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クロノ・レクイエム  作者: クリスチアン・ディアス
エピソード1:[革命]
33/33

第32章:【満月の光の下での戦い パート4】

落下は突然終わった。

彼女の体は木製のテーブルに激突し、

テーブルは耐えきれなかった。

衝撃で表面が割れ、破片が四方八方に飛び散る爆発のような音を立てて砕け散った。轟音が部屋中に響き渡る中、彼女は砕けた木の破片の中に倒れ込んだ。

「あっ…!」

彼女は息を詰まらせ、喘ぐように息を漏らした。

彼女は数秒間、震えながら横たわり、息を整えようとした。鋭く、しつこい痛みが全身を駆け巡っていた。

(「……くそっ! 何が起きた? なんで床が割れたんだ……?」)

だが、そこに留まっているわけにはいかなかった。

彼女は体をわずかに回転させ、木片が散らばる床の上を這った。一挙一動は不器用で重かったが、彼女の視線はある一点に釘付けになっていた。

(「あの石!」)

ガラスは、ほんの数センチ先にあり、埃の中に微かに輝いていた。

彼女は手を伸ばした。

指が震え、滑らかな表面にほとんど触れようとしたその時――

パキッ。

一足の足が力強く降りてきて、彼女の腕を床に押し付け、きりっと止まった。圧力は即座に、痛烈に襲い、手がガラスに届く直前で止まることを余儀なくされた。

彼女の体は硬直した。

その存在の下で腕は動けなくなり、あと1センチも進むことができなかった。

腕にかかる圧力は緩まなかった。

それどころか……強まった。

ゆっくりと。

重く。

抗いがたく。

震える視線を、かろうじて上げた……彼女を動けなくしている脚を追って。

伝統的なサンダル。濃い色の靴下。

そして――

その姿の全貌。

彼女の前に立つ男は、ゆったりとした着物を自然にまとっており、そのシルエットをほぼ完全に隠していた。その姿勢はリラックスしているが、確固としており、まるで状況を掌握するのに微力な努力さえ必要としないかのようだった。

「お前たちのような子供たちが、ここで何をしているんだ? まさか自殺でもしようというのか?」

長く乱れた髪が、顔周りに束となって垂れ、後ろで部分的にまとめられていた。いくつかの髪が目を覆い、その表情を隠す影を落としていた。

だが、それを見る必要はなかった。

彼が放つオーラ……それだけで十分だった。

彼の手には刀が握られていた。刀身はまだ鞘に収まったままで、わずかに地面に向かって傾いていた。彼はそれを緊張感を持って握っているのではなく、まるで鞘から抜くことなど些細なことであるかのように、危険なほど冷静に握っていた。彼には焦りなどなかった。迷いもなかった。

ただ、重苦しい存在感だけが……アンナの腕を踏みつける彼の足と同じくらい、その場の空気を押しつぶしていた。

◇◆◇

アイリーンとサイモンは、決意を固めて建物の廊下を駆け抜けた。


「地下室への入り口を見つけなきゃ!」――アイリーンが叫んだ。「あの紳士、聞こえた!?」


サイモンは絶望的な表情でアイリーンを見つめながら言った。


「地下室を見つけたいなら、このバカ軍団を片付けてしまおうじゃないか!」


「もちろん分かってるわ!でも、ペースを落とさないで。私がやるから!」

彼女の足は床に食い込み、くるりと回転した。その間もサイモンはさらに数歩進み、ようやく立ち止まった。

彼は手を上げた。

そして、左から右へと、乾いた音と共にパチンと後ろへ叩きつけた。

その音が廊下に響き渡ると、何かが反応した。

奥の壁が震えた。ひびが入った。

そして……

壁が割れた。亀裂から、巨大で不気味な爪が、まるで建物自体が生きているかのように両側から現れた。それらは迫りくる敵に向かって猛烈に伸びてきた。反応する暇などなかった。爪は空中にいた数人を捕らえ、壁に叩きつけた。

