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夢と現実

(なんだかふかふかで気持ちが良い……)


「……ん?」


 目が覚めると、なぜかとても大きなベッドに寝かされていた。

 まだ窓のカーテンが閉まっているのか、部屋の中は薄暗い。


「私……あのまま眠ってしまったのね!?」


 慌てて起き上がって辺りを見渡すと、ベッドの脇にほんのり灯りが見える。

 手を伸ばすと、そこにはリアとルドの眠るカゴがあった。

 二匹ともまだスヤスヤと寝息を立てて眠っている。

 光属性の力を宿している関係か、蓄光のように二匹がほんのりと光を持っているようだ。


「……今は一体何時頃なのかしら?」


 二匹の灯りを頼りに、ベッド近くのランプに手を伸ばす。

 ランプの下に付いている魔石に手をかざすと、ポゥっと灯りがともった。


 それと同じタイミングで扉をノックする音が響いて、思わず体がビクッとなる。


「ひゃいっ……」


 返事をするとジョアンナが入ってきた。


「そろそろ起きられる頃かと思いまして」


(一体どんなセンサー持ってるの……?)


 部屋の明かりが灯され、一気に明るくなる。


「ロベリア様、軽くお食事をお持ちしましょうか?」


 グゥ〜〜。


 タイミングよくお腹の音が鳴る。

 恥ずかしさに俯きながら頷いた。


「お食事を済まされましたら、すぐに出発の準備を整えるよう、ランス様より申しつかっております」

「わかったわ」


 ジョアンナはテキパキと私の着替えを済ませ、部屋を整えてから、食事を運んでくる。


 開けられたカーテンの向こうはまだ薄暗い。

 外の様子を気にする私に、ジョアンナは陽が昇る前に出発する予定だと告げ、準備に取り掛かった。



 食後のお茶を飲みながら、ふと考える。


(昨日は私、晩餐の前眠ってしまったけれど、さっき起きた時はネグリジェだったわ? 着替えはジョアンナだろうけど、私を運んだのは一体……? それに私、夢の中でランズベルト様に抱きかかえられて、気持ち良くてついすり寄ってしまって……)


「ええ!? アレはもしかして……夢ではないの!?」


 急に素っ頓狂な声を上げる私に、傍で準備をしていたジョアンナが意味深な笑みを浮かべる。

 どうやらやってしまったようだ……。


(ああ……ランズベルト様にどんな顔をしてお会いすれば良いの……!)


 モヤモヤと考えていたら、扉がノックされ、当の本人が顔を見せた。


「おはようございます。よく眠れましたか? そろそろ出発しますが、大丈夫でしょうか?」


「あ、お、おはようございます。は、はい、あの、だ、大丈夫です……」


 ランズベルト様の顔が直視できない。


 赤面しながら、たどたどしく返事をする私に、ランズベルト様はなぜか嬉しそうに微笑む。


「では、参りましょうか」

「……はい」


 差し伸べられた手に、少し躊躇いがちに手を乗せると、急にその手が引き寄せられ、驚く私にランズベルト様は悪戯っぽい笑みを向けた。

 そのまま腕を組む形でエスコートされ、馬車に乗り込んだ。




「今日は二匹とも大人しいですね? ねぇ、ロベリア嬢」

「そうですね……」


 昨日のことがあったから私を疲れさせないようにと気を遣っているのか、リアとルドは大人しくしている。

 私的には二匹に気を紛らわせてもらわないと、ランズベルト様との会話がぎこちなくて居た堪れない。

 それなのに、なぜかランズベルト様はソワソワする私をまるで可愛いものを見る時のように、嬉しそうに見つめている。


「あの、ランズベルト様……なんだかその、視線が痛いです」


「申し訳ありません。ソワソワされているロベリア嬢があまりにも可愛らしくて、つい見惚れてしまいました」


「み、見惚れて……!?」


「ええ。気持ちを抑えるのが大変なほどに」


 そう言いながら、更に熱を帯びた視線が向けられる。

 居た堪れなくて顔を熱らせて俯く私に、ランズベルト様は吹き出した。


「ふふ。あははは。本当に可愛いですね……思わず食べちゃいたくなるわ」

「!?」


 オネエモードに驚いて顔を上げる。

 けれど、熱を帯びたままのいつものオネエモードとはどこか違う視線と目が合う。


 無意識に、マカロンを食べたあの夜を思い出し、先ほどまでに比ではなくアワアワしていると、目の前に可愛いものが現れた。


「クマー!」


 まるで私を守ろうとするかのように立ちはだかるリア。


「ランス様、そのくらいになさいませ。そういうことをしていると、嫌われてしまいますよ」


 珍しくジョアンナが止めに入る。

 その言葉に肩をすくめたランズベルト様は、「嫌われてしまっては本末転倒ですね」と言って私に謝罪した。



 そこからは、リアを守ろうと遅れて出てきたルドにランズベルト様が夢中になり、昨日と同じように時間が過ぎていった。

 そして、午後の日差しが少し傾きかけた頃、ようやく辺境領に到着した。

お読みいただきありがとうございます。

男性にあまり耐性のないロベリアがアワアワする回でした。

辺境領までが長くてすみません。

次ようやく辺境領のお話になります。

またキャラの濃い人が登場予定です。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


ブックマークや☆での評価やいいね、ありがとうございます。

なるべく更新できるよう頑張ります!

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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