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神代文字に転生したら美少女だった件

「暑いですね。カタカムナ」

「龍体、キツいよ、この炎天下行商は…」


私と龍体は売れない絵画を訪問販売している。インターホンを鳴らすが誰も出てくれない。

「ここもダメなのです」


とぼとぼ歩いていると定食屋があった。

「まさかまさかのカタカムナ。定食屋さんですよ。ちょっと休みましょう!」

「ここは…」


私は何かの既視感を覚えたが、それは一瞬だった。

「ええ、1時間待ちですか!?」

「ごめんなさいねえ、あれ、どこかでお会いしました?」

「いえいえ、そんな」


女店主は一瞬訝しがる表情を龍体に向けたが、思い出せなかったようで調理に勤しみはじめた。

客は満席で、外にも待つ人たちがいる。店内に目をやると小さな龍の絵が飾ってあった。

「龍体待とうよ。ここ評判のお店らしいよ」


私はスマホの画面を見つつ操作しながら龍体に笑みを向けた。

「そうですね。待ちましょう!」


         *


「これで良かったのかもしれません」

俺に片平は静かに話した。

「パラレル・ワールドを中間状態に留め置くこと、それが我が国の妥協点でした。取引に乗ってくれた片平様には感謝します」


漢字のエッセンスが横から話をつなげた。

「あなたの国の“外交”のおかげでまたこのように出歩ける。あの子たちの安全には代えられないからね」


片平は微笑を浮かべた。

「あの子らは太古の記憶も数日前のあの茶番劇も忘れているのか?」

俺の疑問であった。漢字のエッセンスは言う。

「忘れたというより、世界に記憶が合わされたのですね。片平様」

「そうだ。世界は前でもなく僕が知っている世界でもない。この世界での記憶がある」


片平は話を続けた。

「僕はあの子らが楽しく過ごしてるのを見て、これも一つの神代だと信じることが出来そうだよ」

「あの子というか、俺のもう一つの魂はなぜ選ばれたんですか」

「理想を追い求めた魂にまだ受肉化してなかったカタカムナ。どうなるか見てみたかった」

「そう比較的新しい文字のはずですからね。カタカムナは」


漢字のエッセンスはカタカムナについて話しつつ何か変化を感じるようだった。彼女の額にはタオの字が輝いている。

そう、俺たちもこの世界の記憶に調整されつつあった。忘れたくないこともあるが、この世界で生きていかなければならない。

俺たちはカタカムナと龍体を遠くから眺めて、それぞれの道に別れた。

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