他の者たちは引きずり込まれ、捕らえた亀裂の間にその姿が消えていった。

廊下は鈍い衝撃音、骨が砕ける音、そして長くは続かない窒息した悲鳴で満たされた。

だが、敵は依然として四方八方から押し寄せていた。

「サイモン! ドアへ走れ!」

彼はまっすぐドアへと駆け出した。

あと一歩――

その時、彼はそれを感じた。

視線を向けた。

すべてがスローモーションになった。

左側の壁が静かに蠢き始めた……

ひび割れが血管のように広がり……

そして次の瞬間――

壁は破裂した。

石の破片が彼に向かって飛び散った。身を守る暇はなかった。衝撃が彼を直撃した。

彼の体は右へと吹き飛ばされ、まるで重さなどないかのように空気を切り裂いた。部屋の敷居を越え、床に叩きつけられ、瓦礫と塵の中を転がり、ようやく止まった。

世界が回り、息が詰まる。

だが、意識は失わなかった。

彼は横たわり、荒い息を吐き、視界はぼやけていた……爆発の余韻がまだ耳に響き渡る中。

「あいつらは馬鹿だ。」

その時……彼は現れた。

着物をまとった男が廊下の真ん中に立ち、まるで最初からそこにいたかのように、微動だにせず佇んでいた。重厚な布地が彼の周りを包み込み、刀はゆったりと手に握られていた。

彼は右手を上げ、アイリーンをまっすぐに指し示した。

一歩も動かなかった。


彼女は口を開かなかった。

ただ手のひらを上に向け、二本の指を動かした。人差し指と中指が、鋭い動きで前へと伸びた。

まるで目に見えない何かを引っ張るかのように。

そしてその効果は即座に現れた。

アイリーンの体は震え、後ろへと吹き飛ばされた。

それは押しやられたわけではなかった。

それは凄まじい引きずりだった。

足は地面から離れ、廊下を投げ飛ばされ、彼女を引き寄せるその目に見えない力に抗うことはできなかった。

後ろへ。

さらに後ろへ。

まだ立ち尽くしている敵たちへとまっすぐ。

彼女は彼らの間に倒れ込んだ。

包囲された。

一瞬にして追い詰められた。

その間、通路の反対側では、着物を着た男がゆっくりと手を下ろしていた……まるで、その一連の出来事に、ほんの少しの労力も要しなかったかのように。

「この一族は無能だと思っていたが、ここまで無能だとは思わなかったな」――彼は顔を上げ、深く息をついた。「「お前たちの誰か、ここで何をしているのか教えてくれるか?軍人には見えないが、非常に興味深い装備や装飾品を身につけているな。ハーレムが臣下に水晶石の使用を禁じていたおかげで、さもなくばとっくに死んでいただろう。」

男は動かなかった。ただ手を柄へと滑らせ、刀を抜いた。

鋼が鋭い音を立てて現れた。

一歩も動かずに、彼は刀を左へと突き出した。

カランッ!

その角度から、一人の少女が彼に向かって飛びかかってきた。空中で刃がぶつかり合い、その衝撃が響き渡り、

時間がゆっくりと流れ始めた。

二人の顔は至近距離に迫った。

男はわずかに彼女の方へ顔を向け、その目は髪のかたまりに隠されていた。

「さらに人間か? 興味深いな。」

彼の声は低く、穏やかだった。

まるで、そのすべてがどうでもよいことであるかのように。

力の衝突で体は後ろへ押し出され、床を滑ったが、足は地面から離れなかった。彼はしっかりと立ち続けた。

そして次の瞬間――

すべてが通常の速度に戻った。

彼は振り返った。

その体と刀が同時に左へ動いた。鋭い一閃。

刃は迫りくるアイコの胸を貫き、その動きを鋭く止めた。

だが、それで終わりではなかった。

背後から

もう一人の襲撃者が。

アーサーは斬りかかろうと身を低くしていた。

男は振り返ることなく反応した。

軸を中心に右へ回転し――

その手は即座にアーサーの首を掴んだ。

持ち上げ、

投げ飛ばした。

体は後ろへと吹き飛ばされた。

だがその時――

まただ。

時間がスローモーションになった。

何かが空中で回転していた。

水晶のような石。

それは着物の男のポケットから飛び出し、混沌の中、紫と青の光を反射しながらゆっくりと上昇していた。

回転し、

浮遊し、

落下していく。

世界が突然元に戻った。

少年は床を転がり、壁に軽くぶつかってから、動かなくなった。

そして石は、落ちた。

床に軽く乾いた音を立てて。

男は下を見下ろし、言った。

「ふむ。火はすでに広がって、ハーレムが持っていた残りの石をすべて焼き尽くしてしまったのか? 一つだけなら、害はないだろう。ハーレム、隠されていた残りの石を燃やしたなんて、お前は天才でありナルシストだな……」――そう言って、彼は頭を後ろに向け、アイリーンを確認した。「……で、お前はどうしてそんな能力を持っているんだ……? なあ?」

アイリーンはもうそこにいなかった。爪によって引き裂かれた人々の残骸だけが残されていた。

一本の爪が彼の胸を貫き、背中から突き出た。

その衝撃で彼はその場に立ち尽くした。

時間がゆっくりと流れ始めた。

血が空中に広がり、小さな黒い滴となって彼の体の周囲に漂った。彼は歯を食いしばり、痛みに耐えながら顎をわずかに震わせた。

「まさか!?」

…誰にも信じるな。

背後から――

――アーサー!

