表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

07

 シキサ、レイナ、スォッグはそのまま所狭しと剣山が生えている底へと落下した――のではなく、然程落ちないうちにまるで滑り台のように傾斜のある滑らかな坂を三人横一列になって滑って下へと強制的に向かわされた。光を放つ苔が滑り落ち防止の手摺りのように少しだけ出っ張った縁に生えており、それが彼等にこの傾斜が螺旋状になっている事を伝えてくる。

「えぇぇえええええええええ⁉」

「はぁぁあああああああああ⁉」

「……っ」

 さながらジェットコースターに乗った時に体感するような風と速度をその身に受ける二人の絶叫は響き渡り、シキサは両端二人のそれが心底耳障りだとばかりに顔を顰めつつ耳を塞いでいた。

「てめぇシキサぁぁああああああ! 何しやがったぁぁああああああ⁉」

 耳を塞いだこの状況を作った元凶に眉を吊り上げ、怒声を上げて説明を要求するスォッグ。耳を塞いでいても聞き取れてしまっていたシキサは悪びれもせずに普通に返答する。

「他と少しだけ色の違う鍾乳石があったから蹴っただけだ」

「色が違う奴蹴っただけでこんな仕掛けが作動しねぇよぉぉおおおおおおおお!」

 地下二十七層のボスエリアへと続く洞窟を塞ぐ岩盤を退かすのも、この隠しダンジョンまで赴くのにも色の違う石が関係していたのでそうとも言い切れないのだが、冷静さを欠いており、色が違うだけで何かしらの仕掛けが作動した実例を一時的に記憶から消失させてしまっていた。

「きゃぁぁああああああああああああああああああ!」

 そしてレイナは涙目になって叫ぶだけである。この様子から、彼女は遊園地にある絶叫系のアトラクションが苦手な人種であると推測が出来る。

 七回程回ると、そこからは螺旋が無くなり、一直線のコースへと変わり、遠心力によってスピードが付加された三人はそのまま十秒程突き進んでいく。

 そして、そのまま急に途切れた坂から放り出されるように射出され、どのような原理が働いているのか全く分からない上へと渦を巻きながら向かっている水流の柱へと着水し、錐揉み回転しながら上昇していく。八秒程の逆ウォータースライダーを味わい、漸く水面の上から顔を出す事が出来た。

「ぶはぁ! はぁ、はぁ」

「っは! はぁ、はぁ」

 呼吸をしないので苦しくない筈なのだが、水中ではスタミナを常時減らされ続けるので結果的にゲームのシステムが息苦しさをプレイヤーに錯覚させ、息をしているような動作をさせている。

 三人が出てきた場所は、どうやら地底湖のようである。周りを壁でくるりと囲われ、天井には一面光の苔が群生しており、先程までいたどの場所よりも明るくなっている。現在、シキサ、レイナ、スォッグの三人は湖の真ん中で立ち泳ぎをしている状態であり、岸まで二十メートルは離れてる。

「……おい」

 唯一涼しい顔をしているシキサがある方向を指差す。息も絶え絶えのレイナとスォッグはシキサが指差す方向に顔を向ける。

「……ありゃもしかして」

 視線の先には三人のプレイヤーが壁際で座り込んでいた。一人は糸目で栗色の髪を後ろで結んだ獣の耳と尻尾を生やし、一人は肩までの長さの青い髪に皮膚には鱗があり、一人は膝裏まである長い黒い髪で両腕が翼になっていた。三人とも女性であり、レイナと同じ蒼と銀を基調とした『夜明けを目指す星』のユニフォーム衣装となっている鎧を身に纏っている。

「アイ! シェーネ! レヴィ!」

 三人の姿を目にしたレイナは声を上げる。レイナは安心した。頭上にあるHPバーは赤色に変化しているが、状態異常を食らっておらず、無事と言える状態であったからだ。

 名前を呼ばれた三人は声のした方へと顔を向け、そこに見知った人物がいると即座に立ち上がり、焦りの表情を浮かべて叫んだ。

「「「直ぐそこから逃げてっ!」」」

 それと同時に、後方の水面が盛り上がり、波が発生する。揺れる水面で水に飲まれないように必死でバランスを取りながら、シキサ、レイナ、スォッグの三人は後方を振り向く。

 そこには、水色の鱗を纏って双頭の大蛇がいた。全体は見えないが恐らく全長は十メートルはあり、人間なぞは軽く丸呑みに出来る程に大きく顎を開く事が出来るであろう。先が割れた舌をちろちろと出し入れしながら、きらりと瑠璃色に光る四つの瞳で目の前の餌を捉えている。頭上に存在するHPバーは満タンではなく、一割程削られた状態であった。

