第1話
――――――お前もやってみろよ!絶対面白いからさ!
・・・今思えば、この一言が原因だったと思う。
数日前、俺の親友に力説され、半ば強引に誘われたMMORPG、「エラシティーチ」をやることになった。
このゲームのハードは近年話題のフルダイブ式を実現したハードである。
フルダイブ式とは、視覚などのありとあらゆる情報をすべてシャットダウンし、ハードから送られる情報だけを得て、脳からの信号はすべてハードに送られることによって実際にゲームの中に入ったように体験できるものだ。
そして今日、ゲームを起動してさぁ始めようって時に、強烈な光に襲われて気絶した。
意識を取り戻し、そして、今である。
気がついたら自分は立っていて、目の前にはモンスター。
こういったゲームではモンスターと出会うことは当たり前だが、普通のゲームならチュートリアル、もしくは安全圏の街や村から始まる。決して、初期位置がモンスターの目の前では無い。決して。
混乱仕掛けたが、エラシティーチ以外のゲームを何度かしたことがあったので、なんとか持ち直すことが出来た。
対峙しているモンスターは幸い、エラシティーチでは最弱の、コボルトというモンスターだった。
犬が腰布を巻いて二足歩行をしているような姿だ。
相手はコボルトだからということで少し余裕が有り、自身を確認すると、奇妙なことに気づいた。
・・・なぜか自身の装備は現実での部屋着に素手という何も装備をしていない状態だった。奇妙だ。奇妙すぎる。現実の部屋着がどういうものかわかるはずがないので、ゲームで初期装備として設定されてる服装になるはず。
そのはずなのに、今は始める時に着ていた部屋着で、目の前にはモンスター。不思議体験にも程があると思う。
さらにもう一つ気づいたんだが、このゲーム、妙にリアルすぎる。それは風と匂いだ。
普通ならば、膨大すぎる情報量のために断念される風や匂いが完璧に再現されている。
しかし、今はモンスターがいるのでそれについて悩んでいる暇はない。
逃げるという手もある、しかし、こんなわけのわからない状況で、さらにモンスターを引っ掛けて死んでしまったら、どうなるかわからない。ならば、最弱という情報を信じて倒そうと思う。
「これで・・・戦えるか?」
ちょうど足元にあった太めの木の棒をコボルトを警戒しながらすばやく拾い上げる。
「グルァ!」
拾った直後、それが開戦の合図となったのか、コボルトが一直線に襲い掛かってくる。
「うわっ!」
とっさに手に取った木の棒を振り、コボルトに当てる。
―――――5ダメージ!
コボルトに当てた途端、コボルトの上にダメージ表示。そしてコボルトの頭上にあるHPバーらしきものが5/1ほど減った。
しかし、腕に当たったからか、コボルトはひるまずに逆の腕の手に持つ棒を俺に向かって振り下ろした。
「つっ・・・!?」
――10ダメージ!
それが俺にあたり、頭の中に浮かぶダメージ数。それにつられて視界左上にあったHPバー(自身の物だ)が10/1ほど減った・・・・んだとおもう。
「あ・・・・うわああああああああああ!」
しかし、殴られた時に、ゲームではありえない痛覚に襲われたことによってパニックに陥り、その時はただただでたらめに木の棒を振り回していた。
―――――CT!15ダメージ!
――13ダメージ!
―――――6ダメージ!
――コボルトを倒した!3ミル獲得した。
コボルトが断末魔をあげながら光となって散るが、パニックになった俺は振り続けていたため、空振り、転倒する。
「ああああああああぁぁぁぁ!・・・・・・や・・・やった・・・のか・・・?」
急いで体をお越して、周りを見るがコボルトがいない。
そのことに一瞬安堵するが、コボルトに殴られた痛みが残っていてまた動揺してしまう。
「・・・な・・・なんでゲームなのに痛みが?」
普通は、痛覚の情報も膨大のため、物を触ったりするための必要最低限の感触、そして攻撃されたときの衝撃も何かに当たった鈍い感覚で情報量の節約が行われているはず。
しかし、今は現実だと言わんばかりの、コボルトの持っていた棒による痛み。それが今まで燻っていた動揺に火を点け、パニックに陥った。それでも所詮、最弱とされているコボルト。木の棒での雑な攻撃でも勝てることができたのだろう。
これが、俺のこの世界での初めての戦い。終わりの見えない戦いのはじまりだった。
どうもはじめまして。作者です。
プロローグを最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
小説はよく読みますが、書く事がほとんどないため、表現がおかしかったりしますが、読者のご意見、ご感想を聞きながらより読みやすく頑張っていきたいと思います。
更新はなるべく頑張りますが、気まぐれで飽き性なため、読者の感想などで更新速度は大きく左右されるかもしれません。
しばらく更新が無い。ということが起きるかもしれませんが、完結まで頑張るつもりですので生暖かく見守ってください。
こんなあとがきは冷めると思いますので今回、一話だけにいたします。二話からは、次話予告か、あとがき無しかはまだ決めてませんが、その方向で行くつもりですのでご了承ください。