第35章:【聖職者の獣】
4人組は影のように動き回っていた。
彼らは地面を走っていなかった。
壁を走っていたのだ。
外骨格はあらゆる動きに反応した。垂直な面に張り付くような足取り、不可能な回転、常識を覆すような跳躍。彼らの体はビルの間を滑り抜け、外壁をよじ登り、まるで重力が存在しないかのように空中で宙返りを繰り返した。
カチッ。カチッ。カチッ。
ブーツが壁に張り付く。
剥がれる。
再び壁に突き刺さる。
そのうちの1人が空中で回転し、片足を側壁に突き立て、もう一方の壁へと跳び移った。速度を落とすことなく、動きを次々と繋げていく。
風が唸りを上げた。
街がぼやけて過ぎていった。
そして、その狂乱の真っ只中で――
ドノヴァンの声が耳に飛び込んできた。
「敵の密度が高いエリアに近づいています。気をつけて、チーム。」
ヨイチは返事をしなかった。
ただ歯を食いしばった。
そして、前進を続けた。
ドスン。
4人はほぼ同時に倒れた。
転がった。
立ち上がった。
広場は空っぽだった。
静まり返っていた。
中央の噴水から流れる水の音だけが、その静寂を破っていた。
あまりにも静かすぎる。
陽一は首を回し、周囲を観察した。
何もない。
人影一つない。
だが、それこそが……彼に不安を抱かせた。
誰かの手が彼の肩に触れた。
彼は振り返った。
右側にいた士官候補生だった。
彼女の視線は鋭かった。
決意に満ちていた。
「近道があるわ」
彼女は右を指さした。
「ついてきて」
異論はなかった。
4人は再び走り出した。
あるレストランに入った。
扉は開いていた。
中は暗かった。
空気に埃が舞っていた。
「扉を塞いで!」
一人の士官候補生が即座に反応した。
床にあった鉄の棒を手に取り――
それを両開きのドアの隙間にはめ込んだ。
ガチャン。
封鎖された。
「さあ、行こう」
彼らは狭い通路を駆け抜けた。
光はほとんど差し込まない。
足音が響き渡る。
その先には――
箱。
無数にある。
山積みになっている。
士官候補生は止まらなかった。
箱をどかし始めた。
一つずつ。
ドスン。ドスン。
やがて――
現れた。
鍵穴。
隠されていた。
ヨイチは目を細めた。
「一体何だ…?」
女子士官候補生はすでに鍵を手にしていた。
ポケットから取り出した。
差し込んだ。
回した。
カチッ。
震え。
微かな。
そして――
壁が二つに割れた。
ゴロゴロ。
ゆっくりと開いた。
そこに現れたのは――
階段。
暗い。
未知へと続く。
士官候補生は鍵を取り戻した。
下を見下ろした。
それから仲間たちの方へ。
「行こう!」
返事を待たずに――
彼は暗闇へと最初の一歩を踏み出した。
そして他の者たちも……
彼に続いた。
ドアが鋭い音を立てて開いた。
カチッ。
そして向こう側にあったもの……
それは単なる通路ではなかった。
それは巨大だった。
建設中の地下トンネルで、途中で放棄されたままだった。コンクリートの壁は仕上げられておらず、梁がむき出しで、ケーブルが死んだ静脈のように垂れ下がっていた。床はくしゃくしゃの紙、汚れのついた設計図、錆びた工具……そして軍用装備で溢れかえった即席の作業台で覆われていた。
武器。
弾薬。
防弾チョッキ。
開け放たれた箱。
まるで誰かがすべてを準備したかのように……そして、ただ消えてしまったかのようだった。
彼の足音がその場に響き渡った。
空虚な。
深い。
ヨイチは数歩進み、眉をひそめて周囲を見回した。
「なんで俺だけこれについて何も知らねえんだ、士官候補生?」
彼の声が壁に反響した。
士官候補生は彼を見ようともしなかった。
「だって、あんたとは違って……」
彼はテーブルの一つに近づいた。
銃を手に取った。
