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満月の騎士  作者: 雨月
2/25

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二、

 それを聞いて少年は妹が手に持っていた置手紙を渡してもらい、自分で再び読んでみることにした。そこには、確かに自分が筆跡が残っていたのだが・・・見る影も無く、消しゴムで消されており、代わりにあの絵本に書かれていた字と全く同じ書き方の字がそこに書かれていた。

 少年は、玄関に立ち尽くした。自分の兄貴はどうかしたのかと心配そうに妹が覗き込む。そして、妹が


「あ、あのさぁ・・・」


といったところで少年は自分の部屋に駆け上がり、昨日もらった木刀を持って再び部屋を飛び出すと・・・呆気にとられている妹の隣を走り抜けて夜空に満月輝く外に飛び出していったのであった。


「・・・・あ、兄貴?」


 いきなり走り去って外に飛び出してしまった自分の兄を呆然と見ながら妹は口を開いたのであった。


 少年は木刀を持って近くの公園まで走ってきた。この公園は病院にも近いので病院患者もたまにこの公園にやってくる。少年も良くこの公園を利用していたものだ。


「・・・・。」


 そして、少年は思った。

何で僕は木刀なんかを掴んでこの公園まで走ってきたのだろうかと・・・。とりあえず、少年は考えてみた。そして、なんだかこの木刀をもらってしまったのでおかしいことが続いていると思ったのである。つまり、事の発端は木刀であるのでこの木刀を捨ててしまえば何とかなると思ったのであった・・・。

 しかし、そう簡単に捨てようとしても、この木刀はあのおじいさんの孫の形見である。あの店にこの木刀以外何も売っていなかったのはきっとあのおじいさんが守ってきたのだと考えてしまった少年は何度か振った後に捨てることにした。


「一、二、参、四、伍、六、七、八・・・」


 木刀を振るのは久しぶりだが・・・かなりうまく振っているような感じがしていた。まるで、振り子のような軽さである。


「・・・・へぇ、意外と素質があるかもね?」


「・・どうも。でも・・・あんまりこんな事したこと無いから分からないよ。」


 少年は後ろのほうで聞こえた声に答えた。てっきり、何処かの剣道場の美少女でもいたと思ったからだ。しかし、実際は誰も彼の後ろにはいない。いるのは彼を心配して追っかけてきた彼の妹だけである。彼の妹もいきなり兄が喋りだしたので意表を突かれて驚いたのであった。妹が兄に話しかけようとすると・・・。


「全く、君もそろそろ夕飯食べたほうがいいんじゃない?お昼前から眠っていたんだよ?」


と、少年の目の前に青白く光る何かが現れたのであった。少年の妹はその場でパンツ全開となり、この場に変質者でもいたら彼女を誘拐しようと思ったかもしれない。

 そんな妹の反応を知らずに少年はいたって冷静に目の前に現れた少女に木刀を振る手を休めて尋ねた。


「・・・貴女があの、おじいさんのお孫さんですか?所謂幽霊?」


「うん、正解。」


 白いドレスのような物を着ている少女は宙に浮かんで頷いた。少年はもうちょっとこの少女が浮かんでくれたらパンツが見れると思ったが・・・・そんなことはないと思って話を進めることにした。


「・・・・それで、僕がこの木刀をあのおじいさんのところに戻してくればあなたは消えるんですね?」


「まぁ、理屈上ではそうなるかな・・・けどさ、ちょっと話をしてもいいかな?」


 少女はそういうと少年の方にふわりと乗り、上から少年を見据えた。あ、可愛いと少年は思ったが・・・とりあえず頷くことにした。少年はあまり女の子に話しかけられることはないので幽霊といっても女の子だ。それでも構わないと半ば自分の恋愛を放棄しているのである。


「そ、ありがと・・・・そうだねぇ、まずは何で私がこの木刀にいるか教えてあげようか?」


「どうぞ、勝手に・・・・あ、でもそろそろ帰らないと・・・妹が心配してるから・・・。」


「う〜ん、じゃあさ、君の用事が終わってからでいいよ。私はそれまで木刀の中で眠っているからね・・・何かあったら起こしてちょうだいな。」


 そういってあっさりと少女は木刀の中に引っ込んで消えてしまったのであった。少年は今まで自分が本当の幽霊と話していたことに半ば馬鹿らしく思ったが・・・・とりあえず家に帰って晩御飯でも食べようと考えていた。しかし・・・・世の中というものはそう簡単にできているわけではない。


「きゃぁぁぁ!!」


 後ろからそんな叫び声が聞こえ・・・少年は驚いて木刀片手に振り返った。

ここからはちょうど林が邪魔をしていて良く見ることはできない。

ただ、街頭に照らされて辛うじて見えるのは少年が通っている高校の女子の制服の一端が視界の端から消えそうなのであった・・・。少年はあたりを見渡したが・・・・頼りになりそうな警察官なんて都合のいいものは転がっていなかった。他に助けを求めるものもおらず、携帯電話も持ってきていない。あるのは手に持っている木刀だけであった。


