弓
七、
とある屋敷・・・少年が住んでいる家よりも数倍でかい大きさである。
「・・・奥様、私が坊ちゃまのところに行かなくてはいけないのではありませんか?」
「いいわ、あの子のところには他の人が行くからね・・・あの子にはさっさと子どもを作ってもらわないといけないのよ。」
そのびっくり発言に執事・・・渡辺さんは片眉を上げた。
「・・・よろしければその理由を教えてもらうと嬉しいのですが・・。」
「・・・いずれ分かるわ。しかし、あの子の好みが分からないから・・・まずはこの子から行ってみようかしら?」
そういって少年の母は書類を眺めて言ったのであった。
数日後、少年が庭で幽霊と話していると・・・・誰かがやってきた。
「・・・時雨、誰か来たよ?」
「・・・宅配業者かな?」
二人で行ってみることにした。幽霊は時雨の後方四十五度上空に待機している。もしも強盗だったら少年の体をのっとって戦うつもりだからだ。
「・・・失礼ですが・・・天道時 時雨様というのは貴方でしょうか?」
門の前に立っていたのはメイドさんであった。
「・・・・・。」
驚いて声も出せない少年と対照的に幽霊が答えた。
「そうです。間違ってませんが・・・貴女は誰ですか?」
「メイドです。」
「見れば分かります。名前を聞いてるんですよ。」
幽霊に言われてメイドははっとした顔になってすいませんといった。
「メイドの美奈です。時雨様の母上様からここに行けと言われました。」
幽霊は物珍しそうに下から上までじろじろと眺めた後、ぼさっとしている時雨の体を乗っ取ってメイドの胸を触った。
「きゃ。」
『まぁ、メイドの癖してあんまり胸ない気がするんだけどなぁ・・・。普通メイドはボンキュボーンじゃない?』
勝手なことを言って少年の体から出てくる幽霊。少年は未だにメイドの胸に手を置いている。掴んだままだったの思い出して急いで少年は手を引っ込めた。
「・・・ま、まぁ・・どうぞ上がってください。あまり掃除してないから汚いかもしれないんですが・・。」
そういうとメイドは急いで洋館の中に入ると掃除を始めた。それを遠くから見ている少年と幽霊はその手際のよさにびっくりしていた。
「・・・・凄いね。」
「そうだねぇ。ま、メイドだからいいんじゃない?時雨、そろそろ外に干してる洗濯物を入れたほうがいいんじゃない?」
掃除をしているメイドを放っておいていいものか悩んだが雨が降りそうだったので洗濯物を入れることにした。
それから一時間後、部活に入っている妹が帰宅。
「兄貴、この人誰?」
メイドを見るなり小声で少年に聞いてくる。
「メイドの美奈さん。」
少年はそういってメイドの手伝いをしていた。
「時雨様はいいですよ。ほら、座っててください。」
「いいよ、手伝ったほうが早く終わるからね。」
そういって少年と幽霊はメイドの手伝いをしているのであった。一人、暇な妹はそんなアットホームな雰囲気に耐えられないのか少年に引っ付く。
「兄貴、遊んでよ〜。」
「・・・いつまでも子どもじゃないんだから、たまには一人で遊ぶ勉強でもしなさい。お勧めは反復横とびかな。それに、鈴はもう高校一年生だよ。」
少年にそういわれて妹はぶうっと膨れた。そのまま窓を拭いている少年の背中に飛び乗る。
「こ、こらっ!降りなさい!」
「いいじゃん。」
幽霊はそれをニヤニヤしながら見ている。メイドは既に夕食の準備を始めていた。少年も急いで手伝いに行こうと思っていたのだが妹がそうはさせまいと引っ付いている。
「時雨、いい妹を持っているねぇ。顔がにやけてるよ?」
「にやけてないよっ!ほら、鈴もさっさと僕の背中から降りなさい!」
「嫌嫌嫌嫌嫌!!」
どたばたやっていると見かねた幽霊が少年に助け舟を出した。
「しょうがないなぁ。全く、手が甘いって言うの?」
少年の体を再びのっとり、背中に引っ付いている妹を無理やりはがす。
「ほおら、これでよしっ。」
「助かったよ、満月さん。」
胸を反らしている幽霊に礼を述べて妹のほうを見る。
「鈴、もう鈴は子どもじゃないんだよ?そんなに甘えてたらどうなるか知ってる?」
幽霊と妹、全員を夕食に呼ぶためにやってきたメイドはそれを聞いてブラコンだと思ったのだが・・・少年は真面目な顔になって答えた。
「糖尿病になるんだよ?」
それを聞いた全員は固まった。幽霊はそんな少年に言った。
「この、天然がぁ!!」
少年は冗談だといった後に舌を出してメイドに近づいた。
「美奈さん、夕食が出来たんですか?」
「え、ええ・・・そうです。出来ました。」
それを聞いて少年は鼻歌を歌いながらその場を去ったのだった・・・残されたのは三人の女の子であった・・・。
それから十分後・・・全員集まっての夕食が開始された。メイドは少年の近くに立って待機している。
「へぇ、おいしいなぁ・・・美奈さんは料理がうまいんですね?」
「時雨様、ありがとうございます!まぁ、がんばって練習しましたから・・。」
そんな二人の間にはゆったり感の雰囲気が流れており、それを見て妹はじーっと少年の顔を見ている。幽霊は普通に食事を取っていた。たまにおいしいなぁといっている。
「・・・兄貴、鼻の下を伸ばさないでよ。」
「伸ばしてないよ?ただ、でれっとしてるだけだよ。」
なんともしまりのない顔で妹に返事をする少年。にへらという音が聞こえてきそうである。
「・・・まぁ、メイドなんて一般市民に普通はつかないからねぇ。時雨がだらけるのもしょうがないでしょ。」
幽霊は冷静に分析しながら味噌汁を口に運ぶ。
「・・・ふん、兄貴のスケベ。」
妹はそういってそっぽを向いた。黒々としたオーラが湧き出ている。怒った妹を幽霊はなだめようとしている。
「まぁまぁ、こんな経験なんてそうないんだからさ・・・時雨も珍しいと思っているんだよ。ね、時雨?」
少年は殺気からでれでれしているだけで話を聞いていない。それを見て幽霊は溜息をつき、妹は激怒した。
「兄貴っ!!」
その呼びかけにはっとして少年は正気に戻った。
「危ない危ない、こんな経験なんて初めてだからつい・・・ところで美奈さん、執事の渡辺さんが来るんじゃなかったんですか?」
「・・・ええ、私もそのように聞いていたのですが・・・急に奥様・・・時雨様のお母様が私のところにわざわざ来て時雨様のもとに行けとおっしゃったのです。」
それを聞いて少年は真剣な顔になって考え始めた。それを見て妹は何かを疑っている。
「・・・満月さん、真剣な顔しているんですけど・・・何かたくらんでませんかね?」
「いや、大丈夫だと思うよ?時雨はああ見えて真剣なときは真剣だからね・・ま、私より貴女の方が分かっているって思うけどね・・。」
少年は何かを決意したように携帯電話を取り出して何処かに電話を掛けた。
「あ、母さん?ええ、今、近くに立っています。・・・え?な、何を言ってるんですか!!え・・・ちょ・・そんなの分かりませんよ?自分で何とかしろ?はぁ、何言ってんですか!!切らないでくださいっ!!」
どなたか、乾燥いただけるとうれしいです。まだ、はじめのほうなので応援してくださると非常にうれしいです。というより、この小説、面白いでしょうか・・・。自分では面白いところもあると思っているのですが・・。自画自賛ですかねぇ。