アステル街の隆盛と、他国の不満
アステルの街の急速な発展は、周囲の国々から見れば、まさに驚異的だった。病は克服され、食料は溢れ、夜は明るい光に満ち、見たことのない魔法と科学の融合技術が生活を豊かにしている。その一方で、他国では相変わらず飢えや病、争いが蔓延し、人々の暮らしは一向に良くならない。
「なぜだ? なぜアステルの街だけが、あんなにすごい勢いで発展しているんだ?」 「俺たちの暮らしは、なぜ全然良くならないんだ……!」
各地で、民衆の不満の声が渦巻き始めていた。それは、かつて旧王国で起きた反乱の火種と酷似していた。アステルが「スキル無し」の追放者だったという過去を知る者たちにとっては、その理不尽なまでの繁栄は、より一層の不満と嫉妬の対象となった。
旧王国の残党や、アステルの能力を危険視する**「影の囁き手」**のような秘密結社は、この不満を巧みに煽り始めた。
「アステルの街は、我々の富を奪い、繁栄を独占している!」 「彼らが持つ奇跡の技術は、きっと何か邪悪なものに違いない!」 「あの『スキル無し』の男が、これほどの力を手に入れたのは、きっと禁忌の魔法を使ったからだ!」
彼らは、アステルの街の繁栄を「不自然なもの」「危険なもの」として喧伝し、他国の民衆の間に不信と憎悪の感情を植え付けようと画策していた。人々は、自分たちの困窮と、アステルの街の輝かしい繁栄とのギャップに苦しめられ、その矛先をアステルへと向け始めた。
アステルの街の技術は、あまりにも進みすぎていたため、他国の者には理解不能な「魔法」のように映った。それが、さらに疑心暗鬼を深める原因となっていた。アステルの持つ異世界の知識、そして彼の「強者」を集める特異な能力は、一般の民衆には到底理解できるものではない。理解できないものは、やがて恐怖の対象となり、そして憎悪へと変わっていく。
アステルが目指す「共存」と「平和」の理念は、まだ世界全体には届いていなかった。彼が築き上げた楽園は、一部の者たちにとっては希望だったが、多くにとっては、手の届かない「異物」であり、嫉妬と不満の対象となっていたのだ。




