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オカルトと現実の狭間で

 俺は赤坂正司。『月刊ヒヒイロカネ』でライターをやっている。主にオカルトで食って来た。超古代文明の神代文字に関する本も出している。

しかし、だ。俺はオカルトを信じてはいなかった。少年時代に夢中になったムー大陸も超能力も神代文字も、だ。はじめは憧れから始めたこの稼業も、いつしか「知ること」が増えるにつれて、より現実的に考えるようになった。

ただ、記事に関してはオカルト肯定の立場から書いている。『月刊ヒヒイロカネ』の編集方針でもあった。


神代文字について説明すると、日本に漢字が輸入される以前からあった文字、ということになる。学術的には後世の創作とされているが、文字通り漢字以前からあると考える人たちや、不思議な力があると考える人たちもいる。後者の層に向けて俺は書いている訳だ。


そんなことを考えているのは、喫茶店で打ち合わせがあるからだ。お互い神代文字の研究家ではあるが、先方はより神秘主義者であった。うかつにも「後世の創作ですよね」と気軽に言うのは憚られる相手だ。人生の大半を神代文字に捧げて来た相手に言えるものではない。


先方が来た。

「赤坂さんでしょうか、はじめまして片平です」

「片平先生、本日はよろしくお願いします」


お互いコーヒーを飲みながら片平先生の話を俺は伺うことにした。御歳七十になる片平先生の神代文字に関する不思議な力や体験を記事にするのが、今回の俺のミッションだ。

片平先生は話しながら、じっと俺の目を見て離さない。気になるが、こちらも目を離さなかった。


「赤坂さん、目で分かります。本当はあなた、神代文字を後世の創作と思っているでしょう」

「片平先生、私も神代文字に関する本を出版している人間です。冗談を言わないで下さい」


静かな沈黙があった。

「では赤坂さん、これはどう思いますか」


片平先生が指で空中に神代文字を書き、息でスーッと吹き消すと、俺は眠気に襲われた。そこから何が起きたか分からない。気を失ったようだ。


俺は今どこにいるんだ? 喫茶店で何か不思議な力で気を失ったはずだ。

「お兄さんが赤坂正司?」


近くから声が聞こえ、誰かが近づいてくる。女性だが、髪の毛の一部が龍だった。

俺はどうなるんだ?

「大丈夫。安心して。ここは夢と現実の狭間の空間」


ネタになるかどうか一瞬考えたが、それよりもまず何が起きているのか知りたかった。

「お兄さんの魂は分かれていた。少年の頃とオカルトライターの今と」

「だから片平先生にお願いして連れて来た」

「あなたは?」

「私は龍体。世間では龍体文字と呼ばれているのです」

「俺はどうなる?」

「転生してもらいます」


俺はいまいち飲み込めなかった。死んだ訳ではないはずだ。

「そう、だからお兄さんの中の少年の魂を転生させます。オカルトライターのあなたはじきに目覚めるでしょう。少年と言ってもお兄さんの知識はあります。魂は役立ってくれるはずです」

「何にだ」

「もちろん神代文字です」

「俺は、少年の俺は神代文字に生まれ変わるのか」


俺はまったく飲み込めないが、そういうことらしかった。

龍体と名乗る美少女は満面の笑みを浮かべながら、髪と一体化してる龍から炎を吹き出し、大きな声で――

「それでは生まれ変わりましょう、神代文字エッセンスに!」

俺は光に包まれた。

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