~ あとがき ~
大きな仕事が一つ終わった……。
全てを書き終えて最初に思ったことは、とりあえずそんな言葉でした。猟闇師シリーズの第一期最終章として書き上げた、黄泉火垂る。気づけば三十万文字を越える文字数と、様々な要素を押し込めた、とてつもない長編になっていました。
前作の流れを引き継ぐ形でありながら、今作は冒頭からいきなり場面も時代も変わります。死人蛍の伝承が残る夜魅原村。後に、地図から消された村となってしまうその場所で、なにやら奇妙な秘祭が行われています。
いったい、これが本編と何の関係があるのか。それは、話を読んでからのお楽しみです。最後の最後、実に終盤を迎えるであろう局面で、この冒頭部分の描写と今までのことが、しっかり繋がるようにできています。
また、今回は自分としても、猟闇師第一期シリーズの中でやろうとしたことの集大成としたい気持ちがありました。そのため、前半は色々と民俗学的な講釈を垂れたり、都市伝説ネタを振ったりしています。その上で、今までの関係者を少しずつ小出しにし、それぞれに役割を与えたつもりです。
一方、後半は完全に冒険小説風の流れとなり、亡霊や悪鬼との戦いが増える展開へと変わります。この辺は、猟闇師・零を書いた際の経験が役に立ちました。相手がゾンビか幽霊かの違いだけで、ホラーゲーム的な要素が強いことは同じですからね。ホラーというよりは、完全に伝奇とアクション主体の話へと雰囲気が変わってゆくわけです。
まあ、実際には完全なるオールスターとはいかなかったので、少しばかりの心残りもありますが……。今回、登場の機会がなかった人達を再び使うかどうか。それに関しては、まだ未定でございます。
今後の方針ですが、とりあえずは同じ世界観を引き継ぎつつも、色々なパターンの話を書いてゆきたいと思っています。今までのように、犬崎紅が必ず絡むというわけではなく、様々な立場の人間を使って話を作ってゆきたいと思っていますので……。
犬崎紅は、より強大な力を得るために、あえて火乃澤町から立ち去るという選択をしました。その他の霊能者達も、それぞれが次なる目標に向かい、水面下で動き出しています。そして、最後に登場した警視庁公安部の方々。隠蔽と事後処理を担当するだけだった彼らも、そろそろ自分達が次なる局面に合わせて動かねばならないことを自覚しつつあります。
また、本作の黒幕的存在として暗躍する、闇の死揮者こと真狩紫苑。彼の本当の企みは、結局のところ今回も明かされずじまいでした。反則とも言える強さを誇る彼に、果たして紅は追いつけるのか。そして、彼の進める真の企みとは何なのか。その全てが明かされるときこそが、猟闇師シリーズにおける真の終焉となるでしょう。
とにもかくにも、今まで応援して下さった方々、本当にありがとうございました。この場を借りて、改めてお礼を述べさせていただきます。第一期シリーズはとりあえずの終了とさせていただきますが、引き続き、第二期シリーズも応援していただければ幸いです。
2012年 4月27日 雷紋寺 音弥