その叫びが、その瞬間を切り裂いた。

アイリーンが、必死に彼を呼んでいた。アーサーは反応した。

彼の視線は石に注がれた。

彼は走った。

しかし、着物を着た男はすでに動いていた。

振り返ることなく、彼は左手をわずかに上げた。

二本の指。

ごくわずかな仕草。

石は地面から浮き上がり……倒れた死体の間をすり抜け、前方の廊下へと飛び出した。

その瞬間、男は自らの体を引きずり出した。

鋭い動き。

肉が裂けた。

そして腹部を貫いていた爪から身を解き放ち、凄まじい勢いで引き剥がした。

血が滴り落ちた。

だが、彼は立ち止まらなかった。

その時――

炎が襲来した。

炎が部屋中に押し寄せ、その道のりのすべてを飲み込んだ。壁が破裂し、熱気が空気を歪ませ、爆発が辺りを揺るがし始めた。


混沌が再び訪れた。

「出て行け!」

アイリーンが再び襲いかかった。

無数の爪が四方八方から彼めがけて飛びかかってきた。

しかし、着物を着た男は動いた。

身を翻した。

攻撃の間をすり抜けていった。

上へ。

下へ。

左へ。

右へ。

どの爪も、わずか数ミリの差で外れていった。

やがて彼の視界から消え――

そして彼の目の前に現れた。

その手が彼の体を掴み、持ち上げた。宙に浮いた。

その向こう側――

アーサーは立ち止まった。

石はそこにあった。

炎の中に、混沌の只中で燃え盛っていた。

彼の目が震えた。

絶望。

苛立ち。

彼は歯を食いしばり――

そして視線を逸らした。

「みんな、立ち上がれ!今が諦める時じゃない!目標を忘れたのか!?希望を忘れたのか!?もし諦めていたら、これまでの努力はすべて無駄だったんだ!自由の先を見たいと魂が願うなら、立ち上がって戦え!」

彼の叫びが空気を切り裂いた。

そして、何かが変わった。

サイモンは右手を握りしめ、自分に言い聞かせた。「戦え!戦え!戦え!」

アイリス、アイコ、そしてサイモンの体は、決意に満ちて前へと動き出した。

「戦え!」――アーサーが叫んだ。

一人また一人と、倒れていた仲間たちが立ち上がった。よろめき、血まみれで……だが、立ち上がったのだ。

彼らは武器を手に取り、一斉に前進した。

彼を取り囲み、

円陣を組み、

攻撃の準備を整えた。

そして、彼に追いつく直前に――

時間が再び歪んだ。

ゆっくりと。

重く。

静寂に包まれて。

着物をまとった男は中央に立ち、アイリーンの首を掴んでいた。

そして彼の心の中で――

女性の声が語り始めた。

(「ダニー……人生のある時、あなたのすべての罪が実を結ぶ時が来るわ。私を恋に落ちさせたのは、本当にあなたなの?」)

すべてが突然止まった。

背後から、電気的な轟音が廊下を裂いた。

ドーン。

その音は壁に、床に……そして骨に響き渡った。

誰も動かなかった。

すべての視線がそちらへ向かった。

そこに彼はいた。

トニー。

廊下の残骸の中に立ち、血まみれで、体を前に傾け、一呼吸するたびに苦しそうに喘いでいた。視線は下を向き、床に釘付けで、肩は重く……疲れ切っていた。

しかし、彼の右手は――

ガラス片を握りしめていた。

彼の体は変わり始めた。

火花。

最初は小さなもの。

やがて激しいものへと。

赤い電気が彼の肌から噴き出し、不規則な線となって全身を駆け巡り、生きた亀裂のように這う黒い筋と混ざり合った。エネルギーが周囲でパチパチと音を立て、空気を震わせた。

