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成功率100%のダイエット

作者: ZIP

誤字を訂正しました

『成功率100%のダイエット』

通勤ラッシュの喧騒に、スマートフォンを弄る女は

怪しげなサイトの魅力的な広告を目に留める。

女が広告に記載された番号に電話をかけると、男の声が出た。

「電話では完全に説明出来ない。これからオフィスに来てほしい」

男が言う。二桁の数字が気になる女は男が示したやや遠い住所へ

歩いて向かった。

指定された住所は長い煙突の建物、その横にある

小さな雑居ビルであった。女はせっかく歩いて消費した

すずめの涙ばかりの体重とカロリーを、運動後の疲れからか

スポーツ飲料で再吸収してしまった。さすがそこは気を使うのか、

女が飲んだのはカロリーゼロの商品である。しかしながら

カロリーゼロのスポーツ飲料と言うのは本末転倒のようにも

思えるが、女の興味は

手に持った空のペットボトルでなく小さな雑居ビルにあった。

「よくいらっしゃいました」

女が錆びた扉をノックすると電話の声によく似た男が出た。

女は奥のソファーに通され、男の説明を聞く。

「このダイエット法は非常に画期的なものです」

男が穏やかな口調で言う。

「ただ少し、少しと言うほどでもありませんが痛みを伴います。

しかしこのダイエット法はそれ以外に一切のデメリットが

ありません」

男の口調は終始変わらない。

「効果を実感するためには試してもらったほうが早いでしょう。

腕を出して少し待ててください」

男は金属製の箱から細長い注射器と液体の入る褐色のビンを

持ってくる。 

「実はこのダイエット、ただ注射をするだけで体内の脂肪が

たちまち燃焼し、身軽なボディを手に入れることが

できるのです。副作用で強い眠気がありますがたいした

問題はありません。そちらのソファーベッドでお休みください」

女は男に従い、褐色ビンの液体を注射される。


翌日、女の家族から捜索願が出された。

昨日の朝に会社へ出勤してから家族の誰も姿を見ていないと言う。

会社の人間も、定時退社した女のその後を知らなかった。


ついに公開捜査となり、数日が過ぎた。

警察が女のスマートフォンの使用履歴から最後の居場所を

特定するにはそれほど時間がかからなかっただろう。

しかし、女の捜査は打ち切られた。

もう捜査をしても意味が無いことを彼らは知る。

『成功率100%のダイエット』

路上で発見された女のスマートフォンに表示されたその文字を

見て、悟った。


高額な人間の臓器を海外に輸出する、警察の副業。そのためには

新鮮な人間が必要であった。それも若い方がよい。

そこで考え出されたのがダイエットで人間を集めるという手段。

ダイエット、本来は規定食という意味の言葉であるが、今では

規則正しい食事の結果である減量のほうにその意味は使われている。

女は確かに減量した。それは会社の定期健診の結果と

煙突の建物から煙として大気と一体となった余分な筋肉、

その下に並ぶ骨の総量と比較しても明らかであろう。

さて、いつしか広告のキャッチコピーはこのように変化していた。

『死ぬだけダイエット』

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― 新着の感想 ―
[一言] じわっと怖さが来ますね(((( ;゜д゜)))アワワワワ 臓器売買が警察の副業というところがなんともシュールでした。
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