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くま吉集結

久々の番外編更新です。

お楽しみいただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします。

 引っ越しの日程が目前に迫ったある日、ランス様から部屋の最終調整をしたいので、見に来て欲しいと言われ、私はリアを連れて、ハーティス公爵家を訪れた。


「ロベリア、忙しいのに急に呼び立てて申し訳ありません」

「いえ、大丈夫です。お招き、ありがとうございます」


 公爵邸に到着するなり、申し訳なさそうな表情で、ランス様が迎えてくれる。

 もちろん、その胸元のポケットからはひょっこりとルドが顔を出す。

 キョロキョロと辺りを見回したルドは、私の肩にリアを見つけると、ポケットから一目散に飛び出した。


 そこで、私はルトが何やらオシャレな服を着ていることに気づく。


「え!? ルド! その衣装は……!?」


「さすがロベリア。気が付きましたか。母上が仕立て屋を呼んで作らせたのですよ」


 驚く私にすかさずランス様が説明してくださるものの、私の視線はルドに夢中。


 リアとの再会に空中で手を繋ぎながら、クルクル回る二匹を見て、思わず笑みが溢れる。


「可愛いー!! 可愛いですわ! もうほんと可愛すぎます!!」


「やはり可愛いですよね! 喜んでいただけて良かったです!!」


(これは是非とも、リアにもお揃いで作ってもらわねば!!)


 そう心の中で意気込んでからランス様を見ると……


「え!? ランス様、そのお衣装は……?」


「はい。私もルトとお揃いの衣装を作らせたのです。どうですか? ルトに着せることを考えて、少しデザインが可愛くなってしまったのですが、私にも似合っていますでしょうか?」


 ランス様は少し照れながらも、まんざらではない表情で、その場で軽くポーズを決める。


(イケメンの照れ顔からのドヤ顔とか、ヤバすぎだから!! もう本当にランス様は……!)


 あまりのカッコ可愛さに、私がフルフルと打ちひしがれて言葉を発せずにいると、ランス様が不安そうな表情で覗き込んでくる。


「やはり、私には可愛すぎましたかね……?」


 そう言いながら、ランス様は私の髪をひとふさそっと掴み、上目遣いにじっとりとこちらを見つめる。


(衣装でカッコ可愛いだけでも限界なのに、こんなのって反則よー!!)


「いえ、あの、すみません。あまりにカッコ良くてその……固まってしまって。言葉が出てきませんでした」


 しどろもどろにそう告げると、ランス様は嬉しそうに笑って、手にしている私の髪にキスを落とす。


(ひやゃゃゃゃゃゃゃ〜〜〜〜!!!! こんなの、心臓が耐えられないわ……!)


 ドキドキする胸を押さえながら、ランス様の上目遣いに頑張って笑顔を作ろうとした、その時だった。


 ――何やら執拗な強い視線を感じる。


(この視線は一体何!?)


 不安そうにキョロキョロと辺りを見回す私に、ランス様は髪からそっと手を離すと、私を体ごと引き寄せた。


「え!? ランス様!?」


 一瞬険しい顔をしたランス様は、「大丈夫。私が守りますから」と優しく私に微笑む。


「ランス様……」


 そうして彼を見上げながら見惚れていると、部屋の隅から何やらコソコソ話す声が聞こえてきた。


「…………ダメですわよ、早くこちらに戻って!」


 なにやらどこかで聞いたことがあるような、聞き覚えのある声と口調……。


 その声のする方に目を凝らすと、玄関ホールに飾られた美術品の影から、トコトコと何かが向かってくるのが見える。


 しかも、近づいてくるそれは、キラキラと美しい衣を纏っていた。


「え!? もしかしてイルゼ……?」


 驚いて私が声を上げると、イルゼの後ろから気まずそうな様子でルイーゼ様とセバスが記録魔道具を手にコソコソと現れた。


「ルイーゼ様!?」


「母上……」


 隣のランス様からは大きなため息が溢れる。


「あらあらあらあら、見つかってしまいましたわね。イルゼったらもう……」


「何をなさっていたのですか?」


 問い詰めるようにランス様が聞くと、イルゼを回収しながら、ルイーゼ様が嬉しそうに答えた。


「それはもちろん、あなたたちの再会を記録せねばと陰からそっと静かに見守っていたのですわ!! ランスの新しい衣装に見惚れて言葉を失うロベリア様……! さらにランスからのキスにお顔を真っ赤にされて……もうほんとに可愛らしすぎますわよ!! これを記録せずして、何を記録しろというのです!?」


 力説して自信満々に微笑むルイーゼ様を真似るように、その手に抱えられたイルゼまでもがふんぞり返っている。


 なんて可愛らしい……じゃなくて。


(え!? さっきのあの恥ずかしいやり取りを全部記録魔道具に収められてしまったの!? いやー! 恥ずかしすぎる!!!)