彼の瞳孔は……

赤く染まった。

彼は顎を突き出し、血にまみれた顔を歪めた。

そして彼の傷は――

塞がり始めた。

肉が再生し、血が止まる。

まるで痛みなど無関係であるかのように。

彼はガラスを握りしめた。

全力を込めて。

パキッ。

割れた。

爆発は瞬時に起きた。

電気の波が周囲を襲い、猛烈な勢いで広がっていった。近くの壁が破裂し、放電の下で粉々になった。床がひび割れた。空気そのものが引き裂かれるようだった。

しかし――

突如として――

一撃。

ダニーの姿が彼の目の前に現れた。

その拳がトニーの顔面を直撃した。

時間がスローモーションになった。

衝撃でトニの顔は歪み、血の滴が宙に舞った。

そして、男の声――明瞭で鋭いその声が、その瞬間を切り裂いた。

「俺をバカだと思ってるのか!?」

時間が元に戻った。

トニは後ろへ吹き飛ばされた。

転がった。

一度。

また一度。

床を削りながら、その道のりのすべてを破壊し、瓦礫の中に激突した。

静寂。

着物をまとった男は降りてきて、そっと地面に触れた。

右手を前に掲げた――

しかし、何かがおかしかった。

彼は動きを止めた。

見下ろした。

その手は……

もはや完全ではなかった。

切断されていた。

真っ二つに。

反応する暇もなかった。

閃光。

純粋な電気。

赤い稲妻が、あり得ない速さで空間を切り裂いた――

そして次の瞬間――

彼の頭は体から切り離された。

落ちた。

転がった。

体は一瞬、立ち尽くした……そして崩れ落ちた。

瓦礫の中に――

一人の人影。

トニ。

半分隠れている。

伸ばされた腕。

人差し指が前方を指していた。

まだ煙を上げていた。

アーサーは、言葉にできない表情を浮かべ、完全な沈黙の中で前を見つめていた。

アイコ、アイリス、そしてサイモンは彼を助けようと駆け寄った。

しかし、アーサーの頭にはただ一つの考えしかなかった。

(「トニ……何をしたんだ?」)

「ねえ、アーサー!」――アイリーンが叫んだ。

アーサーは後ろを振り返った。

そしてアイリーンは続けた。

「私の妹を探して!地下室はこのドアの向こうよ!」

アーサーの瞳は震えていたが、返事はない。

そして彼は右拳を握りしめた。

(「……ありがとう、トニ。」)

◇◆◇

階段は螺旋状に下りており、湿気があり、薄暗かった。


一歩踏み出すたびに、まるでこの場所があまりにも長い間空っぽだったかのように、空虚な反響が響いた。下へ下へと降りるにつれて空気は冷たくなり、喉にこびりつくような金属臭と古びた臭いが漂っていた。

アーサーは後ろを歩いていた。

アイリーンは違った。

アイリーンは素早く降りていった。

あまりにも速く。

ようやく地下室に着くと、彼らの目の前に空間が広がっていた。長く細い通路の両側には、鉄製の独房がずらりと並んでいる。鉄格子は錆びており、歪んでいるものもあれば、無傷のものもあった……しかし、どれも空っぽだった。

