未来
蒸し返すような感じですが、完結話を書きました。ずうずうしいですがこれで本当に終わりです!
終、
満月さんという幽霊が成仏して一ヶ月という月日が経ちました。
その日も満月で・・・・僕は夜中に目を覚まし、体中に汗が吹き出て……なにやら怖い夢を見ていたような気がしてならなかったのです。しかし、急に尿意をもよおした為にトイレに向かうことにしました。夜寝る前にお茶を飲みすぎたのが原因だと思われます。まぁ、その昔似た様なことがあってお漏らしをしてしまっていたこともよくありました。勿論、小学校に通って一年程度の話です。
「ううん、高校生にもなってお漏らしはさすがにやばいかな?」
今では一人暮らしとなっている洋館に自分の独り言が響いていきます。まぁ、僕にはその昔に成仏していなかった幽霊が執り憑いていたので幽霊自体は怖くないのですが・・・一人はさすがに寂しいと思いました。あの人が居たならば、きっと何か僕を馬鹿にするようなことを一言でも言ったんじゃないかな……そう、考えます。
この洋館には後二人本当だったら人がいたのですが今日はそろって用事があるので明日にならないと帰ってこないとのことです。
「・・・おお、よくでるなぁ・・・・。」
二リットルのお茶を一気飲みしたのが原因なのか・・・はたまた一人が寂しかったのかは知りませんが結構な量が出てしまい・・・量に比例して夜中は不気味なトイレにいる時間も長くなってしまいました。虫の鳴き声が聞こえてきて、肝試しをするのにはベストな条件だな、そう思ってしまいます。
「・・・・トイレに存在しているお化けの事を思い出すなぁ・・・。」
一時期小学校の頃に流行っていた学校の怪談を思い出しまして・・・再び背筋がぞくっとしてします。さっさとしてしまおうと思いましたが、あせってしまってなかなか終わりません。さらにあせってきた僕はまたまた独り言を口走ってしまい・・・誰かにたずねていたりもしてしまいました。
「はは、どうなっているんだろうね?」
「飲みすぎなんじゃない?」
「・・・・!!」
突如、僕の後ろから誰かの声がしました。今、この洋館にいるのは僕しかいません。さきほども言ったとおり後二人いた人も用事があってこの家にはいないのです!帰ってきたとしても既に寝ている時間・・・あの二人が夜中に起きることはこれまでなかったことでした。朝までぐっすり、起こしに行っても目を覚まさないほど睡眠欲が強い二人です。
「・・・・。」
既に用は足しましたが、今度は部屋に帰る勇気が、いや、後ろを振り返る勇気すらなくなってしまいました。膝は先ほどから震度を上げており、その影響かわかりませんが脳内はマグニチュード7,5程度のパニック状態。今の僕に出来たことはズボンを上に上げることだけでした。
「・・・全く、人がせっかく戻ってきたって言うのにつれないなぁ。会わないうちに臆病になったんじゃないの?」
人をちょっとだけからかっているような声がして僕はこんな口調の人をひとりだけ知っていることを思い出しました。しかし、その人は既に天に召されているはずであり、この世にはいないはずなのですが・・・・。
念のため、そのままの体制で後ろの誰かに僕は尋ねました。
「・・・・ど、どなたでしょう?」
「もう、声まで忘れちゃったの?わ・た・し!!」
「たわし?」
「違う、満月だよ!!」
恐る恐る振り返ってみるとそこに立っていたのは……確かに一ヶ月ほど前に僕の前から姿を消した、僕だけ残して消えてしまった……まぶしいほどの美少女の幽霊でした。
「あ・・・ま、満月さん?」
「そ、お久しぶり・・・私の騎士。しっかりしてよ?」
いつも着ていたドレスを纏い、窓から差し込む月光を受けて……幽玄のように佇む満月さんは以前にあったときよりも輝いていた。でも、僕には彼女がぼやけて見え、更に幻想的な光景に拍車をかける……涙が、うれしいのか、怖すぎて流しているのかさっぱりわからないけど、彼女の姿をぼやけさせる。
「こらこら、男の子が泣いちゃ駄目でしょ?」
「・・・満月さん・・・おかえりなさい。」
僕はそのまま満月さんを抱きしめていた。彼女が幽霊だったのを忘れて・・・・・
「うん、ただいま。まぁ、実際のところはどこにも行ってなかったんだけどね?あいたたた、苦しいよ・・時雨。」