素早く点検した。
「……俺は上層部と仲が良いからな」
カチッ。
銃を装填した。
ストレートに。
回りくどいことは言わない。
それから、グループの方へ視線を上げた。
「できるだけ早く準備しろ」
軽く頷いてその場所を指さした。
「必要なものは全部ある」
静寂。
一瞬。
そして――
チームは散開した。
一人が弾薬箱を開けた。
別の者は防弾チョッキを身につけた。
銃が次々と手から手へと渡る。
弾倉が点検される。
ストラップが調整される。
カチッ。カチッ。シュッ。
ヨイチはゆっくりとテーブルに近づいた。
ライフルを手に取った。
両手で銃を回した。
重い。
本物だ。
彼の視線が再びトンネル内を走った。
準備が整いすぎている。
都合が良すぎる。
だが、彼は何も言わなかった。
ただ銃を装填しただけだ。
カチッ。
そして顔を上げた。
何が起きようとも構わないという覚悟で。
「おい! これを見ろ!」
その叫び声が、トンネル内のざわめきを遮った。
皆が振り返った。
混乱。
緊張。
そして深く考える間もなく、彼らは声の方へと駆け出した。
近づくにつれ、彼らの足音がコンクリートに響き渡った。
一人また一人と、士官候補生のそばで立ち止まった。
そして見上げた。
目の前には――
あるはずのないものが存在していた。
ポータル。
だが、それは整っていなかった。
安定していなかった。
それは……有機的だった。
コンクリートの内側から生えてきたかのように、壁に食い込んだ、裂け、脈打つ肉の塊。その縁は引き裂かれ、生々しく、湿った内臓のようにゆっくりと動く組織の断片がぶら下がり、濃く暗い液体を滴らせていた。
赤。
あまりにも赤すぎる。
脈打っていた。
ドクン……ドクン……
まるで心臓のように。
周囲の空気は鉄の匂いがした。
血の匂い。
何か腐ったもの。
だが、その中心には――
対照的なものがあった。
あの異形の塊に、完璧な切れ目。
青い表面。
輝いている。
冷たい。
まるで二つの世界を隔てる膜のようだった。
肉のように震えてはいなかった。
鼓動もしていなかった。
それは……安定していた。
静かだった。
別の意味で不自然だった。
ヨイチは目を細めた。
「……これは一体何だ?」
誰も答えなかった。
士官候補生の一人が一歩後退した。
もう一人は銃をさらに強く握りしめた。
彼らを先導していた士官候補生は、じっと立ち尽くしていた。
見つめながら。
分析しながら。
彼女でさえ……
それを完全には認識していないようだった。
肉の塊の一つが動いた。
落ちていった。
床に飛び散った。
パタン。
その音がトンネル全体に響き渡った。
そして一瞬――
誰も息を呑んだ。
皆が同じことを感じたからだ。
あの扉……
単なる扉ではなかった。
それは生き物だった。
そして向こう側――
そこに何があるにせよ……
こちらを見返しているかもしれない。
士官候補生は眉をひそめ、その物から視線を外さなかった。
「……あれはポータル?」
彼女の声には迷いが混じっていた。
不安げに。
「なぜこれがここにあるの……?」
ポータルの湿った鼓動が、自ら答えた。
ドクン……ドクン……
低い音。
絶え間ない。
まるで……意識があるかのように。
その時――
何かが彼女のブーツに擦れた。
士官候補生は視線を下げた。
靴底に紙片が貼りついていた。汚れ、しわくちゃで、まるで何時間も地面を引きずられてきたかのようだった。
彼女は身をかがめた。
それを手に取った。
紙は湿っていた。
冷たかった。
彼女はゆっくりとそれを広げた。
彼女の目が文字をなぞり――
表情が一変した。
緊張。
沈黙。
「……ねえ」
他の者たちが近づいてきた。
ヨイチは首を傾げた。