アイリーンは立ち止まらなかった。

彼女は走った。

独房から独房へと駆け抜け、必死に中を覗き込み、その慌ただしい足音が石の床に響き渡った。彼女の呼吸は乱れ、ほとんど途切れそうになった。

「……」

何もない。

次の独房。

空っぽ。

また一つ。

何もない。

彼女の手が震えていた。

視線は左右に動き、ますます速く、ますます必死になっていった。

そして、彼女は立ち止まった。

突然。

ある独房の前で、彼女の体は硬直した。

その表情には……感情が一つもなかった。

あらゆる感情が同時にそこにあった。

衝撃。

信じられないという気持ち。

安堵。

そこに一人の少女が立っていた。

小さな。

彼をじっと見つめている。

時間が止まったかのようだった。

二人は微動だにしなかった。

ただ見つめ合っていた。

静寂の中。

少女の瞳が潤み始め……

音もなく、涙がこぼれ落ちた。

アイリーンは一歩後ずさった。

「離れて!」

彼女の声は張り詰めて、ほとんど途切れそうだった。

彼女は手を上げた。

指が前に伸びた。

「出て行け!」

バキッ。

地面から爪が突き出し、檻の棒を激しく突き破った。金属は曲がり、裂け、その力に耐えきれず、独房の構造が崩れ落ちた。

そして、現れたのと同じ速さで

爪は引き戻され、地面を這うようにして消えていった。

静寂が戻った。

アイリーンは動かなかった。

ただ見つめ続けていた。

目を見開き、まだ衝撃に打ちのめされたまま。

ゆっくりと――

彼女は膝をついた。

少女は震えていた。

足はかろうじて彼女を支えていた。

そして、彼女は走り出した。

つまずき、すすり泣きながら、彼に向かって進み、その腕の中に飛び込み、強く抱きついた。

「ここにいたのね……本当にここにいたのね!お兄ちゃん……どれだけ待ったことか……もう我慢できなかった……ただそこに留まっているなんてできなかったの!」

彼女の声は涙で途切れた。

アイリーンは彼女を抱きしめた。

強く。

手放したら消えてしまうのではないかと恐れるかのように。

少女の体は静かに震え、その両手はエイルーンにしがみついていた。涙が音もなくこぼれ落ち、少女の髪の中に消えていった。

エイルーンは何も言わなかった。

言えなかったのだ。

ただ、彼女を抱きしめるだけだった。

二人の背後で、アーサーが見守っていた。

黙って。

邪魔をすることなく。

その間、すべてが始まって以来初めて……戦いの騒音は、はるか遠くに消え去ったかのようだった。

◇◆◇

屋敷の内部は、今にも崩れ落ちそうな建物のように軋んでいた。

炎はすでに廊下を覆い尽くし、壁を這い上がり、扉を飲み込み、目につくものすべてを焼き尽くしていた。空気は重く、熱く、息をするのも困難だった。

アーサー、アイリーン、そして少女は走っていた。

床は血で染まり、所々で滑りやすく、残骸や、炎の光に揺らめく影で覆われていた。奥には出口があった。

扉は開いていた。

そしてその先には……

彼らを待つ仲間たちがいた。

アイリーンが先へ進んだ。

少女の手を握りしめ、背後に残す地獄から、ほとんど這うようにして外へ出た。

アーサーは後方に残った。

一歩。

そしてまた一歩。

しかし、何かが変わった。

天井がきしんだ。

壁が震えた。

そして時間は……

ゆっくりと流れ始めた。

周囲の世界が、静寂の中で崩れ落ち始めた。木片や石の破片が宙に浮いたまま落下し、まるで怠惰に動くかのような炎に包まれていた。

アーサーは走り続けた。

だが、彼はもうそこにいなかった。

彼は目を閉じた。

そして、彼の心の中の声……それは途切れてしまった。

(「……最後に、人を殺せて満足したのはいつだったか……?」)

彼の息遣いが震えた。

(ただ身を守るだけじゃなかった……自分の感情こそが危険だと学んだんだ……)

炎が轟いた。

だが彼にとって、すべては遠いものだった。

(…そして、自分を守ってくれた、今も支えてくれている人たちのそばにいるべきではないのかもしれない…)

彼の足は止まらなかった。

だが、魂は止まった。

(「俺…本当に…」)

一瞬。

静寂。

(「…俺は、正真正銘の獣だ。」)

時間が戻った。

突然。

天井が崩れ落ちた。

(「ああああっ!」)

アーサーは全力を振り絞って叫びながら走った。背後の建物が崩れ落ち、炎と木材と石の波となって襲いかかってきた。

最後の力を振り絞って――

彼は前へ飛び出した。

転がった。

背後で世界が爆発した。

ドーン。

静寂。

塵。

薄暗がり。

アーサーは咳き込んだ。

瓦礫の中から体を起こそうとすると、喉の奥で空気が焼けるように痛んだ。体は痛み、重く、疲れ切っていた。

その時――

一本の腕。

彼に向かって差し伸べられていた。


彼は顔を上げた。

トニ。

傷だらけだったが……それでも立っていた。

ほのかな笑みを浮かべて。

アーサーは一瞬ためらった。

そして彼の手を握った。

そして立ち上がった。

彼の左側には――

アンナが地面に倒れ込み、周囲の人々に囲まれ、震えながらすすり泣き混じりに話していた。その声には怒りと恐怖がにじんでいた。

「かろうじて生き延びたわ! 怖い!」

誰もすぐには答えなかった。

なぜなら皆……

上を見上げていたからだ。

屋敷。

炎に包まれ、

崩れ落ちようとしていた。

壁は崩れ、天井は崩れ落ち、火はかつてその場所だったものの最後の残骸を焼き尽くしていた。

誰も口を開かなかった。

アイリーンは、姉の隣に立っていた。

少女は彼女の手を握った。

強く。

決して離さずに。

二人は黙って前を見つめていた。

そしてしばらくして――

何も言わずに――

後ずさりし始めた。

一人、また一人と。

後ろへ、後ろへと。

その場から離れていく。

背後で屋敷が完全に崩れ落ちる中……残ったのは炎のパチパチという音だけだった。


(第32章 終わり)


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