「おい、おいおいおいおい! こいつは!」

「シークレットボス⁉」

 驚きを隠せずにいるスォッグとレイナはタブレットを取り出す。画面には『ツインヘッド』と表示されていた。タブレットに表示された文字こそ、目の前に現れた大蛇――地下二十七層のシークレットボスの名前である。

「「シャァァアアアアアアアアアアッ!」」

 双頭の蛇――ツインヘッドは雄叫びを上げると、二つの頭を同時に三人に向かわせる。その二つの頭に備えられた口は限界まで開かれており、それは丸呑みを行うのだと直感させるには充分過ぎる程の所作であった。

 レイナとスォッグは死を覚悟した。至近距離からの攻撃と言うのもあるが、水中では魚人でない限り敏捷が半減してしまうのだ。実際、レイナは水中ダンジョンであった地下十七層を攻略した事があったので身に染みていた。半減した敏捷では、とても避けきる事は出来ない。プチポータルで『ディムブリック』へと転移しようとしても、隠しダンジョンはシークレットボスを倒すまで全域転移が不可能なので無駄である。仮に運良く避けきれたとしても、その後岸へと辿り着く前に双頭の蛇が繰り出す攻撃を受けてHPをゼロにされてしまうだろう。

 そして極めつけが今行っている攻撃方法だ。蛇系統のモンスターがボスであった地下十層でも同様の攻撃があった。その攻撃を受けてしまったプレイヤーはHPが残っていてもゲームオーバーとなってしまった。

 即死技。疑似デスゲームとなってしまった『トライバルミックス』で恐れられている技だ。地下十層のボスが繰り出す即死技である『丸呑み』によって挑んだプレイヤー五十四人の内約半数である二十六人が散って逝った。プチポータルによって帰還した先遣隊による前情報があったのにも関わらず、だ。どれ程注意をしていても避けきれなければ即終わり。それが即死技の恐怖である。

 レイナはクリアももう直ぐと言う状況で死ぬ悔しさよりも、自分の都合で巻き込んで一緒になって死んでしまうシキサとスォッグに対して自分に憤りを感じていた。もし、自分がギルドメンバーを捜すのを手伝ってくれと言わなければ二人はまだ生き残れていただろう。

 せめて、誰かがこのゲームをクリアしたなら、誠心誠意謝ろうと心に誓うレイナ。

 罪悪感で表情を歪め、眼を固く閉じて涙を流す彼女が今まさに蛇に呑まれようとした時、奇跡が起きた。


 ドガァァ……ン!


「「シャァァアアアアアアアアアアッ⁉」」

 突如として爆音が鳴り響くと、ツインヘッドは悲痛の叫びを上げて、それぞれの頭が鼻先を天上へと向ける。恐る恐る眼を開けたレイナが双頭の蛇の鼻先を見ると、黒煙を上げているのが確認出来た。また、ホログラムウィンドウで表示されているツインヘッドのHPバーが僅かにだが、削られた事を目にした。

(助……かった、の?)

 レイナは暫し信じられずに呆然としていた。

 ツインヘッドは天を仰いでいたが、鼻先から立ち上る煙を消す為に湖へと潜る。

 双頭の蛇が消えるとレイナとスォッグはもしかしたら陸の上にいる三人の誰かが援護をしてくれたのかと思い、そちらへと視線を向ける。が、そうではないと即座に理解する。何故なら、陸にいる『夜明けを目指す星』のギルドメンバー三人は揃ってある一点を凝視して目を見開き、口を限界まで開いて驚愕していたからだ。