「何て書いてある?」
士官候補生は喉を鳴らし、声に出して読んだ。
「『ポータルを開けるな! 接近禁止。クリフォードの命令』」
間。
彼女の声の反響はトンネルの中に消えていった。
「――将来、この地下階は危険区域となる。ポータルが開くと、多数の兵士がやってきて、そこから獣が現れ、お前たちを殺すだろう。地下階の従業員は、作業区域に近づくことを禁ずる。写本の命令に従え。それが、お前たちを明るい未来へと導く唯一の道だ。」
完全な沈黙。
士官候補生の一人が銃を握りしめた。
「クリフォード…?」
別の者がポータルを見つめた。
「じゃあ、これ… 奴らがやったことなのか?」
ヨイチは何も言わなかった。
彼の視線は、青い膜に釘付けのままだ。
微動だにしない。
だが… 不気味だ。
まるで、理解するにはあまりにも大きな何かを隠しているかのように。
肉の帯の一つが、再び動いた。
今度はもっと激しく。
ガサッ。
まるで内側から何かが引っ張っているかのように。
紙は士官候補生の手に軽く震えた。
「ポータルを開けないで……」
彼女は小声で繰り返した。
だが、もう手遅れだった。
「……この紙は、どうやら近い将来に起こることを予言できたようだ。一体どの手稿のことだ?」
皆が同じことを考えていたからだ。
同じことを。
もしそれが禁じられていたのなら……
もし「クリフォード」のような人物がそのような命令を下していたのなら……
それなら――
向こう側には何がある? どの写本だ? 未来を予言できるのか? どうやって?
ヨイチは腕を組んで、答えた。
「そんな話を一度聞いたことがある。 その写本は、未来の出来事を予言するために使われる、ある種の神秘的な道具だ。その起源も、どうやって作られたのかも分からないが、空に裂け目をもたらした大災害と関係があると考えられている。つまり、未来はすでに石に刻まれていて、変えることはできないということだ。」
ポータルが再び脈打った。
「……でも……」
さらに強く
「……考えにくい。」
さらに重く。
「……僕たちの命が、もう決まっているなんて。」
ドスン。
空気が張り詰めた。
金属的な音。
間違いなく、何かが外れる音だ。
そしてその時――
「動くな、さもなくば撃つぞ!」
背後から声が響いた。
断固とした。
威圧的だ。
ヨイチが反応する間もなく、後頭部に銃口が突きつけられる冷たさを感じた。
数人の兵士。
深淵攻撃隊の。
彼らを取り囲み、
頭部を真っ直ぐに狙っている。
「お前たちは誰だ?」
士官候補生が真っ先に反応した。
両手を上げた。
ゆっくりと。
震えながら。
「私たちは深淵攻撃隊の第105小隊です……仲間です」
彼女の声には迷いが混じっていた。
だが、持ちこたえようとしていた。
「ここで何をしている? どうやって入った?」
一瞬。
沈黙。
「えっと……あ……」
彼は喉を鳴らした。
「中隊長と合流するために、もっと近道を探していたんです」
兵士はすぐには答えなかった。
彼の視線がグループをくまなく走った。
見極めている。
迷っている。
彼は仲間たちを見た。
そのうちのひとりが、かろうじてうなずいた。
兵士はライフルを下ろした。
「……」
一瞬の安堵。
偽りの安堵だった。
なぜなら、次の瞬間――
バキッ。
ライフルが再び持ち上げられた。
そして、叩きつけられた。
士官候補生の顔面を直撃した。
彼女の頭は激しく揺さぶられ、体は横へと倒れ込んだ。
血。
「嘘だ!」
バン。
一発の銃声。
乾いた音。
彼女の隣にいた仲間が弾を受けた。
貫通した。
彼は声一つ上げずに倒れた。
ヨイチは反応した――
だが遅かった。
背後から腕が彼を包み込んだ。
ライフルの銃口が彼の首に押し付けられた。