「畜生!」


 少年はその木刀を持って走り出していた。相手が刃物を持っていたらどうしようと考えていると足が震えだし、歯はがちがちと鳴り出しそうであったが・・・頼れる相手が一人もいない状態では頼れるのはこの木刀だけであった。

 住宅街の路地裏。もとからこの町は都会といったところは少ないのであまり人はいない。そこに少年の妹がロープで縛り上げられていた。何かの薬を嗅がされたのか幸せそうに眠っている。口からは涎を垂らしている。

 辺りには数人の若者たちがその少女を囲んでいた。一人の若者が仲間たちと話し始める。

 誘拐されたのが自分の妹だと少年は気付いておらず、とりあえず走ってきた少年は木刀に向かって話しかけた。事情を知らない人が見たら危ない少年だと思うに違いない。


「・・・ごめん、ちょっと起きてくれないかな?」


「ふぁ?おや、あれからあんまり経ってないけど・・・もう自由時間になったのかな?」


 少年は事情を幽霊に自分が聞いた叫び声を聞かせた。そして、どうするべきかと幽霊に聞いたのであった。


「そうだねぇ、とりあえず・・・・男としては助けるのが一番だと思うよ?だけどね、後先考えないのはいけないなぁ。」


「じゃ、じゃあ・・・見捨てたほうがいいのかな?」


 幽霊は何を言っているんだ、この馬鹿チンは・・・とでも言いたげな顔になった。


「・・・・助けるべきだよ。君には男の勲章がないのかな?まぁ、それに私もついてるから大丈夫!!」


 ついてる→憑いてる。とりあえず少年は頷いておいた。そして、助けるとしてもここから見える位置では数人いることが確認できる。


「とりあえず、相手に顔を見られないように何か持ってない?頭からそれをかぶっておけば大丈夫。この木刀はねぇ・・・・まぁ、そんなことより、紀州が一番だよ。隙を突いて奴らを慌てさせるんだ。慌てているうちに誘拐されたという女の子を助ける、次にとりあえず抱えてどこかにその女の子を置いて、襲う!!じゃ、なくて・・・・追っかけてきた相手をぼこぼこにすれば万事オーケー!」


 長くて少年にはちょっと複雑であったが・・・・少年は頷いて友達からもらったショ○カーの覆面を着けたのであった。事情を知らない他人が見たら警察を呼ぶだろう・・・。



「おい、そろそろ迎えの車が来るぜ?」


「ああ、今回は簡単に誘拐できたな・・・。」


「そうだな。」


 そんな話をしている数人のもとに黒い誰かが現れた。

数人は犯行現場を見られたと思い込み、びびった。一瞬の隙を突いて少年は彼らの中心に縄で縛られていた少女を抱えて走って逃げたのであった。数十秒、何が起こったのかよくわからなかった若者たちだが・・・・獲物を横取りされたのに気がつき、走って逃げてしまった相手を慌てて追いかけ始めたのであった・・・。



 辺りが真っ暗なので自分が抱えている女の子の顔を見ることができなかった少年は少々残念に思ったが・・・とりあえず無事だけを確認して交番の近くにその女の子を置くことにした。少年とこの交番に勤務している人は昔からの馴染みがあるので何時に見回りに出るかを知っていた。


「さ、逃げるかこれからやってくる相手を迎撃するか決めようか?」


「・・・・逃げたいけど・・・・もうちょっと時間を稼いだほうがいいかも・・・もう少しかかると思うんだ。」


 既に少年が見る方向からは何人かの足音が聞こえる。


「・・・そう?じゃあ、木刀を持っているだけこっちが有利だからね・・・振り回してたら勝てるんじゃない?」


 幽霊は軽く言い放った。その顔には余裕の笑みがこぼれている。そんな表情を見ていると少年は不安な気持ちが少々、和らぐの感じた。和菓子を食べた後に渋茶を飲んだような感じがしたのであった・・・。


「・・・さ、頑張ってね?」


「う、うん・・・。」


 少年は頷いて木刀を握り締めた。そして、集中して暗闇のほうを見やる・・・。


「・・・・成る程、やっぱり私を完璧に見ることができるってことはもしや・・・。」


 幽霊はそういったが、少年はそんなことを聞いておらず集中していた。なおも、解説めいた幽霊の独り言は続く・・・。


「・・・・さぁて、この少年の力がどのくらいのもなのか・・・計らせてもらおうかな?まぁ、見ているのも面倒だから・・・久しぶりに無理やり力を解放させてもらおう。」


 幽霊はそういうと黒かった瞳を蒼色に染めた。瞬間、少年は意識を宇宙ぐらいに吹っ飛ばせ、前に倒れるような感じを覚えた。


「・・・さぁて、『満月の騎士』の力を見せてやろうじゃない。」


 幽霊の声で呟く少年の目は何処までも澄んでおり、此処より遥か遠くの月のように光って見えた。そして、数分後・・・その場に数人の若者が倒れていた。


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