世界は再び
史料は語る。1949年、技術者が山で得た巻物。全八十首のウタヒ。幾何学のような記号。古い科学の伝言。私はその記号の精として呼び出された――厳密には、「神代文字エッセンス」として。
知識は残っている。けれど、先ほどまでの「半生」は夢の側へ退いた。現実と夢の位置は、容易に入れ替わる。
星が近づく。龍は山の別荘へ降りる。
「龍体、ここはどこ?」
「アジトみたいなところです。彼らが道場に来たということは家も探索されてるはずです。ここで休みましょう」
椅子に沈む。壁の龍の絵がこちらを見ている。
「カタカムナ、あなたはこの世界が好きですか」
「唐突になんだよ」
「いえ、聞いてみただけなのです。私は憧れている世界があります。それはこの世界と似てますが本来の私たちの生まれ故郷です」
「……」
「それが遠のいてしまった」
言葉は軽いが、背中にのしかかるのは現実だ。
「しかし闘わなければなりません」
外で咆哮。銃声。彼女は扉を押し、夜へ躍り出る。『逃げて』という合図。
私は詠いながら、首を振る。
「そんなこと出来ない」
盾の数が減る。世界が遠のいた余波が、術に影を落とす。彼女が膝をつく。弾が盾を貫く――覚悟の刹那、空間が増殖するように円が重なり、弾道は消された。
「僕の世界は死んではいない!!カタカムナ、龍体!!」
片平が現れ、世界は揺り戻る。可能性は、まだ続行中だ。