「動くな。」
別の兵士が最後の士官候補生へと歩み寄った。
ゆっくりと。
狙いを定めて。
躊躇いなく。
二丁のライフル。
胸へ一直線。
トンネルは再び静寂に包まれた。
重く。
激しく。
入り口は……
彼らの背後で脈打っていた。
ドクン……ドクン……
まるで観察しているかのように。
まるで待ち構えているかのように。
陽一を押さえつけている兵士は、さらに強く締め上げた。
「さあ、本音を話せ……」
その声は冷たかった。
疑念に満ちていた。
「本当のことを話せ。」
士官候補生は地面に横たわっていた。
呼吸は乱れていた。
額から流れ落ちた血が、目を横切り、その下の床を染めていた。
彼女の手が震えていた。
体を支えようとしていた。
だが、ほとんど動けなかった。
背後の兵士がライフルを構えた。
彼女の頭を真っ直ぐに狙った。
ためらうことなく。
「お前たちの嘘は、糞を食うよりひどい。」
その声は冷たかった。
鋭い。
「兵士たちは、小隊に誰が所属しているか知っている。一人ひとりの名前を……一人ひとりの顔を、暗記する義務がある。」
一呼吸。
彼の目が鋭くなった。
「そして、お前は我々の一員ではない。」
士官候補生は歯を食いしばった。
彼女の目に涙が浮かんだ。
彼女は仲間の遺体を見つめた。
動かず。
息絶えていた。
彼女の胸が締め付けられた。
そして――
視線を兵士に向けた。
怒り。
痛み。
混乱。
「それなのに、なぜこんなことをするの!?」
彼女の声は震えた。
「なぜ私たちを攻撃するの!?」
「士官候補生、黙れ!」
陽一の声が空気を切り裂いた。
張り詰めた。
切迫した。
だが、もう手遅れだった。
兵士が答えた。
「もううんざりだからだ!」
その声の反響がトンネル中に響き渡った。
沈黙。
重苦しい一秒。
「俺たちだって怖いんだ!」
士官候補生は、まだ地面に倒れたままの彼を見つめた。
「何が怖いんだ!?」
兵士はライフルを握りしめた。
彼の手は震えていた。
だが、銃を下ろすことはなかった。
「戦争で全滅させられるのが怖いんだ!」
彼の声は高まった。
途切れ途切れに。
「お前たちのせいで、俺たちは一度も太陽の光を見たことがないんだ!」
後ろにいた別の兵士が顎を固く締め上げた。
その目は視線をそらしていた。
「お前たちの大統領は腐敗している! 愚か者だ!」
彼は言葉を吐き捨てた。
憎しみを込めて。
「しかも、自分の国のために何一つやってやらない!」
ライフルの銃身がわずかに震えた。
「そして俺たちは、地底の闇の中でそのツケを払わなきゃならないんだ!」
トンネルはさらに狭く感じられた。
重苦しく。
「お前の国の大統領は人種差別主義者だからだ!」
彼の声は途切れた。
「そして、俺たちを憎んでいる!」
沈黙。
重苦しい。
息が詰まるような。
「共和国全体が人種差別主義者だ!」
彼は歯を食いしばった。
抑えきれない怒りを込めて。
「もううんざりだ!」
反響はゆっくりと消えていった。
そして一瞬――
誰も口を開かなかった。
入り口さえも。
それは皆の背後で、脈打つように響き続けていた。
ドクン……
まるで警告のように。
もっと恐ろしい何かが……
待ち構えていることを。
空気が張り詰めた。
まだ地面に倒れたままの士官候補生が、怯えたように顔を上げた。
「……みんなが悪い人ばかりじゃないわ」
兵士はそう吐き捨てるように答えた。
「お前たちがこの物語の悪者だ!」
「みんなが悪いわけじゃない!」彼女の声は震えていたが、途切れることはなかった。「本当にあなたたちのことを心配している人もいるのよ!」 政府に反抗しているのに、黙らされている!私たちもまた、偽善的で自己中心的な社会に生きているんだ!