 陸にいる三人の視線が降り注ぐ方へと顔を向けるレイナとスォッグも、そちらを見た瞬間に驚きを隠せないでいた。

 そこには、水中で立ち泳ぎをしているシキサがいた。それ自体は驚く事ではないのだが、彼が持っている紅の剣ではない武器に驚かされた。

 水面から出されている左手には、両手で包んでも収まり切れない大きさで、への字に曲がっており、青白くくすんだ様々な形の骨で無理矢理形状を作ったかのような武器――『トライバルミックス』では存在しない筈の武器である銃が握られていた。

「早く岸に行け」

 銃口を先程までツインヘッドが顔を出していた方へと向けたまま、シキサは二人を陸へ向かうように促す。レイナとスォッグは我に返り、可能な限り出せる速度で泳ぎ、岸へと向かう。殿はシキサが買って出る。

「「シャァァアアアアアアアアアアッ!」」

 岸まで残り五メートルと言う距離で再びツインヘッドが水面から頭を出し、水面を揺らしながら体を左右にくねらせて三人へと近付いて行く。

 殿のシキサは慌てる事も無く、銃口を彼から見て右の顔の眉間へと向け、発砲する。発砲音は存在しなかった。音も無く静かに空を掛けていく銃口から飛び出たものは鉛の銃弾ではなく、炎を纏った弾であった。

 炎弾が眉間に当たると、そこを中心にツインヘッドの顔を覆い尽くすくらいの爆発が起こり、爆音が閉じられた空間に響き渡る。この光景を見たレイナとスォッグは、先程鼻先から煙を上げていたのはこれが原因であったのかと納得する。

「シャァァアアアアアアアアアアッ!」

 無事な方の頭の眉間にも銃口を向け、炎弾を放って同様に爆発を引き起こす。しかし、先程とは違いツインヘッドは水中へと引き返す事無く、爆炎の中を突っ切りながら水の中を泳ぐ三人へと向かって行く。

「早く」

 立ち止まってシキサの攻撃を見ていたレイナとスォッグは言われた通りに岸へと向かい、一足先に陸地へと足を着かせる。

「はぁ、はぁ……」

「シ、シキサは⁉」

 泳ぐ事によってスタミナを減らされた二人は荒い息を整えもせず、後方を振り返る。それと同時に爆音がまたもや鳴り響き、陸地にいるプレイヤー達を震わせる。シキサは向かってくるツインヘッドへと炎弾を次々と打ち込んでいる。次第に双頭の蛇の動きは鈍くなり、限界に達したのか、真面な反撃を与える間もなく一時的に退却を余儀なくされ水中へと姿を消していく。姿を消す直前に垣間見えたHPバーは更に減っており、残りが八割にまで差し掛かろうとしていた。

 ツインヘッドが再び水中に身を潜めると、シキサは即座に泳ぎだして岸へと辿り着き、軽く体を震わせて水滴を適度に飛ばす。

「お、おいシキサ、それって」

 スォッグがシキサの左手の中に収められている一丁の銃を指差し、詳細を訊き出そうとするが、シキサはそれに応答する間もなく、背後を振り返って銃口を湖に向ける。彼はコートの右ポケットから何かを取り出して銃に押し当てる。すると、それが銃へ吸収されていく。

 それを確認したシキサは引き金を引いて発砲する。それを連続で八回行う。

 シキサ以外のこの場にいる五人のベータテスターはまたもや度肝を抜かれる事となる。

 銃口から飛び出した弾は先程のように炎を纏っていなかった。代わりに、ばちばちと音を立てながら渦巻く紫電を纏っていた。電弾は全弾湖へと打ち込まれる。すると湖全面に波が荒れ狂うように電流が蠢く。それと同時に明滅する光が洞窟を照らし、刺激音が鳴り響く。先の爆音が可愛い程の騒音であり、シキサ以外は全員耳を塞ぎ、電流が蠢く水面を直視していては目が可笑しくなると思い、固く閉じる。

 蛇のようにうねる電流がひしめく湖から、感電したツインヘッドが逃れようと水面へと勢いよく飛び出してくる。流石にポリゴンで出来た体であるので鱗がひしめく皮は火傷一つ負ってはいなかったが、全身に湖程ではないが、ぴりぴりと電気が走っていた。シキサはHPバーの枠が黄色く点滅して麻痺状態になっている事を確かめると、今度はコートの左ポケットから何かを取り出し、それを銃身に当てて吸収させる。