 叫びたくなる心を必死に抑え込む私とは逆に、ランス様は何やらお母様に「グッジョブ!」と言わんばかりに親指を立てて頷き合っている。


「母上、その映像を後で私にも」

「もちろんですわ」


 二人のやり取りに、もはや私は項垂れるしかない。


(あ、でも、ランス様とルドの揃いの衣装を着た映像は私も欲しいかも……)


 そんなことを思っていると、すぐ隣を浮いていたリアとルドが、イルゼのほうへと近づいていくのが見えた。


 私が視線をそちらに向けたことで、ランス様とルイーゼ様もじっと三匹を見守る。


(イルゼを作っていた時、リアがそばにいたから二匹は会ってるはずだし、ルドとイルゼも公爵邸で一緒に暮らしてるから会ってるはずよね。でも全員揃うのは初めてだから、どうなるかしら……)


 ワクワクしながらその様子を見守っていると、驚きの事態が起きた。


「マグ! マググ!」

「グ、グマ……」


 急にイルゼが強くルドに何か言ったかと思うと、ルドがイルゼを抱え上げ、渋々といった様子でこちらに向かって飛んでくる。

 そんな二匹の様子を見たリアはオロオロしながら、後ろからついていく。


「え!? どういうこと?」


 私はリアと同じく戸惑いながら、ランス様とルイーゼ様を見た。


 するとお二人は少し気まずそうに視線を逸らす。

 そして、視線を逸らしたまま、ランス様がボソボソと小声で答えた。


「その、どうやら、イルゼは母上に性格が似てしまっているようでして……」

「あ……」


 確かにリアは私に性格が似ていて、ルドもランス様に似ている。

 それに倣うように、イルゼもルイーゼ様に似ているということ……。

 先ほどの様子を見れば一目瞭然な気もする。


 ああ……だからあんなにもイルゼに圧があったのかと頷くしかない。


(ルドがリアを離した上に、リアじゃない存在を大事に抱えるなんて……! イルゼ、いえ、イルゼ様凄いわ……!)


「……なんだかイルゼ様と呼ばなければいけない気がしてきましたわ」


「え!? ロベリア? 急にどうしました? まあ、気持ちはわからなくはありませんが、イルゼはあなたの聖霊なのですよ?」


「そうなのですが、なんとなく……?」


 そんな話をしていると、ルドがイルゼ様を抱えて私の前にやってきた。

 苦しそうなルドを見かねて、私が手のひらを前に掲げると、その上にイルゼ様を下ろした。


 降りた途端、ドレスを纏ったイルゼ様がゆっくりと優雅なカーテシーを披露する。


 そしてまるで、お礼を告げるかのように少し照れながら鳴いた。


「マグマグ」


(なになになになに!? なんなのこの可愛い生き物!? えっ!? ちょっと可愛すぎじゃない!?)


「え!? ちょっと可愛すぎよ!!! 可愛すぎるわ〜〜〜!! こんなの我慢できるわけないじゃない!! ドレス着て立ってるだけでも可愛いのに、カーテシーして、照れながらお礼までするって何なの!? こんなの反則よ!! ギルティー! ギルティーだわ!!!!」


 一瞬私の心の声が漏れているのかと思ったら、隣にいるランス様のタガが綺麗に外れて、オネエが全開になっていた。


(いやもう、これは仕方がないわ。私も完全同意だもの!!)


 そのさらに隣では、ルイーゼ様が両手を口元に当ててワナワナと震え、感極まって泣きそうな状態になっていらっしゃる。


 もちろん、その後ろではセバスが魔道具を構えて映像を記録していた。





 それから少しして、あまりの可愛さに冷静になるまで時間がかかってしまった私たちは、改めて応接室へと移動することになった。


 移動しながらルイーゼ様のドレスをよく見ると、こちらもイルゼ様とお揃いなことに気づく。


 ランス様とルドもお揃いだった。


 私はルドと楽しそうに移動するリアを眺めながら、少し羨ましく思った。

お読みいただきありがとうございます。

前回、仕立て屋さんに衣装を作ってもらった後、ロベリアとリアがあそこに加わったら、

できあがったものを見たらどうするかな?と妄想が膨らみ、このお話になりました。

というわけで、まだ続きます。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


ブックマークや☆での評価やいいねなど、いただけますと今後の励みになります。

もしよろしければ、よろしくお願いいたします。

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