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武器と防具の匠:鍛冶師の加入

街は活気に満ち、人々は笑顔で日々を過ごしていた。しかし、アステルとグランパスの心には、一つ拭いきれない不安があった。それは、街の防衛を担うシオンやバルトス、そして兵士たちの武具の摩耗だ。魔物との戦闘が続けば、剣は折れ、鎧は砕ける。いくら強者が揃っていても、装備がなければその力は半減する。

「どんなに堅固な防衛網を築いても、戦いには消耗がつきものだ」 グランパスは、そう言って磨り減った剣のイラストが描かれた書物を示した。「特に武具は、我々の街が成長すればするほど、その消耗も激しくなる。供給が間に合わなければ、いずれ防御は瓦解するだろう」

アステルは、レイスに問いかけた。「レイス、武具を最高の品質で作り、あるいは修理できるような、鍛冶の強者はいないか?」

レイスは、フードの奥で不気味な笑みを浮かべた。「ご主人様。この世界のどこかに、伝説に謳われる鍛冶師がいると聞きます。『神槌の使い手』あるいは『炎の心臓を持つ』と称される彼は、どんな金属も意のままに操り、壊れない武具を作り出すという……。しかし、その所在は、極めて秘匿されています。彼は、自らの技術が争いに利用されることを嫌い、人里離れた火山地帯に身を隠しているという噂です」

「火山地帯……」 アステルは、地図上の遥か遠く、赤く染まった危険な領域を見た。徒歩で行くには、あまりに危険で時間がかかりすぎる。しかし、彼には頼れる相棒がいた。

「ドラゴンがいれば問題ない。ソラの魔法で火山地帯の熱気も和らげられるだろう」 グランパスが即座に判断した。武具の確保は、街の未来を左右する重要な課題だ。アステルは迷わず決断した。

「行こう! 武具の心配がいらない街を、俺は作りたいんだ!」

グリモアタイタンの背に乗り、ソラの氷の魔法が周囲の空気を冷やす中、彼らは燃え盛る火山へと向かった。轟々と唸る火山は、まさに地獄の入り口のようだった。熱波が彼らの肌を焼くが、グリモアタイタンとソラの防御魔法がそれを防ぐ。

火山内部へ深く進むと、洞窟の奥から、規則的な金槌の音が響いてきた。それは、まるで炎の鼓動そのもののようだった。音のする方へ進むと、巨大な炉の熱気が彼らを包み込む。その中心に、一人の男が立っていた。

男は、全身が煤で汚れ、分厚い革の胸当てを身につけていた。腕は太く、鍛え上げられている。真っ赤に熱せられた鉄を、迷いなく叩き続けるその姿は、まるで火の神が宿っているかのようだった。彼の周囲には、完成したばかりの、しかし規格外の強度を持つ武具が並べられていた。

「誰だ、貴様ら!」 男は、アステルたちの気配に気づくと、槌を振り下ろす手を止め、鋭い眼光で睨みつけてきた。その瞳の奥には、人ならざる炎が宿っているかのようだ。

アステルが、男に近づき、その存在に触れた瞬間、男の体に異変が走った。これまで研ぎ澄まされてきた五感の全てが、目の前の「スキル無し」の若者に、抗えない「忠誠」を求めている。男の顔に、怒りと混乱が入り混じった表情が浮かんだ。 「なっ……馬鹿な!? この私が、この身に刻まれた『鍛冶の魂』が……なぜ、お前ごときに……!」 男は、自らの意思に逆らうように、アステルに向かって一歩、また一歩と歩み寄ってしまう。

グランパスは、その現象を見て確信を得た。 「間違いない! この魔力反応……伝説の鍛冶師、『炎の心臓』を持つゾルタン! 彼ほどの存在が、この地で隠遁していたとは!」 鑑定結果には、ゾルタンの持つ「神槌の極意」や「金属創造」といった常識外れのスキル、そして、あの忌々しい一文が浮かび上がっていた。 「従属状態:あるじ――アステル」

ゾルタンは、自身の誇り高き魂が、目の前の若者に屈しようとしていることに激しく抵抗した。だが、内側から湧き上がる衝動は、彼の意志を上回る。

「……くっ、ふざけるな……。このゾルタンが、たかが人間に従うなど……!」 ゾルタンは、歯を食いしばり、顔を歪ませた。しかし、抗えない運命を悟った彼は、やがて深いため息をついた。 「……よかろう。だが、この私に命令するならば、最高の素材を用意しろ。この炎は、最高の武具のためにのみ燃える。そして、私の鍛冶場に、いかなる邪魔も入れるな」

アステルは、その条件を力強く承諾した。彼らは、最高の武具を提供できる、唯一無二の「匠」を仲間に加えることに成功したのだ。

ゾルタンが仲間になったことで、アステルの街の防御力は盤石なものとなった。彼の鍛冶場からは、規格外の強度を持つ剣や鎧が次々と生み出され、街の兵士たちの士気は飛躍的に向上した。武具の修理も完璧に行われ、消耗の心配はもういらない。

アステルは、自身の能力で集まった強者たちが、それぞれの分野で最高峰の力を発揮し、街が日々強くなっていくのを実感していた。武具の心配がいらなくなった今、アステルは、さらなる発展と、まだ見ぬ「強者」との出会いを求めて、この広大な世界へと目を向けるのだった。



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