記憶
おっしゃー、皆様のお陰で二十回目まで続いたゼェ!・・あ、十回目の時は何もしてないような・・・。ま、まぁ・・これからもよろしくお願いします!出来たら、感想書いて下さいね。
二十、
その日、帰ってくると既に全員が洋館にそろっていた。その中には刀剣少女の顔もある。
「お兄ちゃん!!怪我ない?」
「・・・・。」
見知らぬ少女にそんなことを言われても驚くだけだろう。少年は首を傾げてこの少女が自分の妹であるようだなと考えた。しかし、名前を知らないので頬を指でかくぐらいしか出来なかった。
「鈴ちゃん、時雨は記憶を失ってるんだよ。さて、因みに、自分の名前などは覚えているからね。時雨、もう一度自己紹介をさせてもらうよ。」
少年は幽霊を見て頷いた。幽霊は他の方々を一列に整列させ、左のほうから順番に自己紹介させていくように指示した。
そして、少年は一番左にいる少女に眼を向けた。その少女は少々、目線を下に反らす。髪は肩ぐらいまで伸ばしており、身長は少年の肩ぐらいだ。因みに、少年の身長は170位である。顔は可愛いといえば可愛く、そうでもないといえばそうでもないかもしれない。悲しいかな・・・胸は無いように見えないでもない。
「天道時 鈴といいます、お兄ちゃんの義妹です」
「どうも、こちらこそよろしく。」
少年は頷いて頭を下げておいた。
そして次に、右に向ける。
そこに立っていたのはメイド姿の少女であった。そのメイドはどことなく、潤んだ瞳を少年に向けていたので少年が今度は目を反らす番であった。髪は背中辺りまで伸ばしており、リボンでまとめていた。顔は少し、疲れているのか優れていなかった。胸はどことなく中途半端の気がする。身長は少年より少しばかり低い。
「メイドの美奈と言います。時雨様のお母様に仕えておりました。時雨様の為なら何でもする覚悟があります。」
「え・・・どうもありがとうございます。」
「美奈さんずるい!!」
隣からは妹が文句を言っているがメイドはそれを無視した。幽霊は咳払いをして、先を促す。
少年はメイドの右のほうでもじもじしている根暗な少女を見た。
「うう、自己紹介なんて苦手ですよぉ〜。」
と独り言を言っている。少年はその根暗少女を観察してみることとした。髪は目が隠れるぐらいまであり、時折見える瞳は透き通っていた。身長は少年と同じくらいで、胸はあるほうであろう・・・。
「・・・・ふふふふふふ、不和 氷雨ですっ!!時雨さんとはお恥ずかしながら同じ教室です!!これからもよろしくお願いします。」
「あ、クラスメートなんだ・・・こちらこそ、お願いしますね?」
「はいっ!!」
顔を真っ赤にして更にこれでもかといった具合で煙まで噴出している。メルト状態かもしれない。真っ赤に染まった忍者を通り越して、今度は同じく見た目真っ赤な少女へと視線を移す。
「どうも、時雨さん。リベナ・トロワドよ。貴方のそこを狙ってるわ。」
そういって少年の心臓辺りを拳銃のような仕草をして口でバーンと言っている。少年は微妙にそのお嬢様から距離をとった。これは、純粋に命を狙っているととるべきものであって、他の少女たちは何故だかびっくりしている。
「はぁ、冗談よ、冗談。」
「・・・よろしくお願いします。」
両手でやれやれといった仕草をしているお嬢様から視線をスライドさせて今度は腰に木刀と真剣を挿している少女を眺める。
髪は短く、身長も妹ぐらい小さい。身長が低いからか知らないが、胸は大きい。
「・・・・栂波 三簾だ。お前とは何度も刃を交えている俗に言う、ライバルという奴だ。」
「・・・まぁ、なんだか分からないけどよろしくおねがいします・・・・。」
少年はこの人は行動を歩いていて警察に捕まらないのだろうかと思いながらも、黙っておいた。最後に、幽霊が再び少年の目の前に現れる。
「どう?全員の名前を覚えた?」
「ええ、まぁ・・・ところで、鈴ちゃんは僕の妹だから前から知っているとして、他の人たちとは何時知り合ったのか分かりますか?旧友でしょうか?」
誰一人、首を縦に動かす人はいなかった。幽霊はその場を代表として告げた。
