


私は、もう6度も切ないゴールデンウイークをたった1人で過ごして来た。


そして、もうすぐ7度目のゴールデンウイークが訪れようとしていた…




7年前…


私たちはたったの小学6年生だった…



ゴールデンウイーク明けの登校途中…


「さき―!」


親友の濱田はまだ 瑞砂みずさが朝からハイテンションで私に飛びつく。


『おはよう、瑞砂!』


いつもなら、満面の笑顔で挨拶を返してくれる瑞沙が今日は挨拶もそっちのけで話し始めた。


「ねぇー、咲希知ってる?」


『何を?』


「今日、うちのクラスに転校生が来るんだって!!カッコイイ子だといいなぁー」


転校生…その言葉に敏感に反応してしまう。


『えっ!転校生が来るの!?しかも男なの…?』


「男かどうかは知らないけど、イケメンだったら良いねってだけ!!」


『なんだ、びっくりさせないでよ!』


私にとって、当時、男の転校生…


それは、死刑宣告のようなものでしかなかった。


私、相澤あいざわ 咲希さきは男子が苦手…

決して、嫌いなわけではないけど、いつ頃からか、男子とどうやって、接していいのかわからなくなっていた。

男子はがさつで乱暴で意地悪で…

そんなイメージばかりで、男子と関わることを避け続けていた。


しかし…

私は、男子の転校生運が悪い!

男子の転校生が来ると必ず、隣の席になったり、

1年生から6年生までの縦割り班の清掃班が一緒になったり、給食班が一緒だったり…


転校生と初日から関わらなきゃいけない立場に立たされる。

女子の転校生のときは、隣のクラスだったり、席が遠かったりするのに…


だから、私は男の転校生が来ることが嫌だった…

転校生が来るのなら女子でありますように。


それが、私の願いであった。


沙と教室に入ると転校生の話題で持ち切りだった。


男だったら…


と考えると憂鬱でしょうがない。


「男子だったら、咲希とずっと一緒にいれば、話すチャンス出来るよね!」


『イケメンだったら、私、ずっと、咲希の隣に居よう!』


「イケメンだったら、咲希、めっちゃ良いじゃん!」


と口々に友達に話しかけられて、首を必死に横に振り続けた。


チャイムが鳴り、朝の読書の時間が始まった。

会話の最中、顔は笑ってるいたけど、心の中では、


「人の気も知らないで… イケメンだろうがブスだろうが、男子だったら関わりたくない… まぁ、関わるならイケメンに超したことないけど…」


と悪態をついていた。


男子の転校生が来るかも知れない…


そんな不安が積もり、全く本の内容が頭に入って来ない…

本を閉じ、本を読むのを諦めた。

窓の外を見ると今日もよく晴れて、青空が広がっていた。

五月晴れという言葉がぴったりの天気だった。


その一方で私の心は黒い雲がかかったようなそんな気分だった。


心の中で

「転校生が来ると言うこと自体、あくまで噂だから、もしかしたら、嘘かも…」

などと自分に都合の良い方に考えてみたりする。


でもそんなのはただの願望にすぎない。


転校生が来るということが、本当だと告げるかのように、いつもなら、朝の読書の終了のチャイムがなる前に教室に来ているはずの私の大好きな担任の小島先生が来ない。


そして、朝の読書の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。



ガラッ



みんなが一斉に読んでいた本から顔をあげてあいた扉に視線を移した。

いつも通り笑顔の先生が入ってくる。



たった一人で…


みんなはがっかりしているようだったが、私は奇跡が起きたと思った。


朝の会が始まって、笑顔で先生は、

「おはよう!ゴールデンウィークは楽しかった?」と告げた。


そんな中、クラスのムードメーカーの男子が、大きな声で先生に問いかけた。 


「先生、転校生が来るんじゃないの?」


『えっ!あぁー、転校生は、今日の午後、お母さんと一緒に手続きいらっしゃるから、みんに紹介するのは、明日になると思います。』


「何だぁー、どんな奴が来るのか楽しみにしてたのに…。」


みんなが口々に愚痴をこぼす。


そんな中、一人でニヤニヤして、今日転校生が来ないことに対して喜びを隠しきれなかったのは私だけだった。


そんな中、先生は、

『静かにして!!明日になれば逢えるから、楽しみは明日までとっておきましょう。』と口にした。


私は心の中で、


「まったく楽しみなんかじゃないし!」


と再び悪態をついていた。


その日の午後、総合の授業は1組との合同授業だった。

授業の内容は、畑の草むしり。

小島先生の姿がそこにはなかった。


「さっき、昼休みに職員室に行ったら、転校生っぽい、みたことない子が小島先生といっしょにいたよ!!絶対、あれが転校生だと思う!!」


友達が満面の笑みで話す。

私は、あわてて問いかけた。


『男子だった?女子だった?』


「それが…。」


『もったいぶらないで教えてよ!うちの運命がかかってるんだから!!』


「運命だなんて、大袈裟だなぁー」


『大袈裟なんかじゃないから!で、どっちなの?』


「男子だった!!!」


『うわっ!最悪…。』


神様は残酷だ…

うなだれたがら草むしりを続ける。

もう、後は関わらないで済むように祈り続けるしかない。


「咲希の男子の転校生運の悪さが、どこまでなのか、見ものだよね♪」


『最悪、人が本気で嫌がってるのに、そうやって…』


本当に本気で嫌でしょうがない。


「ちなみにイケメンだったの?」


瑞砂が尋ねた。


イケメンなら100歩譲って許してやろうっと考えたが…


『顔は見えなかったけど、背は高かったと思う。』


なんとも残念な情報。

背が高いのはいいけど、顔が分からなきゃ意味がない。


「へー。明日が楽しみだね!」


『全然楽しみなんかじゃないから…。』


そんな風に、盛り上がっている間に、小島先生たちが、畑に向かってきていたことにまったく気付くことはなかった。

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