 そして、湖の中央に二発、隅に六発の銃弾を放つ。その銃弾はまたもや変化しており、白い靄を纏い、過ぎ去った大気を急速に冷やしていた。そして、その銃弾――凍弾が当たった湖の水面はみるみる内に凍っていった。湖から飛び出していたツインヘッドは、重力に従ってスケートリンクのように全面が固まった湖へと体を打ち付ける。打ち付けられたツインヘッドは声を上げる事も暴れる事も無く、ぴくぴくと痙攣していた。体にはまだ電気が走っている。また、凍りついた湖はツインヘッドの巨体が落ちて来ても割れる事が無く、ひびさえも入らなかった。凍弾は巨大な質量を誇る物体が落ちて来ても無事な程奥深くまで凍らせたようだった。

 双頭の蛇が氷の大地へと体を打ち付けた衝撃が揺れとなり、目と耳を塞いでいた五人のプレイヤーを強制的に現実へと戻し、三度目ともなる驚きには最早呆れの色が浮かんでいた。

 シキサは銃をコートに隠された位置にある腰部のホルダーへと戻し、紅の剣を抜き一直線にツインヘッドへと駆け、連撃を繰り広げていく。炎弾と電弾をくらわせた時よりも斬撃はHPバーは見るからに減ってはいないが、それでもシキサは身動きの取れない相手に息の吐く暇もなく攻撃を加えていく。幾らか攻撃を行った後、まだ麻痺によって身動きが取れないのを良い事に、出が遅く、技後の硬直時間が三秒とシキサにとっては致命的な隙を生んでしまう片手剣専用攻撃スキル『サークルカッター』を繰り出す。

『サークルカッター』は十秒間円を描くように走り回り、鮮紅色に光る剣を縦横無尽に切り付ける無差別攻撃となっている。攻撃対象は自分の移動する先にあるモンスター、プレイヤーが対象であり、巨躯な敵であれば、敵を囲むように走り繰り出す連続攻撃によって、場合によっては普通の『グランダルウェーブ』に匹敵する威力を叩き出す事が出来る。『サークルカッター』によってツインヘッドのHPはどんどんと減っていく。十秒もの連撃を終えたシキサは硬直時間によって三秒無防備に晒されたが、麻痺しているツインヘッドは好機を生かす事も出来ずに、シキサに攻撃を加える事は出来なかった。そしてシキサはそのまま通常の攻撃でツインヘッドの胴体に切り掛かっていく。

 その様をぽかんと見ていたレイナは我に返って陸地にいたギルドメンバー三人へと走り寄り、スカートのポケットから人数分のHP回復薬を取り出す。

「アイ、シェーネ、レヴィ。まずはHPを回復させて」

 我に返った三人は言われた通りにHP回復薬を呑み、HPバーを黄色寄りに近い緑のラインまで回復する。

「ありがとうリーダー。HP回復薬が無くなって危なかったんだ」

 栗毛の獣人――アイがレイナに礼を述べる。

「本当、無事でよかった……」

 レイナが胸を撫で下ろす。魚人以外が不利な場所でシークレットボスと相対してよく逃げ切ってくれたと改めて安心する。

「あれが陸地にいる相手に襲い掛かって来ないようになってたからね。もしそうでなかったらとっくに全滅してたさ。私等は必死で攻撃したり丸呑みだけは避けて陸地を目指してたんだよ」

「私が空を飛んで攻撃を搖動して、シェードがあの蛇が顔を出している間に弓で射ってたんだ」

「でも、アイは獣人の特性で水の中で動きが悪くなってな、私が背負って陸まで泳いだ」

「私だと筋力が足りなくてね。人を抱えて飛ぶ事が出来なかったよ」

 青髪の竜人――シェードと黒髪の鳥人――レヴィが苦い顔をしながら交互に自分達の行動を説明する。

「うぅ……二人共、迷惑掛けて御免ね」

 アイが耳を折り畳み、糸目を更に細くしながら謝罪する。

「良いって。命あってだろ?」

「私達は友達を見捨てないよ」

 シェードとレヴィは縮こまるアイに笑い掛けて気にしていない事を体現する。

「シェード、レヴィ……」

 アイの眼には涙が溜まる。そして二人がアイを抱き締める。アイも抱き返し、それぞれが力強く抱擁を交わす。その様子をレイナが刃海鞘のような地合いに満ち溢れた眼差しで見守っていた。

