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再会

「まったく手こずらせてくれるわ……」


 ヘルマンを引きずりながら現れたマリアは、笑顔で禍々しい魔力を展開していた。


 呪いの魔法でもかけられているのかヘルマンには黒いものが巻き付いているものの、マリアの足に必死にしがみついている。

 見上げた根性である。


 部屋を見渡したマリアの第一声は、やはりと言わざるを得なかった。


「ラ、ランズベルト様〜〜〜♡」


 マリアの登場にランズベルト様は、急ぎ自分の背中に私を隠すと、一歩前に出る。

 ランズベルト様のこの行動にマリアは一気に表情を変えた。


「は? 何でロベリア様がランズベルト様に守られてるわけ? ちょっと、リリアーナ! どうなってるのよ!」


 倒れているリリアーナ様を見て、マリアは大きく舌打ちをする。


「もう、やっぱり役立たずなんだから! シークレットルートの悪役令嬢のくせに、なに通常ルートの悪役令嬢に負けてるわけ? ほんと最悪だわ!」


「悪役令嬢とは何です?」


 思わずランズベルト様が聞き返す。


 するとマリアはシナを作り、誤魔化しながらもランズベルト様に擦り寄ろうとこちらに近づいてくる。


「べ、別に何でもありませんわ。ランズベルト様はお気になさらなくて大丈夫です。そんなことより! やっぱり凛々しいお顔も素敵ですわ〜」


 近づくマリアにランズベルト様は顔を顰め、彼女を睨みつける。


 それにイラついたのか、マリアはすり寄るのをやめ、私の方をチラチラ見ながらランズベルト様に問いかけた。


「なぜランズベルト様がロベリア様なんかを庇っていらっしゃるの? そんな性悪女を庇ったところで、ランズベルト様にとって得どころか、害悪しかありませんのに!」


 マリアの言葉にランズベルト様の眉が吊り上がる。


「害悪……? どうもあなたたちはロベリア嬢を悪者にしたくて仕方がないようですね。私からすると、よほどあなたの方が悪役に見えるのですが……違いますか?」


「まあ!? なんてことおっしゃるの!? きっとランズベルト様はロベリア様の魅了に侵されていらっしゃるのね! わたくしがランズベルト様をお救いいたしますわ!」


 わざとらしく驚きながら、自分のことを棚に上げてとんでもないことを言いだす。

 ランズベルト様も呆れ気味な表情になっている。


「魅了で皆を惑わしているのはあなたではないですか? ケルビン男爵令嬢」

「そんなこと知りませんわ」


 マリアはまったく悪びれる様子もなく、素知らぬ顔でプイッと横を向く。

 けれど、今のランズベルト様はそんなに甘くはない。

 ようやく対峙できたとばかりに話を進めていく。


「王太子殿下をはじめ、アラベスク侯爵に侯爵子息、それにそこに倒れているサハウェイ公爵令嬢……その上、王宮の様子を見るに国王陛下も既に魅了にかけているのでしょう。もうそこまでいくと国家反逆罪です。極刑は免れませんよ」


 本気で凄みながら言うランズベルト様に対し、マリアは鼻で笑いながら呆れた様子で言い返す。


「国家反逆罪で極刑? 私はこの世界の主人公でヒロインなのよ? そんなことあるわけないじゃない。もう、いやだわ、ランズベルト様ったら」


 全く本気にしないマリアは、どうやらどこまでもゲームの世界だと思っているようだ。

 そんなマリアの態度に、ランズベルト様が苛立っているようで、今まで私が見たことがない険しい表情になる。


「本気でそのようなことを言っているのですか?」

「ランズベルト様こそ、なぜそんな険しいお顔をされているのです? あ、私のことが心配なんですね。大丈夫ですよ〜! その後ろの人が死ねば、私はランズベルト様と幸せになれますから!」


 ランズベルト様は、さらに私を覆うように手を伸ばしながら、マリアをさらに睨みつける。


「もう、ランズベルト様怖いです〜! 魅了がかかってて仕方ないんでしょうけど、私も傷ついちゃいますよ」


 シナを作りながら呪いのような魔法をマリアが展開した時だった。

 私の後ろに隠れていた「くま吉」が声を上げて飛んで出た。


「クマー!!」


 少し怒っているのか、いつもより声に凄みがある。


 すると「くま吉」を見た瞬間、マリアの表情が固まり、体をガクガクと震わせ始めた。


「なななななななななんでそいつがここにいるのよ!」


 明らかに「くま吉」に怯えて、腰が引けている。

 そんなマリアの様子に「くま吉」は嬉しそうに白い光を振り撒きながらランズベルト様の前に出る。


「い、いや、来ないで! あんたが来たら私焼けちゃう!」

「クマー! クママー!!!!」

「来ないでったら〜〜!!!!」


 泣きそうな顔になりながら、マリアはどんどん後ずさっていく。

 いつのまにかマリアの足から手を離していたヘルマンが、床に取り残される。


「クマーーー!!!!」


 味をしめたのか、「くま吉」は追いかけっこでもするかのように嬉しそうにマリアを追い詰めていく。


 すると、マリアの足元に魔法陣が光り出し、マリアは黒い靄のような薄い幕に包まれる。

 そして、その様子になぜかマリアはホッとしたような表情になると魔法陣と共にその場から消え去った。

お読みいただきありがとうございます。

ついにマリアとくま吉が再会したのですが…。

マリアは一体誰に助けられたのか。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。


ブックマークや☆での評価やいいね、ありがとうございます。

できる限り毎日更新頑張ります!

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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