兵士は躊躇した。
彼のライフルが数センチ下がった。
「……それは違う。」
「同じだ!」
「違う!」
彼は再び銃を構えた。
彼女の頭を狙って。
そしてその時――
彼女は消えた。
倒れることもなかった。
叫ぶこともなかった。
ただ――
ドスン。
その体はあり得ないほどの速さで左へと吹き飛び、乾いた衝撃音と共に壁に激突し、トンネル全体を震わせた。
静寂。
完全な。
全員が振り返った。
ゆっくりと。
震えながら。
そして、それを見た。
獣。
青白く。
人間らしさを剥ぎ取られた姿。
その体は歪み、引き伸ばされ、黒い杭のように鋭い四肢で支えられ、動くたびに地面に突き刺さっていた。皮膚は引き伸ばされ、縫い合わされたように見え、不自然に突き出た骨片がそこかしこに走っていた。
そしてその頭は……
わずかに傾いていた。
まるで自分自身を見つめているかのように。
学んでいるかのように。
もう一人の士官候補生を支えていた兵士が、突然彼を放した。
「くそっ!」
彼は振り返った。
狙いを定めた。
そして引き金を引いた。
バン。バン。バン。
弾丸が命中した。
だが、その化物は止まらなかった。
反応すらしなかった。
化物は彼に向かって飛びかかり――
一撃で――
彼を壁に叩きつけた。
ガシャン。
彼の体はぶら下がったまま。
動かなくなった。
一雄は反応した。
身を解き放った。
振り返った。
背後から彼を押さえつけていた兵士を倒した。
獣はすでに彼の上にのしかかっていた。
殴打。
乾いた音。
残忍な。
肉がコンクリートにぶつかる音。
誰も口を開かなかった。
誰も息を吐かなかった。
残った三人は顔を見合わせた。
完全な沈黙。
士官候補生はかろうじて首を振った。
行こう。
言葉もなく。
音もなく。
彼らはゆっくりと立ち上がった。
一歩ずつ。
後退しながら。
全身の筋肉を緊張させ。
息を殺して。
ヨイチは思った。
(「……あの化け物は、あの入り口から出てきたのか?」)
トンネルからの鼓動が、今やより強く聞こえる。
(「……つまり、あの忌々しい写本は伝説なんかじゃなく、真実なんだ。」)
近づいてくる。
獣は叩き続けていた。
何度も何度も。
そしてついに――
陽一は石を拾った。
一瞬、それを握りしめた。
そして投げつけた。
カラン。
石は遠くへ跳ね返った。
トンネルの闇の中へ。
獣は動きを止めた。
頭を振り向いた。
そして音の方へと猛然と飛び出した。
「今だ。」
二人は走った。
すべてが動きに包まれた。
必死の足音。
荒い息遣い。
トンネルは彼らの足元で震えていた。
だが――
それは長くは続かなかった。
なぜなら彼らの背後で――
音がした。
速い。
あまりにも速い。
四肢が地面を叩く音。
近づいてくる。
獣は理解したのだ。
そして今――
彼らを狩り出していた。
そして彼らは走った。
後ろを振り返ることなく。
彼らの足音がトンネルの静寂を破り、彼らは勢いよく扉を突き破った。
バン。
「閉めろ!」
だが、もう手遅れだった。
背後から――
あの叫び声。
生きた肺の中で金属が砕かれるような、不気味で、不自然な、耳をつんざくような悲鳴。
「イーーーーーーッ!!!」
近づいてくる。
あまりにも速く。
彼らは敷居を越えた。
そして別のエリアへ――
広大な部屋へ。
開放的な空間。
乱雑な部屋。
ひっくり返った机、散乱した工具、建設途中の金属構造物、未完成の壁に寄りかかった梯子。すべてが埃と荒廃に覆われていた。
迷い込むには絶好の場所。
あるいは死ぬには。
「散れ、一緒に!」
士官候補生は走りながら即座に指示を修正した。
ヨイチは周囲を見回した。
計算している。
脱出路。
高さ。
障害物。
「上だ!」