「ごほん。あー、感動的な場面で見知らぬ輩が水を差すのもどうかと思うけど、いや、敢えて差すけどさ」

 スォッグがわざとらしく咳をして、注目を集める。そして湖の氷上で麻痺から回復して反撃を開始したツインヘッド相手に攻撃を避けながら切り掛かっているシキサがいる方へと指先を向ける。

「まずは、あのボスどうにかしねぇか?」

 その一言に三人が頷く。

「よっし、水の上から出たら僕の天下だよ! 役に立てなかった分ここで挽回してやるー!」

 アイが腰に佩いていた鞘から突剣を抜き、獣人特有の速さで一気に駆け抜けてツインヘッドの右の首へと一太刀加える。

「矢は使い果たしたけど、装備を切り替えればいいか」

 シェードはタブレットを弄り、背中に掛けていた弓を消して手に斧を出現させて獣人の後を追い掛ける。

「私は空を飛んで牽制でもするよ」

 レヴィは両腕の翼を羽ばたかせ、鳥類と同じ足には金属で形成された鋭利な鉤爪を煌めかせながら飛翔する。

「ほれ、俺等も行くぞ」

 金棒を肩に担いでスォッグも参戦する。レイナも大剣を抜き、両手でしっかりと持って双頭の蛇を倒すべく駆け出す。

 ツインヘッドとの戦いは三十分も掛からなかった。それはアイ、シェード、レヴィの三人が逃げる為に攻撃をしていてHPを一割減らしていた事、シキサが放った炎弾、電弾、それに斬撃によってHPが七割に差し掛かった状態へとなっていた事が大きい。また、ツインヘッドの体力、防御力がシキサが一人で戦ったミノスロードよりも低い値であったのも大きいだろう。このシークレットボスは地の利を生かして奇襲や身動きが鈍くなったプレイヤーを襲うような戦法を取るのだが、水から出てしまえば、水中よりも脅威度が下がり、HPは危険な者で赤まで減ったが、誰一人欠ける事無くツインヘッドは倒された。

「はぁ!」

 最後の一撃は氷上から仲間がいなくなった事を確認し、スタミナ回復薬を呑んだレイナの放った『グランダルウェーブ』である。青い光の波は約一割残されたツインヘッドのHPを全て食らい付くし、双頭の蛇は光となって消え去った。


 ピロリン


 倒すとこの空間にいる六人のプレイヤーのタブレットが同時に鳴り出す。全員がタブレットの画面を見て、レザルトとプチポータルが使用可能になった事を確認する。シークレットボス討伐におけるユニーク装備は最後のHPを消し飛ばしたレイナが獲得した。

「ふぅ……」

 大剣を背負い、レイナはギルドメンバーの捜索を手伝ってくれたシキサへと礼を述べようと彼がいる方へと顔を向ける。

「あの」

 しかし、レイナが礼を述べる前にシキサはタブレットを操作し、プチポータルを起動させて一足先に『ディムブリック』へと帰還してしまう。

 何も告げずに帰ってしまったシキサがいた中空をレイナはただ見付めているだけであった。スォッグは勝手に帰ってしまったシキサに思わず盛大に溜息を吐き、肩を竦めてやれやれと首を振る。アイ、シェード、レヴィの三人は何がどうなっているのか理解が追い付かない状態であった。


 ピロリン


 再び、タブレットが鳴った。しかしこの場にいる全員ではなく、鳴ったのはレイナのタブレットだけである。スォッグはどのような内容の知らせが届いたのかを容易に悟り、またもや盛大に溜息を吐きながら失ったHPを回復する為にHP回復薬を取り出して煽る。レイナはのろのろと緩慢な動作でタブレットの画面を確認する。


『プレイヤー名:シキサがパーティーから脱退しました』


 用が済んだとばかりにシキサがパーティーを抜けた事を無情にも突き付けるその文章を、レイナは感謝や困惑等様々な感情が綯い交ぜとなった表情でただじっと眺めているだけだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