オカルトライター再び
記事は読者に受けたらしい。
「まあ店主は普通の絵と思ってたみたいだが」
効果は思い込みかもしれない、と理屈は囁く。だが、囁きは時に現実を動かす。
「しかし、気になるは二人の女」
取材は曖昧な輪郭だけを残した。
「福の神だったのかもなあ」
黄昏、公園のベンチ。ふいに影が空をかすめる。
「え、ウソだろ」
龍。職業人生で初めての「目撃」。すぐに予定がある。感覚は胸にしまい、足は時計に従った。
「やあ、赤坂さん」
「片平先生」
「実は赤坂さん。あなたに僕は信仰告白しに来ました」
「ここは教会ではありませんよ」
冗談は、彼の真顔に吸い込まれる。
「あなたはパラレル・ワールドを知ってますよね?」
「並行世界ですよね。無数の世界が重なりあっているというオカルト業界でも人気の話題です」
「実は僕はあるパラレルワールドを引き寄せています」
物語は、いつも少し先を行く。
「どういう世界ですか?」
「あなたが僕のまじないで眠ってた後、あなたも本来の神代文字の力があるべき世界に生きています」
「赤坂さん、最近不思議なこと起きてませんか?」
「バカにされるかもしれませんが龍をさっき見ました」
「龍体文字の絵で繁盛されたお店もあったようですね」
偶然という名の薄衣を、片平は一枚ずつ剥いでいく。
「龍は幻覚かもしれません。お店も良い偶然が重なっただけかもしれない」
「赤坂さん、自信を持ちなさい。あなたは僕の世界で生きてるのですよ」
声の温度に、世界が少し近づく。