彼は金属製の構造物を指差した。
テーブルの上に飛び乗った――
ドスン。
傾斜した梯子へと飛び移り――
二段登り――
上のプラットフォームへと飛び移った。
他の者たちも彼に続いた。
素早く。
不器用ながら。
だが、生き延びた。
そしてその時――
ガシャン。
ドアが吹き飛んだ。
破片。
歪んだ金属。
獣は生きた弾丸のように部屋に飛び込んできた。
その四肢が床に突き刺さり――
カチッ――カチッ――カチッ――
そして、その体は前傾した。
探している。
嗅ぎ回っている。
耳を澄ませている。
そして――
頭を振り向けた。
まっすぐ彼らの方へ。
「くそ……」
ヨイチは歯を食いしばった。
「走れ!」
獣が再び咆哮した。
「イーーーーーーイーー!!!」
そして飛びかかった。
壁をよじ登った。
難なく。
まるで重力が存在しないかのように。
士官候補生の一人が、プラットフォームを登る途中で滑った。
「あっ——!」
陽一は彼の腕を掴んだ。
彼を引き上げた。
「置いていかないで!」
足元の木が軋んだ。
金属が震えた。
そして背後で——
あの化け物はすでにすぐそばまで迫っていた。
一本の肢がテーブルを突き破った。
もう一本の手足が、彼らのすぐ横の壁に突き刺さった。
木片が飛び散った。
「あいつ、逃がしてくれないわ!」
女子士官候補生が叫んだ。
絶望的に。
ヨイチは前方を見た。
そして、出口を見つけた。
隙間。
別の通路へと続く開口部。
「あそこだ!」
彼は飛び込んだ。
考える間もなく。
転がりながら落ちた。
立ち上がった。
そして走り続けた。
他の者たちも彼に続いた。
背後で――
その音は消えなかった。
むしろ。
ますます近づいてくる。
ますます速く。
なぜなら、その獣は……
もはや探しているのではなかった。
今や――
選んでいたのだ。
陽一は走っていた――
だが、彼の思考はそれ以上に速かった。
(「この化け物をどうやっつけよう…?」)
障害物を飛び越えた。
壊れたテーブルの下に滑り込んだ。
(「ニーンのライフルを持ってない…」)
彼の視線が鋭くなった。
(「それだとさらに厄介だ。」)
背後から――
その音。
近づいてくる。
重みを増して。
獣はまっすぐ走るのをやめた。
勢いをつけて。
彼めがけて。
「気をつけろ!」
陽一は即座に反応した。
右足を回転させ――
地面に踏み込んだ――
外骨格が反応した。
カチッ――ドスン。
彼は横へ吹き飛ばされた。
体が宙で回転し――
テーブルに激突した。
ガシャン。
転がった。
一回転。
二回転。
止まった。
だが倒れなかった。
すぐに立ち上がった。
足元はしっかりしている。
荒い息。
(「チッ…」)
視線を上げた。
獣はすでにまた彼の方へ向き直っていた。
(「逃がしてはくれない…」)
彼の目が動いた。
距離を測っている。
ドア。
遠い。
遠すぎる。
(「このまま出口に向かって走り続ければ…」)
歯を食いしばった。
(「死ぬ確率は50%だ。」)
心の静寂。
一瞬。
決断。
仲間たちはすでに陣取っていた。
獣のすぐ後ろ、数メートル先。
瓦礫に身を隠して。
武器を構えながら。
刃。
銃。
準備完了。
震えながら――
だが、揺るぎない。
陽一はゆっくりと息を吐いた。
彼の目つきが変わった。
冷徹に。
鋭く。
(「それなら……」)
軽く膝を曲げる。
構える。
(「他に手はない。」)
獣が吠えた。
「イイイイイイイイ——!!」
そして再び襲いかかってきた。
陽一は後退しなかった。
今度は――
前に踏み出した。
(「殺さなきゃ……」)
歯を食いしばった。
(「……どんな犠牲を払っても。」)
そして次の瞬間――
すべてが激闘へと爆発した。
(第35章 終わり)