「・・・満月さん・・・・僕は・・・・・離しませんよ。僕は・・・寂しかったんです。」
何故、彼女を抱きしめられたのか知らないが僕は満月さんから離れなかった、誰かが僕と満月さんを引き離そうとしても僕は、絶対にもう、彼女を離さないと今、決めた。
「ははは、実のところさぁ・・・私はちょっとばっかり訳ありの体質でね・・・体を封印されていたんだよ。ほら、しがみついてないで離してよ。きちんと説明してあげるからさ。」
満月さんにそういわれたので僕は従った。とめどなく涙があふれ、頬を流れていってしまう。
「・・・・全く、弱虫になったんだねぇ。」
「・・・・違います、ちょっと懐かしいと思っただけです。」
とりあえずトイレを出てソファーに座って話す事にした。ずっとずっと、待ち焦がれた、一ヶ月間、一人だけの時間を過ごしたけどそれは……満月さんに会うための準備期間だと思えば、楽になれたのかもしれない。
「・・・・ちょっと前にね・・・姉に封印されちゃったんだよ。実のところ私は人間じゃなかったからね。」
「え・・・・?」
「私、結構前に色々と暴れちゃったんだ。まぁ、正体って言っても・・・分からないだろうから省略させてもらうけど。」
「・・・・それで・・・ずっと封印されていたんですか?」
頷き、顔を僕から背ける。
「そうだよ。爺ちゃんの持っていた木刀に封印されていてさぁ・・・ちょっとばかり記憶がなくなっていたんだよ。とりあえず時雨に頼って生きてこれたんだけどね。まぁ、それがどうにもいけなかったって訳じゃないんだけど・・・。」
かなりどっちつかずだ。一体全体どうしてしまったのだろう・・・・。
「・・・時雨と一緒に入れて幸せになれたんだよ。これだけは真実だね。幸せになったおかげでさ、姉さんに許されたんだと思う。幸せになれるって言うのがこれほど難しいなんて私はぜんぜんわからなかったけどね。ともかく、一年たった今ようやく?封印を解かれたんだ。だからさ、今の私はきちんとした私の体だよ。」
確かに言われてみれば全く透けていない。いやいや、透けるといっても体が透けていない。勘違いしないように書いておこう。
「・・・満月さんあのう・・・これからも一緒にいてくれるんですか?」
僕は遠慮がちに尋ねてみた。既に幽霊ではなく、生身の体だ。彼女にも都合があるのかもしれない。おじいさんのもとへと向かえばちゃんとした家に住むことだって出来るはずだし。
「そうだねぇ、それは時雨しだいだと思う。時雨と一緒にいた頃の私は実体なくて、木刀に隠れていたりもしていたからね。今じゃ、生身の体だからずっと時雨と一緒に居れるって訳じゃない。だけどまぁ・・・・・」
ちらりとこちらを見て顔をうつむかせた。
「・・・私と一緒にいても構わない、迷惑がかからない、幸せになりたいっていうのなら私は一緒にいてあげてもいいと思ってるよ?」
言葉を言い終わると顔を朱に染めて僕の頭上を見るような感じでこちらに視線を向けている。空気がかなりぴりぴりしてきており、どうにも居心地が悪かった。彼女は僕の答えを待っている。
そして僕が言えることは唯一つだった。
「・・・満月さん、いつまでも僕に憑いて来てください。」
そう、言ったのだ。それ以外に答える言葉を僕は持っていない。
僕の言葉を聞いて、満月さんはにこっと笑う。その表情を、きっと僕は忘れることなんてしないだろう。
「・・・・よろしい、いつまでも私は時雨に憑いて行ってあげるよ。時雨、改めてよろしくね?」
次の日以降、僕が毎日見ていた悪夢はぴたりと止み・・・・たまに悪夢を見ても目が覚めたら必ずハッピーエンドになるようになった。
「・・・時雨、早く起きないと遅刻しちゃうぞ?」
だって、彼女が常に僕を起こしてくれるから・・・・・。
〜満月の騎士 終〜
メッセージをいただいて書きました。短編として出すにはちょっと話がわかりづらく、終わらせるならきちんとこっちで終わらせたほうがよかったと思ったのでこうしました。今はきれいに終わらせたと思えるのでうれしいです。メッセージをくれた方(了解を取ってないんで伏せさせてもらいます)ありがとうございました!!これにて、本当に完結です!!ご迷惑をおかけしました!!