「時雨、悪いんだけど・・・私たちが貴方に知り合ったのはこの一ヶ月以内よ。以前の貴方に話を聞いたところ、女関係は全くといってなかったといってたよ。」
「僕、もてないんですねぇ」
少年はポツリと呟いて影を落としたが・・・・今日はとりあえず皆に帰ってもらうことにした。既に時刻は明日になっている。
「まぁ、時雨・・・今日は皆に泊まってもらったら?遅いし・・・途中で襲われたら時雨が責任取らなきゃいけないかもよ?」
幽霊にそう言われ、少年は考えた。それもそうだと思い、少年は皆に改めて告げた。
「この洋館に泊まりたい人は泊まって行ってください。幸い、明日から連休ですので・・・。」
少年を探し回って完璧につかれていた少年と刀剣少女を除くほかの女の子たちは頷いた。
この洋館には屋根に上れるところがあり、少年は一人、月光を浴びていた。
「何してるの?」
その隣に、幽霊がやってきたので少年は思いっきり驚いた。隣にやってきたといっても少年の隣から首だけを突き出しているからだ。
少年は驚きすぎて屋根から転げ落ちそうになった。幽霊が掴んでくれなかったら今頃、ぺしゃんこになっていたに違いない。
「ありがとうございます、満月さん。」
少年は屋根に引っ張りあげてくれた幽霊に礼を述べると、再び、座った。
「時雨、何か思い出した?」
「いえ・・・・知り合いのことを全く思い出せないんです。どうにもおかしい感じがして・・・。まぁ、皆の事は覚えましたけどね。」
「そ、ならいつものように特訓しよ?」
「特訓?」
幽霊は少年が今まで幽霊を相手に特訓をしていたことを聞いた。
「それに、何か思い出すかもしれないし・・・。」
「そうですね、やってみます。それで今日は・・・どうすればいいんですか?」
幽霊は月光を反射しているかなり細い西洋の剣を取り出した。そして、それを少年へと渡す。幽霊は刀を持って少年と対峙する
「さ、今日は身を守る試験だよ。それで私を退けたら今日の特訓は終わり。」
「わかりました。」
少年は剣を構え、幽霊へと突っ走った。
「はぁぁぁぁぁ!!」
気合をこめて少年はそれを振り落とす。幽霊はそれを避けることなく、受け止める。
「う〜ん、やっぱり強くなってる・・・。」
「?」
睨み合い、間合いを取る。そして今度は幽霊から刀を振り上げて少年へと襲い掛かる。その姿を見て少年は何処かで見たような感じに捕らわれた。その結果、見事隙をつかれてその場に跪いた。
「ま、こんなもんかな?」
そして、少年の記憶を奪った機械を作った彼の母親はその頃、研究所へと入っており、何かを作っていた。辺りには謎の液体などがこぼれていたりもする。
「奥様、何を作ってらっしゃるのですか?」
その後ろで執事は零れたりしている薬品を片付けている。尋ねられた少年の母親は何かを調合しながらどうでもよさそうに答える。
「ああ、これね・・・流石にある程度までは時雨の記憶がないと・・・まぁ、記憶を失ったのなら、あの子は後継者からはずすわ。ま、どうせ女の子の記憶はどうでもいいから・・・とりあえず恋愛対象外のやからたちの記憶だけは思い出させておかないといけないわ。」
少しの間、黙り込み再び言葉を選ぶように答える。
「そうね、これで時雨の心がある意味丸分かりだわ。」
「どういう意味です?」
「そのままの意味よ。私が作り終えたこの薬を時雨に飲ませる。」
出来上がったのか三角フラスコを取り上げる。その中に入っていたのは蒼く光る液体であった。
「もしも、これで時雨の記憶に時雨が知り合った女の子のことを思い出したら、その子は時雨から完璧に友達と思われているだけ・・・・・。」
「成る程・・・・。」
「さ、これを時雨に渡しておいてくれないかしら?いい、絶対に本当のことを教えてしまったらいけないわよ。」
この薬が本当に大丈夫なのか心配な執事であったが、目の前にいる女性は今まで、一度しか失敗作というものを作り出していない。
「わかりました。」
執事はそういうと、幽霊によってぼこぼこにされている少年へと薬を渡しに行った。
母親は近くにおいてあった椅子に腰掛けて後片付けをはじめたのであった。