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お揃いのドレス①

番外編「お揃い」です。

気づいたら予定よりも長くなってしまったので、前後編になります。

まずは前編の①から。よろしくお願いいたします。

 応接室に入って案内されるままソファに腰掛けると、目の前のテーブルの上に思わず目がいく。

 テーブルの上には、リア用のものだろうか?可愛らしい小さなドレスが、布の上に丁寧に置かれていた。

 それも、先ほど見たルドの衣装に似た感じの、同じようなデザインが施されている。

 

 ルドの衣装の柄とシンメトリーになっている模様が、小さく入れられていて、その上、裾のレースもお揃い。


(可愛い〜〜〜!!)


 私は興奮する気持ちを落ち着かせながら、ランス様に問いかけた。


「この小さな衣装は……?」


 私の表情から興奮を読み取ったであろうランス様がとても嬉しそうににっこりと微笑む。


「ええ。こちらはリア用のドレスになります。ルドとお揃いで仕立てさせました」

「やっぱり! とっても可愛いです!!」

「喜んでもらえたようで何よりです」

「あの、手に取っても……?」

「もちろん! なんなら今リアに着てもらっても良いかもしれませんね」


 そう言って、ランス様はテーブルの上でふわふわと浮いているリアを見た。

 私もつられるようにリアを見る。


 ところがリアは、ランス様や私の視線に気づくこともなく、ずっと一方向を見つめている。

 その先を見ると、イルゼ様を抱き上げ、リアに申し訳なさそうな仕草をするルドの姿があった。

 私とランス様はそんなルドに、思わず吹き出しそうになってしまう。


「る、ルド……大丈夫??」


 私が声をかけると、ルドは切なそうな、諦めたような表情をしながら、こちらをちらりと見て、再び恋しそうにリアを見つめている。


(ルドの背中に哀愁が漂ってるわ……)


 そんなルドを見て、ランス様はなぜか頬をかきながら申し訳なさそうにしている。


(まさにランス様とルイーゼ様の縮図というわけね。これはこのままでも大丈夫なのかしら……?)


 すると、思い悩む私の元にリアがふわりとやってきた。

 ようやく視線に気づいたのかと、小さなドレスを手に取る。


 ところがリアは、私に何かを伝えたいのか、私の袖をクイクイ引きながら、鳴き始めた。


「クマ、クマクマ! クママ!」

「ど、どうしたのリア!?」


 必死に何かを訴えて鳴くくま吉は、やはり無茶苦茶可愛い。

 思わずガバッと手に掬い上げる。


 一瞬驚きつつも、手にすりすりして甘えてくるリア。


(はあ、可愛い〜〜〜!! けど、何を言いたいのかさっぱりわからないわ……)


「クマ! クマクマー!」


 それでもリアは、めげることなく一生懸命に何かを訴え続けてくる。


「ん〜どうしたら良いのかしら……ランス様、リアは何を言いたいのでしょう?」


 悩みながら隣のランス様に話を振ると、やはりというか予想通りというか、彼はこちらを凝視しながらフルフルと震えている。

 どうやらランス様のオネエスイッチを押してしまったらしい。


「可愛い……可愛すぎる……リアもロベリアもなんて可愛いのかしら! 小さいリアを相手に様子を伺うロベリアも、何か言いたげなのに、うっかり甘えちゃうリアも、ああもう、ほんっと可愛すぎるわ〜〜〜!! ギルティよ! ギルティー!!!」

「ら、ランス様……」


「あ……申し訳ありません。真剣に悩まれているのはわかっていたのですが、衝動が抑えきれなくて……」


 私の若干冷静な目に我に返ると、ランス様はルドとイルゼ様の方をじっと見た。

 それからリアを見て、ふむと頷き、再び私に向き直る。


「リアに、魔法を使わせてはどうでしょう?」

「え? どういうことです?」


「ロベリアが魔力を与えると、永続的に与えてしまうことになってしまいますが、一時的にリアの魔法でイルゼに自由に動いてもらえば、リアはルドと遊べるのでは?」


 ランス様が提案すると、凄い勢いでリアが彼に擦り寄る。


「やっぱりリアはルドと遊びたかったのね……」


「遊びたかったというより、イルゼに取られたようで嫌だったんでしょうね」


「え? そうなの!?」


 驚いてリアを見ると、両手で顔を隠して恥ずかしそうにしながら、コクリと頷く。


「そうだったのね。気づかなくてごめんなさいね」


 私の謝罪に、リアは首を横にふりふり振る。

 そして、大丈夫とでも言うかのよう「クマクマ」と鳴いた。


 あまりに可愛いリアの行動に、私とランス様が「可愛すぎる……!」と身悶えたその時だった。


「さあ、イルゼ。もう恋人たちの逢瀬のお邪魔をしてはいけませんよ」


 応接室に入ってから、ずっと静かに座られていたルイーゼ様がそう言うと、ひょいとイルゼをその手に掬い上げた。


「ルイーゼ様!」

「母上!」


「ごめんなさいね。わたくしもこの子たちが戯れているのがあまりにも微笑ましくて、気遣いがすっかり抜けておりましたわ」


 謝るルイーゼ様の後ろでは、記録魔道具をしっかりと起動させているセバスが控えている。

 どうやら、先ほどのリアとのやり取りもバッチリ記録されていたようだ。


(さっきのルドとリアの映像は保存しておきたいわ……!)


 後で映像を貰うお願いをしようと、テーブルから離れていくルイーゼ様を追いかける。


 ところが、ルイーゼ様は、部屋の隅まで来ると、手に抱えたイルゼ様に、何やら小声でお説教を始めてしまった。


「恋人たちの逢瀬の邪魔をしてはいけませんわよ、イルゼ。恋人というものはこっそりと陰から見守るものです。さっきそう教えましたでしょう? ひっそりこっそり音を立てずに覗くのですよ。あくまでも見守るのです。わかりましたか?」


「マグ!」


 ルイーゼ様の言葉に、元気よくお返事をするイルゼ様のアメジストの瞳がキラキラ輝いている。


(なんだかとんでもないことを教えていらっしゃるのは気のせいかしら……)


 見てはいけないものを見てしまった気がした私は、気づかなかった振りをして、そそくさとランス様の元へと戻った。


「ロベリア、どうしました?」

「い、いえ、何もありませんわ」


「イルゼを引き上げてくれたことは有り難いですが、母上のことなので、何か良からぬことを企んでいないか心配ですね……」


 ランス様の言葉に先ほどのルイーゼ様たちの会話を思い出し、ドキッとする。

 けれど、あの二人のやり取りをなんとなく話してはいけないような気がして、私は慌てて話題を変えた。


「……そ、それよりも、ルドも解放されましたし、リアにドレスを着てもらいましょう! 並んだ姿が見たいですわ!」


「それもそうですね!」


 私の提案にランス様が嬉しそうに頷くと、テーブルの上の小さなドレスを取ってリアを呼び、なぜかそのまま私の手を引く。


「えっと……ランス様?」


 引っ張られるようにして、応接室の入ってきた扉とは別の扉に辿り着くと、ランス様がその扉をゆっくりと開く。


 そして、私に中へ入るよう促した。

お読みいただきありがとうございます。

番外編「お揃いのドレス①」でした。

隣の部屋には何が待っているのか……?

次回もお楽しみいただけますと幸いです。

後編も本日中にアップ予定です。


ブックマークや☆での評価やいいねなど、いただけますと今後の励みになります。

もしよろしければ、よろしくお願いいたします。

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