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お部屋づくりと勘違い

 辺境領への出発を数日後に控えたある日。


 ルドに魔力を注ぐ毎日を送る中、例のランズベルト様のお楽しみだった可愛い部屋づくりのための家具やカーテン、装飾品選びを行った。


「やっぱりカーテンはピンクが可愛いわよね、ピンク! ああでも! 淡いオレンジも良いかしら!? それに家具はやっぱり猫脚がいいわよね。この丸い感じが堪らなく可愛いと思うのよ~! ああもうどれも可愛すぎて迷っちゃう~~~!!! ねえ、どれが良いかしら!? ロベリア嬢」


 ウッキウキの瞳で見つめられ、思わず笑いそうになってしまう。


「ふふふ。ランズベルト様が楽しそうで何よりです」

「ええ。おかげさまでとっても楽しくて堪らないわ~~!!!」


 カタログを何冊も広げ、同じく並べられたサンプルを見比べながらテンションを上げまくっている。

 もちろん、ランズベルト様のこんな姿を商人たちに見せるわけにはいかないので、彼らは下の部屋に待たせてある。


 ランズベルト様の執務室で、私とランズベルト様が相談した内容を、後ろに控える家令が次々にメモっていく。


「あ! そうだわ! ぬいぐるみ用の棚もあると良いわね~~! もちろんベッド脇にもぬいぐるみを置くスペースは必須だけれど、きっとここには並びきれませんし、棚は必須よね! もう並べたら絶対可愛いわ! ああもう! 早く見たくてたまらない~~~!!!!」


「棚! 良いですね! ぬいぐるみがみんな並べられるとか……え!? 許されるんですか!? 許していただけるんですか!?」


「そんなの当たり前じゃないのー!! 可愛いものは愛でられるためにあるんだから!!」


 ぬいぐるみを飾る空間……前世ではスペースが無くて全てを綺麗に並べることは叶わなかったし、アラベスク侯爵家でも許されなかった。

 まさかここに来て夢が叶うなんて……!


 嬉しさに打ち震えていると、ランズベルト様が別の心配を始める。


「でも、埃がぬいぐるみにつきやすくなってしまいそうなのが、気になるのよねぇ……」


 いくら使用人たちが毎日掃除してくれるとはいえ、その手間暇もかなりかかる上に、やはり気にはなる。


「あ、では、こうしたらどうでしょう?」


 カーテン用にサンプルとして置かれていたレースの生地を広げる。


「こういうレースを棚の前にかけて、透けて見える感じにして、その端にリボンとかをつけてつまんで棚ごと飾ってしまうんです。そうしたらきっと可愛いですし、少しは埃もつきにくくなるんじゃな――」

「それよ! それだわ!! しかも、こんなの絶対可愛いじゃないのぉ!!! 今から出来上がるのが楽しみで仕方ないわ!!」


 食い気味に同意したランズベルト様は、嬉しそうにレースを選んでいく。

 花柄の入ったレースにするか、羽根柄の入ったものにするか、真剣に訊いてくる。

 楽しそうにしているランズベルト様を見ていると私まで幸せな気持ちになってきて、気づいたら部屋づくりの話し合いの間中、ずっと笑っていた。



 そんなこんなで部屋づくりもようやくある程度形が整って、後は家令のセバスに任せて、私とランズベルト様は辺境領へと向かうことになった。

 ここから辺境領までは馬車で丸一日かかるそうで、中間地点にある公爵領で一泊して向かうと説明された。

 宿泊を考えると往復で二泊三日。ちょっとした小旅行である。


(え!? ちょっと待って! よく考えたらランズベルト様と二人で旅行!? マリアを止めることに必死であまり深く考えてなかったけど、ランズベルト様はどう思ってらっしゃるのかしら……!?)


 そう考え始めた途端、急にソワソワし出してしまう。


(何で今まで考えてこなかったのかしら!? いくらルドへ魔力を注ぐことでいっぱいいっぱいだったとはいえ、何で今気づいちゃうの!?)


 そこへ荷物を積み込んだランズベルト様が、「そろそろ出発しましょうか」と私が待つ玄関ホールに入ってきた。

 私のそばまでくると、真っ直ぐに視線を合わせて手を差し伸べる。


「さあ、参りましょう」

「っ! ……はい」


 意識してしまって、差し伸べられた手に、手を乗せることをほんの少し躊躇ってしまう。

 そんな私の反応に、なぜかランズベルト様はその場に跪く。


「辺境領は少し遠いですが、道中は私と護衛の兵が今度こそ必ずお守りいたします」


 そう言って、手の甲にキスを落とす。

 どうやらランズベルト様は私のぎこちなさが、命が狙われていることからの不安だと読み取ってしまわれたようで……。

 それでなくてもソワソワしていた心がドキドキに切り替わり、頬が熱くなる。


「ひゃいっ」


 あまりのドキドキに変な声が出てしまう。


「大丈夫ですか? もしや、お身体の具合が……」

「い、いえ! 大丈夫ですわ! さあ、参りましょう」

「は、はい」


 心臓の高鳴りを抑えられないまま、扉を開ける。

 待っていたのは、先日乗った馬車よりも一回り以上大きい馬車だった。

 今回は、ヘルマンはもちろん、ジョアンナも一緒に向かうらしい。

 ジョアンナの脇には、リアとルドもカゴに入った状態でスタンバっている。


(二人で旅行なんて、私は何を考えていたのかしら……!? 二泊三日もかかるのだから、二人が一緒なのは当然ですのに。それにリアとルドもいるじゃないの!)


 ちょっとだけ残念な気持ちもあるけれど、二人きりじゃなくて良かった安心感のほうが大きいかもしれない。

 ドキドキが少しだけ落ち着いた頃、ランズベルト様にエスコートされ、馬車へと乗り込んだ。

お読みいただきありがとうございます。

お部屋づくりの相談と出発前でした。

この家令が仕掛け人だと二人は気づいていません。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


ブックマークや☆での評価やいいね、ありがとうございます。

なるべく更新できるよう頑張ります!

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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